見もの・読みもの日記

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明清の羅漢図/中国書画精華2021(東博)

2021-12-08 21:42:21 | 行ったもの(美術館・見仏)

東京国立博物館・東洋館8室 特集『中国書画精華-仏教文化の粋-』(2021年10月19日~12月5日)

 毎年秋の恒例となっている中国書画の名品展。前期は、寒山拾得を描いた作品がたくさん出ていた。東博所蔵の名品『寒山拾得図軸』(因陀羅筆、元時代)や『四睡図軸』(元時代)のほか、常盤山文庫所蔵の『寒山図』『拾得図』なども。

 後期は最終日に駆け込みで見てきた。まず、梁楷の『出山釈迦図軸』『雪景山水図軸』『雪景山水図軸』三幅対を見ることができて眼福。京都・清凉寺の『十六羅漢図』(北宋時代)は4件出ていた。かなりデフォルメされているけど、人間の存在感のツボを外していないのが、劇画の登場人物みたい。彩色もきれい。千葉・法華経寺の『十六羅漢図屏風』八曲一双(元時代)は、款記から四明(寧波)の趙璚筆と推定されている。狩野栄信と養信が1幅(羅漢1人)ずつ補筆しているが、あまり原本の画風に似せようとしていないのが面白い。

 平台の展示ケースには、明~清時代の羅漢図巻などが出ていて面白かった。典型的な墨画・羅漢図ではないのだけれど、こういう作品(ペン画のような丁寧な描線!)にすごく墨画の面白さを感じるようになった。筆者不詳の『五百羅漢図巻』(明~清時代)は、こんな感じで、さまざまな面相の羅漢たちが延々と描かれる。途中で、動物が登場したりするけれど、あまり派手なアクションや表情の変化はない。

 これは同じ図巻の末尾のほうだったかしら? ネコと遊んでいるような、のほほんとしたトラ退治。

 これは『羅漢図軸』だったかな? トラの口元がふにゃふにゃしていて和む。来年、トラ年なので、水墨画や中国絵画に描かれた虎(だいたい可愛い)を特集してくれないかな。

 書跡には、墨跡の優品が多数出ていた。いま、辻本雅史氏の『江戸の学びと思想家たち』を読み始めているが、近世には幕府の公文書が「御家流」であったことから、武士も民衆も例外なく「御家流」の書体を学んだという記述がある。そういう世界では、定型化した書体でない禅僧の書が魅力的だったのかもしれないなあ、と思った。実際、圜悟克勤筆の印可状(流れ圜悟)など、字の大きさが不統一で、行の中心線もゆらゆらしているのに、そこに魅力がある。

 また、北魏の造像記(仏像の発願者が製作の由来等を刻したもの)の拓本も多数あり、こちらは会田大輔氏の『南北朝時代』に書かれていた北魏の歴史を思い出しながら眺めた。北魏の楷書はとても好き。練習したら書けるようになるだろうか。

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