見もの・読みもの日記

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2022年3月関西旅行:泉屋博古館、琵琶湖疎水船ほか

2022-04-05 22:19:16 | 行ったもの(美術館・見仏)

 2泊3日関西旅行最終日。前日は五条川端のホテルに泊まったので、朝は川端通りの桜並木を四条方面へ歩く。祇園白川筋の桜はほぼ満開。結婚式の前撮り写真を撮りにきているカップルとカメラマンが何組もいた。あれは中華圏の習慣だと思っていたが、日本でもこんなに広まっているのか。

 四条河原町からバスで泉屋博古館へ。今日はいくつか展覧会を見ていく予定なのだ。

泉屋博古館 『旅スル絵画-住友コレクションの文人画』(2022年3月26日~5月15日)

 「旅」をキーワードに江戸時代の京・大坂を中心とする文人画を紹介し、あわせて東アジアを舞台にした書画による文人画家の交流にも注目する。冒頭には、三浦梧門筆『山水図』16面が展示されていた。やや茶ばんだ四角い画面に墨書や淡彩でさまざまな風景を描く。住友林業からの寄贈。この三浦梧門、日根対山など、よく知らない画家が多かった。

 異国の画家といえば、まず沈南蘋。『牡丹鳩図』は、南蘋様式の華やかさに欠けるが、地味な鳩が巧いと思った。『花卉図』の張秋穀は写実的な惲寿平様式を伝え、このひとに私淑したのが椿椿山。作風を見てなるほどと思う。来舶四大家の江稼圃(江大来)は清朝正統派の様式を伝え、これを学んだのが鉄翁租門、という具合に、日本の画家と中国・朝鮮の画家に幾筋もの関係がつながるのが面白かった。

細見美術館 『細見コレクションの漆芸 根来 NEGORO-朱と黒のかたち-』(2022年2月10日~4月10日)

 中世に紀州・根来寺で作られた飲食器や什器に始まるとされ、用途に適した簡潔なフォルム、長年の使用に耐えうる堅牢な造り、明快な色彩〈朱と黒〉を特徴とする「根来」を紹介する。シンプルで力強い根来は、墨蹟一行書や寺院の文書、春日南円堂曼荼羅、狭衣物語絵巻断簡(江戸初期)など、どんなものと取り合わせても、空間がピリッと締まってよい。私は、同館にこんな豊かな根来コレクションがあるとは知らなかったが、細見コレクションの創始者・初代古香庵(1901-1979)氏には『根来の美』(浪速社、1966)という著書もあるのだな。

京都近代美術館 『サロン!雅と俗-京の大家と知られざる大坂画壇』(2022年3月23日~5月8日)

 江戸時代から近代にかけて、京都と大坂で活躍した画家の代表的な作品を紹介するとともに、その交流によって形成された文化サロンにも焦点を当てる。展示替えを含めて239件、大英博物館からの出陳もある国際的な大規模展である。蕪村、大雅、応挙、芦雪など江戸絵画の「鉄板」メンバーあり、鶴亭、耳鳥斎など目配りに感心する画家あり、知らない名前あり(私が関東人だからか)、近代の画家・北野恒富や小出楢重の作品もある。大阪歴史博物館所蔵の『蒹葭堂日記』も久しぶりに見た。実に細かい字でびっしり書き込まれている。近世の画人・文人が、やたらと共作(寄書)しているのも面白かった。

琵琶湖疎水記念館蹴上インクライン

 展覧会を3つ見て、岡崎疎水の桜並木を眺めながら蹴上インクライン方面に向かう。まだ少し時間があったので、琵琶湖疎水記念館(入館無料)に立ち寄って、琵琶湖疎水の歴史や役割を簡単に学ぶ。

 インクラインは、琵琶湖疏水の急斜面で、船を運航するために敷設された傾斜鉄道の跡地。桜の名所で、結婚式の前撮りカップルや、着物姿の若い女性グループで大混雑だった。

琵琶湖疎水船

 事前に予約していた「びわ湖疎水船」クルーズは、蹴上を出発して大津へ向かう上り便である。この時間の1席しか空きがなかったので、何も考えずに予約してしまったが、実は蹴上→大津の上り便は所用35分、大津→蹴上の下り便は所用55分なのだ。この差は、水の流れに逆らう上り便の場合、波で転覆しないよう、全行程を猛スピードで走り続けることによる。

 防火用水として御所に水を送っていた旧御所水道ポンプ場の前から乗船。設計は片山東熊。ちなみに1回だけ、防火用水として使われたことがあったとか。

 船は2列(背中合わせ)12人乗りの小型船。水路は、船がぎりぎり通れる程度の幅なので、遊園地のアトラクションで、ウォータースライダーに乗っているような気持ちである。しかもコースの半分くらいはトンネルの中。

 山科あたりでは少し疎水の幅が広がり、両岸に桜並木が続く。遊歩道を歩く人たちが、老いも若きも、珍しそうに船に手を振ってくれるので、こっちも積極的に振り返す。

 山科を抜けると、再び長いトンネル(全長2,436m)に入る。内壁に京都府知事・北垣国道の扁額があったり、一瞬だが竪坑を下から覗くことができたり、暗闇の中でも見どころはある。さらにトンネルの壁に解説ビデオを投影して見せる工夫には驚いた。最後は、大津・三井寺近くの下船場に出る。ガイドさんの話で、三井寺の秘仏・観音堂の下を通ってきたと聞いて、ちょっとうれしい。下船後、トンネル出口の扁額の説明や大津閘門の案内があって解散となる。とても面白かった。なお、しっかりした防寒対策が必要であることを書き留めておく。

 これで盛りだくさんの2泊3日関西旅行はおしまい。

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