■早稲田大学演劇博物館 2023年度春季企画展『推し活!展-エンパクコレクションからみる推し文化』(2023年4月24日~8月6日)
私は古い人間なので、応援する対象を「推し」と呼ぶことが流行り始めた頃は、またヘンな日本語が出てきたなあと思っていた。それが「活動」の「活」と結びついた「推し活」、あっという間に定着してしまった。言葉は新しくても、好きなモノや人を応援する行為は昔からある。そこで本展は、人々はどのようなかたちで「推し」に向き合ってきたのか、演者や制作者側を中心とした従来の演劇・映像史においては埋もれてしまう、個々の観客たちの営みに焦点を当てる。
江戸時代の「推される」対象は、ほぼ歌舞伎役者一択。まあ演劇を離れれば、相撲取りや遊女も「推し」だったのかな。絵師や読み本作家、芝居の脚本家を「推し」にするような変わり者(?)はいたのだろうか。
近代は、やはりビジュアルがものをいう時代。顔の前に構えた刀がキラリと光る市川雷蔵のブロマイド、今見てもカッコいいと思う。朝ドラ「カムカムエヴリバディ」の桃山剣之介のモデルはこのひとなんだな、と思い出した。それから、女優・栗島すみ子のブロマイドもあった。高野文子のマンガ「おともだち」で覚えた名前で、子役のイメージが強かったが、成人以降も活躍していたのだな。
女優の森律子(1890-1961)がファンから贈られたという等身大の人形にはびっくりした。生き人形師の三世・安本亀八(1868-1946、初代亀八の三男)が作者である可能性が高いという。海外ものでは、シェイクスピアゆかりのロンドン・グローブ座が寄付金集めに展開したグッズが集められていたが、シェイクスピアの肖像に似せたアヒル(ゴムの黄色いアヒル)が可愛かった。あとは、歌舞伎の澤瀉屋一門の会報「おもだか」「おもだかニュース」が展示されていて、あんなことのあとなので、しみじみしてしまった。
■早稲田大学會津八一記念博物館 特集展示『わたしも描く-『少女の友』と発信する少女たち』(2023年5月15日~7月6日)
2階グランドギャラリーで開催中の企画展『わたしが描く-コレクションでたどる女性画家たち』(2023年5月15日~7月6日)に合わせた特集展示。先日は、2階が開いているのに気づかず、1階だけ見て帰ってしまった。しかしこの特集展示は面白かった。『少女の友』は明治41(1908)年から昭和30(1955)年にかけて刊行された少女向け雑誌。優等生的な『少女倶楽部』(講談社)に比べて、『少女の友』(実業之日本社)は、豊かな教養、モダンなセンスで少女たちの人気を博した。立役者となったのは第5代編集主筆を務めた内山基だという。本展は、その内山基コレクションから30余点の絵画資料を展示する。松本かつぢ、中原淳一、それから、あまり理想化され過ぎない女性像を描く深谷美保子もいいと思った。