■新潟市歴史博物館みなとぴあ 常設展
今週もアイスショー三昧。アイスショーFaOI(ファンタジー・オン・アイス)2023新潟公演の初日と2日目を見てきた。私は、初めて見たアイスショーが2010年のFaOI新潟公演で、以来、この会場が好きで、2011年、2014年、2017年にも新潟公演に来ている。ショーだけ見て慌ただしく帰ったこともあるが、時間があれば、ちょっとした市内観光を楽しんでいる。今年は、2日目(土曜)の午前中、観光MAPでこの博物館を見つけて行ってみることにした。
信濃川の西岸(新潟西港)にあり。博物館の建物は二代目新潟市庁舎(1911年竣工、1933年焼失)の外観をモチーフに建設されたものだという。
博物館の向かいには、第四銀行住吉町支店(1927年竣工)が移転されている。
こちらは、旧新潟税関庁舎。戊辰戦争終結後の1869年に「新潟運上所」として開所したもの。復元ではあるが、資料等を元にして工事を行い、運上所開所当時の位置に復元されたという。
博物館は企画展の休止期間だったが、常設展示だけでもなかなか面白かった。この地域では、まず海岸部の新潟砂丘上に縄文時代の人々の生活の痕跡が残されている。やがて稲作が伝わり、弥生時代になっても「砂丘上の人々は縄文以来の生活をまだ続けていた」という解説が印象に残った。縄文→弥生の変化って、本州以南でも、そんなに全国一律に起きたわけではないのだな。続いて倭国大乱が起こり、ヤマト王権は「日本海を渡って」この地にやってくる。木簡資料によれば、この地からの貢ぎ物(特産品)のひとつがサケ(鮭)だったというのも、初めて知った知識。
ずっと時代が下った江戸・天保年間の新潟の宴会料理もこのとおり。手前はウナギの蒲焼だが、奥の右側は焼き鮭、左側は鮭氷頭ナマスだという。氷頭(ひず)とは、鮭の鼻先の軟骨部分。新潟の郷土料理として知られているそうだ。へえ~。
近代に入ると、新潟は「中国侵略」の玄関として機能し、満州との貿易・移民でに賑わった。そのことと関係があるかどうか分からないが、太平洋戦争では、広島・長崎に続く原爆投下の予定地になっていたとも言われる。新潟県は市民に緊急避難を命じ(8月10日布告)、新潟市はほとんど人がいない状態で敗戦を迎えた。幸い、空爆を免れた新潟市だったが、1950年代は大規模火災(新潟大火)と地盤沈下に苦しめられ、さまざまな努力の末に今日の街並みが整えられる。一難去ってまた一難的な歴史が、傍観者的には興味深かった。
信濃川の対岸から見た朱鷺メッセ。平たい建物の先端部分にアイスショーの会場となっている展示ホールがある。川風に吹かれて、萬代橋の手前の柳都大橋を渡って会場へ向かう。
■新潟県立万代島美術館 企画展『糸で描く物語:刺繍と、絵と、ファッションと。』(2023年5月20日~7月17日)
余裕をもって朱鷺メッセに到着。まだ人が少ないうちに施設内のコンビニで軽食を調達したあと、この展覧会を見ていくことにした。本展は、刺繍に注目し、中・東欧の民俗衣装、イヌイットの壁掛け、現代の絵本原画やフランスのオートクチュール刺繍といった多彩な作品約230点を紹介する。最も印象的だったのは、物語を感じるイヌイットの壁掛け。過酷な(はずの)狩猟生活が、ほんわかしたフェルト手芸で表現されている。40点近くあって、全て北海道立北方民族博物館(網走のかな)所蔵のキャプションが付いていた。時代は明示されていなかったが、20世紀半ば以降の作品らしい。また、貝戸哲弥氏の刺繍絵本『黒のけもの』は映像で全ページを読む(見る)ことができて、モニタの前を動けなくなってしまった。かなりドッキリする大人の絵本。いい出会いだった。