○五島美術館 新装開館記念名品展『時代の美-五島美術館・大東急記念文庫の精華』第3部 桃山・江戸編(2013年1月5日~2月17日)
新装開館記念名品展シリーズのその三。今回は展示替えがない。冒頭は琳派の書画。本阿弥光悦筆、俵屋宗達下絵と伝えられている『色紙帖(新古今和歌集)』と『 色紙帖(和漢朗詠集)』が、それぞれ盛大に開いていて、楽しかった。和歌の内容と下絵の図柄が、必ずしもピタリ寄り添っていないのがいいと思う。「新古今和歌集」は金銀の対比が中心だが、「和漢朗詠集」は青や緑などの淡彩に金色だけで絵を描いたものもあって、美しかった。
尾形乾山筆『四季花鳥図屏風』は初見だろうか? そんなはずはないと思うのだが、初めて意識した作品。右端から視線を流していくと、どんづまりの左隻の左隅にうずくまっているシラサギたちの膨らみっぷりがかわいくて、思わず笑ってしまった。飛んでいるシラサギの翼も、レースを広げたみたいで愛らしい。
光琳蒔絵『佐野渡硯箱』は大好きな作品。いま「光琳蒔絵」で画像検索をかけてみたら、この他にもいろいろ大胆なデザインがあることが分かった。伝統的な蒔絵を蒔絵だと思っていた人たちは、度肝を抜かれただろうな。光琳の楽茶碗にも言えることだけど。
その茶碗は、光悦の『夕暮』『七里』、長次郎の『夕暮』など名品が勢揃いだったが、上から覗き込むタイプの展示ケースに収まっていたのは残念。私はひとつひとつ膝をついて、横からの姿を眺めたが、高齢者にはキツかったのではないだろうか。
平台ケースには、狩野探幽自筆の『旅絵日記』や賀茂真淵自筆の『延喜式巻八 祝詞考』(びっしり推敲の痕あり)など、あまり見たことのない資料が数多く出ていて、面白かった。五島美術館ではなく、大東急記念文庫の所蔵らしい。出品目録をよく見たら、壁にかかっていた『加藤清正像』『清正母像』や武将の書簡も大東急記念文庫の所蔵なのだな。なんと上述の『四季花鳥図屏風』も! 江戸時代・18世紀の『十二ヶ月風俗絵巻』は、ちゃんと正月の場面を開けてあって、子どもたちが遊んでいる、紐のついた玩具は振振(ぶりぶり)だろう。
第2室は桃山時代の陶芸のみ。書画の混じる第1室より、明るめの採光になっている。そのせいか、以前、第1室で見たことのある信楽一重口水指『銘:若緑』は、少し釉色の印象が異なる感じがした。古伊賀水指『銘:破袋』は、何度見てもすごい。これを「愛でる」感覚は、納得できるけど説明できない。古備前耳付花生(桃山時代)は、イヤラシイくらい肉感的で、思わずたじろいでしまった。ただの土なのに…。
全体に線の太い、男性的な美学を重視した「桃山・江戸編」だと思う。私は嫌いではない。
新装開館記念名品展シリーズのその三。今回は展示替えがない。冒頭は琳派の書画。本阿弥光悦筆、俵屋宗達下絵と伝えられている『色紙帖(新古今和歌集)』と『 色紙帖(和漢朗詠集)』が、それぞれ盛大に開いていて、楽しかった。和歌の内容と下絵の図柄が、必ずしもピタリ寄り添っていないのがいいと思う。「新古今和歌集」は金銀の対比が中心だが、「和漢朗詠集」は青や緑などの淡彩に金色だけで絵を描いたものもあって、美しかった。
尾形乾山筆『四季花鳥図屏風』は初見だろうか? そんなはずはないと思うのだが、初めて意識した作品。右端から視線を流していくと、どんづまりの左隻の左隅にうずくまっているシラサギたちの膨らみっぷりがかわいくて、思わず笑ってしまった。飛んでいるシラサギの翼も、レースを広げたみたいで愛らしい。
光琳蒔絵『佐野渡硯箱』は大好きな作品。いま「光琳蒔絵」で画像検索をかけてみたら、この他にもいろいろ大胆なデザインがあることが分かった。伝統的な蒔絵を蒔絵だと思っていた人たちは、度肝を抜かれただろうな。光琳の楽茶碗にも言えることだけど。
その茶碗は、光悦の『夕暮』『七里』、長次郎の『夕暮』など名品が勢揃いだったが、上から覗き込むタイプの展示ケースに収まっていたのは残念。私はひとつひとつ膝をついて、横からの姿を眺めたが、高齢者にはキツかったのではないだろうか。
平台ケースには、狩野探幽自筆の『旅絵日記』や賀茂真淵自筆の『延喜式巻八 祝詞考』(びっしり推敲の痕あり)など、あまり見たことのない資料が数多く出ていて、面白かった。五島美術館ではなく、大東急記念文庫の所蔵らしい。出品目録をよく見たら、壁にかかっていた『加藤清正像』『清正母像』や武将の書簡も大東急記念文庫の所蔵なのだな。なんと上述の『四季花鳥図屏風』も! 江戸時代・18世紀の『十二ヶ月風俗絵巻』は、ちゃんと正月の場面を開けてあって、子どもたちが遊んでいる、紐のついた玩具は振振(ぶりぶり)だろう。
第2室は桃山時代の陶芸のみ。書画の混じる第1室より、明るめの採光になっている。そのせいか、以前、第1室で見たことのある信楽一重口水指『銘:若緑』は、少し釉色の印象が異なる感じがした。古伊賀水指『銘:破袋』は、何度見てもすごい。これを「愛でる」感覚は、納得できるけど説明できない。古備前耳付花生(桃山時代)は、イヤラシイくらい肉感的で、思わずたじろいでしまった。ただの土なのに…。
全体に線の太い、男性的な美学を重視した「桃山・江戸編」だと思う。私は嫌いではない。