付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「大戦前夜」 ジョン・リンゴー

2010-08-28 | ミリタリーSF・未来戦記
「どんな戦闘計画も、敵と接触するまでの命」
 みんなトレッキー。

 “良い知らせ”と“悪い知らせ”があった。
 “良い知らせ”は人類が友好的な異星人とのファースト・コンタクトに成功したこと。
 “悪い知らせ”は、その異星人は敵対的な種族と星間戦争のまっただ中であり、5年後には地球も最前線になるということだ。
 2001年3月のことであった……。

 ファースト・コンタクトと同時に銀河系レベルの星間戦争に巻き込まれた地球人類が、なかば傭兵として戦いまくる話。ファースト・コンタクトがあり、銀河文明のテクノロジーが入ってきた上に、まともに戦っていたら勝てないような宇宙人の大艦隊襲来!ときたら、政治、科学、宗教、市民生活とあれこれあるでしょうに、ただただ軍隊視点だけで話が進みます。ダーヘル人の陰謀も、一般家庭での様子も、戦闘の合間にちらっと描写されるくらい。片っ端から徴用されたというミリタリーSF作家陣も具体的な出番無し。

 『エリアル』でもファースト・コンタクトしたときの地球の技術レベルは銀河系水準に遙かに及びませんでしたが、あちらは口八丁で乗り切った話。こちらは戦争技術と闘争心で乗り切る話です。闘争心にあふれる文明の大半は宇宙進出前に自滅してしまうものらしく、敵であるポスリーン以外の銀河系文明は戦うこともできない臆病者の群なのです。そういう意味ではポール・アンダースンの『天翔る十字軍』とシチュエーションは似ています。ベトナム戦争や湾岸戦争を生き残ってきた兵士たちが今度は宇宙の果てで戦うぞ!……って、ジェリー・パーネルの『地球から来た傭兵たち』にも似ています
 でも、こちらの地球人は時間が足りない上に、銀河文明の窓口であるダーヘル人が地球人を警戒して裏工作をしてくるのでなかなかうまくいきませんが、それでもパワードスーツみたいなコンバット・スーツの実戦配備に成功したものですから、レオパルド戦車を機動歩兵が支援するという光景すら見られます。「追いつめられた人類が何をするか、見せてやる!」というやつですね。

 表紙イラストも好きだけれど、コンバット・スーツは頭部にバイザー部分が無く、前面もグレー一色ということだから、ちょっと違う気がします。AH版『宇宙の戦士』のパッケージ・アートが近いような気がしますが……。

【大戦前夜】【ポスリーン・ウォー1】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【ファースト・コンタクト】【後方潜入】【特攻】
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「宇宙の傭兵たち」 ジェリー・パーネル

2010-08-27 | ミリタリーSF・未来戦記
「軍人にできることは時間を稼ぐことだけだ」
 軍事作戦の成功で世界が救われたり平和が築かれたりすることはない。それは政治の仕事であり、軍人はそのための汚れ役に過ぎないのだと。

 2004年にオルダースン航法が完成し、人類の太陽系外進出が始まって100年近くが経過。既に宇宙各地に植民地が建設されていたが、地球を統治する《連合国家》は崩壊寸前となり、植民惑星の治安も悪化していた。
 政情不安な惑星ハドリーも治安回復のために傭兵部隊を雇い入れたが、その指揮官ジョン・クリスチャン・ファルケンバーグ大佐には謎が多かった……。

 今はすっかりハヤカワ文庫の独壇場となったミリタリーSFですが、かつては弓と剣で戦う文明レベルの星まで異星人に連れてこられた地球の兵隊が戦う『地球から来た傭兵たち』とか、傭兵を育て上げることが国家産業となっている星の物語『ドルセイ!』とか、創元推理文庫も翻訳をいくらでも出しておりました。原書風のイラスト中心で展開してたから、売れなかったのかねえ……。

 この『宇宙の傭兵たち』はミリタリーSF界の御大パーネルの代表作なので、ミリタリーSFの代表作みたいなもんです。腐りきった政争の巻き添えで軍より追放された優秀な司令官と、彼が育て上げ、人減らしのために解散させられた前線海兵隊第42連隊が傭兵として星々を渡り歩く話なのだけれど、その背後には大海軍大将セルゲイ・レールモントフの深謀遠慮かつ諦観による長期計画が隠されていて……というあたりがSFなのかな。
 戦場がベトナムのジャングルから中東の砂漠に変わっただけ、あるいは使う武器がマスケット銃からM-16に変わっただけではSFと呼ばないように、単に、未来の異星でドンパチするというだけではミリタリー小説であってもSFじゃありません。そのあたりのさじ加減は巧いと思いますが、ガチ右な作品です。敵もあくまで地球出自の人間であり、見た目も醜悪で思考も異質な異星人ではないですしね。
 話せば解る、交渉でなんとかなるという段階を過ぎてから送り込める傭兵の話ですから、情け無用です。

 今、戦乱をテーマにしたブラウザゲーム(ブラウザ三国志)とかやっていると、すぐに「開戦だ!」とか別陣営と戦争が始まり、出撃したかと思うと「停戦!攻めるな」とか命令が来て、「なにを始めたり終わったりしてんだよ? そんな簡単に終わるくらいなら始める前に外交でなんとかしろよ」と思ってしまうのは、ここらの作品を読んで育ったせい。
 自分の無能で悪化した事態の収拾に軍を使っておきながら、もうこれくらいでいいよと(あとの状況悪化も予想できず)作戦途中で撤収させたがる政治家なんて!と文民統制を否定したくなるのには困ったものです。

【宇宙の傭兵たち】【ジェリー・パーネル】【傭兵】【連合国家】【神の目の小さな塵】【ファルケンバーグ傭兵部隊】【《連合国家》】
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「共和国の戦士」 スティーヴン・L・ケント

2010-06-01 | ミリタリーSF・未来戦記
 ミリタリーSFというやつを大雑把に2つに分けると、ハインラインの『宇宙の戦士』タイプとホールドマンの『終わりなき戦い』タイプになるんじゃないかなと思う。前者はいわゆる「必要な戦争はあり、それに命を懸ける価値はあるし、仲間や軍は信頼に応えてくれる」というもので、後者は「戦争なんて無駄なもので、兵隊なんて使い捨てにされる道具に過ぎない」という視点。第二次大戦的な価値観とベトナム戦争以降の価値観と言い換えることもできるのだろう。
 こちらは明らかに後者。アメリカ合衆国がそのまま肥大化したような星間国家において戦争に送り込まれる兵士の大半はクローン人間。それぞれ個性はあるけれど、周りはともかく自分だけはクローンじゃないと刷り込まれている兵士たち。
 主人公も、自分以外の兵士はほとんどクローンであるけれど自分はクローンではないと信じているけれど、読者としてはそれがどうだかわからない。そして戦いはあくまで人類同士の戦いで、主人公の所属する海兵隊が投げ込まれる戦いはどこまでも無意味で、大義は色褪せている。ただ権力者たちの道具として激しい戦いに投入されていく姿は、ひとことでいうとフィアナの出ないボトムズ。ロボットも出ない話だけれど、雰囲気はそんな感じ。

【共和国の戦士】【スティーヴン・L・ケント】【岩良ノマ】【日系移民】【ホノルル】【海兵隊】【新興宗教団体】【秘密結社】
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「オペレーション・アーク3」 デイヴィッド・ウェーバー

2010-02-24 | ミリタリーSF・未来戦記
「人を評価するというのには、その相手が誰であれ、もちあわせている技倆や能力にかかわらず、実際の行動にこそ注目しなければいかんと思うのだよ」
 チャリス国王ハァロゥルド・アァルマァク7世の言葉。

 もともと1冊の本を3分冊して邦訳しているわけで、今回はひたすら海の戦いです。
 同じ著者のオナー・ハリントンもスペース・オペラといいつつ、やってることはほとんど帆船の戦いでしたが、こちらは完璧に帆船の戦い(ガレー船からガレオン船)です。教会勢力を黒幕に、海洋国家チャリスを滅ぼさんと攻め寄せる多国籍軍を、迎え撃つのは技倆の高さと勇猛果敢で知られるチャリス海軍。聖人マーリンの心眼の助けがあるとはいえ、10倍近い艦数の差を、装備の質と練度の高さだけで乗り越えられるのかという物語でした。
 ウェーバーの書く話って、取っつきにくそうなイメージがあっても、いざ読み出すとするするするっと読めてしまうのですね。これもそこそこ厚いのに、あっという間に読了。

【オペレーション・アーク】【セーフホールド戦史】【デイヴィッド・ウェーバー】【ウスダヒロ】【帆船の戦い】【おかかえ魔術師】【植民惑星】【夜戦】
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「オペレーション・アーク2」 デイヴィッド・ウェーバー

2010-01-19 | ミリタリーSF・未来戦記
 本屋の妻から電話があって「セーフホールドセンシってやつの新刊が出てるけど買っとく?」と訊かれ、「買ってない。いらない」と返答をしたのに、実はしっかり買っているシリーズでした。いや、「××戦史」とか電話でいわれると、なんか大河ファンタジーみたいじゃないですか。今回は表紙もいまいちだし、初めてのシリーズなら手に取らないだろうけど、前巻がそれなりに面白かったから仕方がないじゃないか。

 停滞させられていた文明を活性化させようというマーリンの介入は順調に進むが、一方でマーリンによって技術革新していくチャリス王国を叩き潰したい教会勢力は諸国に呼びかけ戦争準備を進めていく。

 以上。
 マーリンの介入が静かに始まりました。目立たないように、少しずつ文明に介入していくのですが、このあたりパイパーの『異世界の帝王』やパーネルの『デイヴィッド王の宇宙船』を思い出してニヤリとします。中世レベルの世界にいきなりオーバーテクノロジーを導入しようとしてもうまく行くはずがないのです(失敗の典型はマーク・トゥエインの『アーサー王宮廷のヤンキー』です)。発想の転換で、今あるものに改良を加えて一気に水準を跳ね上げるにはアイデアだけで十分面白くなります。火薬の配合割合、大砲の砲耳、帆走船の帆の張り方あたりは基本です。
 確かに面白いし、文明介入モノが好きな人にはたまりませんが……それにしたって展開が遅すぎ。いや、確かに色々キャラの動きや各国の動向をしっかり描写してあって、それはそれで面白いけれど……話が全然進んでませんよ?

【オペレーション・アーク】【セーフホールド戦史】【デイヴィッド・ウェーバー】【ウスダヒロ】【義体】【植民惑星】【数字】【防諜】
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「彷徨える艦隊5~戦艦リレントレス」 ジャック・キャンベル

2010-01-11 | ミリタリーSF・未来戦記
 ロミュランのねーちゃんがいるぞ!?というのが、表紙を見た第一印象だったのは内緒。

「殺しは、ときには必要だ。自分の故郷や家族や大切なものを守るためには、必要になる。だが、憎悪は心をむしばむだけだ」
 ギアリー大佐の母の言葉。

 ギアリー大佐指揮する艦隊は行く手を阻む敵を打ち破りながらも祖国アライアンス宙域をめざすが、艦艇は次第に数を減らし、弾薬も燃料も食糧も枯渇寸前という刀折れ矢尽きるのも間近という惨状。
 けれども、反ギアリー派もしくは異星人によるテロ工作は沈静化せず、大佐の心に迷いが生じ始めていた……。

 加速度的にテンポが早くなり、本当に6巻で完結するかも知れないと思わせる5巻めです。破壊工作あり、宙兵隊の強襲作戦あり、そして艦隊戦ももりだくさん。文化ギャップと責任の重さに潰れそうな大佐が艦隊を率いて故郷めざして転戦していくエピソードの繰り返しのようでありながら、次第次第にテンポが速く、大きく、勇壮になっていくあたりが、ボレロのような小説だと思いました。
 そして、まさに戦争SF。艦隊戦ではぶどう弾が飛びかい、敵発見から交戦開始まで何時間という、まるで帆船の戦いですが、それでもストーリーはきちんとSFであり、舞台を16世紀のカリブ海あたりに移し替えただけでは成立しないSF的な面白さが堪能できます。そこが魅力なんでしょうね。

【彷徨える艦隊5】【戦艦リレントレス】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【捕虜収容所】【宙兵隊】【自由政府】【人事課】
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「オペレーション・アーク1」 デイヴィッド・ウェーバー

2009-12-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 帯に「超弩級戦争SF巨編」と書いてあるのを見て「超弩級」と「巨編」で意味がかぶってねえ?と思ったり、そもそもセーフホールド戦史とあるけど戦争起きてないじゃんと思って「そういや冒頭に壮絶な宇宙戦争があったなあ。負け戦だったし、あそこセーフホールドじゃないけど」と突っ込んでみたり。表紙イラストも大好きなウスダヒロのイラストですが、今回は誰がこのレイアウトを指示したんだろう?という感じで、どうせなら宇宙艦の本人とPICAの背中合わせにでもすれば良かったのに……。
 最近のハヤカワはなんでもかんでも「ミリタリーSF」と言いたがりです。わたしの文句は言いがかりみたいなもんですが。

 異星文明から殲滅戦を仕掛けられ、滅亡の危機に瀕した地球文明は、最後の植民計画を発動。そこでは敵に察知されないため、高度な文明を放棄することとされていた。
 しかし、計画中枢メンバーが暴走し、過去の記録をすべて抹消した上で、技術発展を全否定した宗教を擦り込んだ世界として植民地を構築してしまう。この歪な構造を正すべくPICA(全人格統合型サイバネティック擬体)として覚醒させられたニミュエ・アルバン准佐は……。

 偽りの歴史を植えつけられ、およそ9世紀の間、中世的な世界観のもとに生きてきた人々の間に送り込まれた“不死身の忠告者”が、国家間紛争に飛び込んでいく話です。しかし、この状況からのスタートで、果たして異星人ヶババの再登場があるのか、どこに落ちつくか見えません。まさか、この中世社会が健全に発展するようになりました、めでたしめでたしでもなかろうし、狂信者の天罰装置も生きているし、いったいどこへ向かうのでしょうか?
 ペリー・ローダンっぽく始まった『反逆者の月』が二転三転して2巻ではレンズマンっぽくなり、最終巻ではまさしくこの作品と同じく「神様みたいな知識を持つ文明人が中世世界に助言者として降臨」というのをやっているので、今度はどう転がしてくれるのか期待しているのです。

【オペレーション・アーク】【セーフホールド戦史】【デイヴィッド・ウェーバー】【ウスダヒロ】【義体】【植民惑星】
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「新任少尉、出撃!」 マイク・シェパード

2009-12-28 | ミリタリーSF・未来戦記
「女の子。銃を持ってる。なるべくデカい銃を」
 著者はカバーイラストの内容についてこう指示するらしい……。

 ロングナイフといえば辺境星域では名門の一族であり、故郷のウォードヘブンでは歴代首相を務め、祖父は財界の支配者という一族。しかし、その令嬢として生まれたクリスは幼少時の誘拐事件の影響で社交界だの政略結婚だのには興味が持てず、母親の反対を振り切って海軍へと入隊してしまう。
 そして配属されたカミカゼ級戦闘宇宙艦<タイフーン>での初めての任務は、誘拐された地元有力者の娘の救出。しかし、待ちかまえていたのはまだ軍にも行き渡っていない最新装備で武装した集団だった……。

 ここ最近のハヤカワSFはミリタリーSFか名作の復刻ばかりが目立ちます。手に入りづらかった名作が新装で手にはいるというのは嬉しいですが、新作はどいつもこいつも分厚くてかないません。
 この話も高名すぎる家名にうんざりな若き女性がでかい銃を持って戦うというものです。いろいろ陰謀やら戦闘やらあって面白い話ですが、別に舞台はナポレオン戦争でもスターリングラードでも良い気がします。ベトナムでもアフガニスタンでも通用する、スペースオペラ的な話ですね。70年代80年代はこうした作品の合間にハリイ・ハリスンやキース・ローマーみたいな(SF的なアイデアを軽快なアクションでまとめた)話が挟まってアクセントになっていましたが、今はそういった役割はライトノベルのレーベルに求めるのがベストでしょう。(2009/12/14)

「やはり最後は自分の判断だ。両親からの贈り物は全部がガラクタではないんだから」
「でも大事なものとガラクタを区別するのは一生かかる仕事よ」

 ヘンリー・スマイズ-ピーターウォルド十三世とクリス・ロングナイフの言葉。

 さて、ミリタリーSFの重鎮パーネルが書いて創元SFから出ていた《ファルケンバーグ大佐》サーガは途中で翻訳が止まってしまいましたが、大佐が美少女なら良かったのでしょうか? これも《ファルケンバーグ大佐》的な世界。数十年前に異星人との戦いがあり膨張が止まった人類世界では、複数勢力に分裂の危機にあっり、そんな時代のまっただ中に任官した新任少尉がさまざまな勢力の思惑に翻弄されながら、目の前の任務をこなしつつ自分が何のために戦うのか見出していくという話。話のクライマックスはあそこではあれでもなく、「連隊付き最先任曹長の言葉」が語られるシーンにあった気がします。《ファルケンバーグ大佐》でも語られた構図の事件もあれば艦隊戦もあり、やはり構成は帆船小説。
 最初は主人公が海兵隊を指揮したり艦を指揮したりという展開に何となく違和感があったのだけれど、よく考えてみたら海軍と海兵隊が別組織になっている時代の話に慣れすぎていただけでした。

 いろいろ波瀾万丈で面白かったです。エナミカツミのイラストに惹かれて手にとって正解。
 単にキャラが巧い人、カラーイラストが上手い人は多いけれど、エナミカツミのイラストは人物がちゃんと地に足が付いていて、単にキャラクターのポーズ絵を描いていても「そこにいるけれど次の瞬間には別の場所に向かって動き出す」みたいな動きが内包されているんです。(2009/12/28)

【新任少尉、出撃!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【地雷原】【誘拐】【バグパイプ】【流行病】【飢饉】【基金】
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「くたばれ戦車商隊」 上原尚子

2009-12-24 | ミリタリーSF・未来戦記
「男のロマンなんて……地球じゃスミソニアンの倉庫で埃をかぶってるぜ」
 リトルマレイ撃破にこだわるユカヤの言葉。

 月の裏側では解放区の資源を巡って地球の経済連合機構と月の自治条約機構との紛争が続いている。月の200近い自治都市のすべてが反地球ではないが、その中立都市内の反地球派がゲリラを援助することで条約機構軍を側面支援していたのだ。
 その武装ゲリラが発展して商隊システムとなった。地球軍の装備や施設に賞金を賭けて戦果を軍に買い取らせるというものだ。戦争の下請け、外部委託、民営化といったようなこのシステムにより、5年で地球勝利といわれていた戦いは20年以上も続くこととなった。
 その商隊の1つ、チーム2355にあるミッションが持ち込まれる。連合軍の新型超重戦車リトルマレイの撃破だった……。

 『レーベンスラウム2』で在ったかも知れない月面戦闘の断片を見た気がしました。
 「和を以て尊し」ではなく「独立独歩」でいきたいという、まだまだ青くて、ツッパっていている若者たちのチームが飛び込む対戦車戦闘の顛末。うん。若いよね。若いっていいよね。と思いました。月面戦闘版『エリア88』みたいなものかもしれないけれど、こちらはあくまで末端の話ですから戦局みたいな話はあまり関係なさそうです。
 
【くたばれ戦車商隊】【上原尚子】【末弥純】【対戦車肉薄攻撃】【企業論理】【賞金制】
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「激戦!蒼橋跳躍点~銀河乞食軍団 黎明篇3」 鷹見一幸

2009-12-05 | ミリタリーSF・未来戦記
「いいことが起きたら、いや、悪いことが起きるかもしれないと考える。悪いことが起きたら、いいほうに転がることを考える。そうやってプラマイゼロに持っていくことを考えていれば、人生、結構うまくいくもんですよ」
 デュマ級軽巡航艦<アトス>の中年オペレーターの言葉

 状況の悪化にともなって撤退命令が出た連邦宇宙軍蒼橋平和維持艦隊に、紅天の全艦隊が襲いかかる。
 辺境星域では有力勢力ながら、もし真正面から連邦宇宙軍と戦うことになればとうてい太刀打ちできない連邦非加盟国が、何故今さら撤退しようという艦隊を襲撃するのか?
 その理由に思い至った平和維持艦隊のキッチナー中将は、あえて6倍の敵に立ち向かうことを決意した。たとえ、それが艦隊を壊滅させることになろうとも……。

 宇宙艦隊戦が繰り広げられる話というと最近ではジャック・キャンベルの『彷徨える艦隊』があげられますが、艦隊戦の迫力という点ではキッチナー艦隊の相対速度で秒速50キロを超える戦いも優るとも劣りません。
 あとがきも何もないのでなんですが、これで完結でも、まだまだ続くでも通用しそうな黎明篇の3巻は「軍隊とはつまるところマンパワーの集合体であり、最後に支えるのは人間なのだ」とばかり全篇艦隊戦が繰り広げられます。同時に、蒼橋の職人集団、取材に訪れて戦闘の渦中に放り込まれた天然女性記者の物語とも絡み合って急転直下の結末へ。
 ただ、いかにも急いで一気に畳みましたという結末なので、爽快感はあるけれど1巻冒頭のプロローグからの輪は閉じません。まだまだ続くと言うことでしょう。そして「冒険」よりも「戦争」テイストの強い話でした。

【激戦!蒼橋跳躍点】【銀河乞食軍団 黎明篇】【鷹見一幸】【野田昌宏】【鷲尾直広】【索敵哨戒】【機雷戦】【ダミー】【バブル経済】【三銃士】【十五少年漂流記】【ドリトル先生航海記】
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「仮装巡洋艦バシリスク」 谷甲州

2009-11-25 | ミリタリーSF・未来戦記
「人類は戦争なしには生きていけない。戦争なしでは、種として滅びてしまう」
 ヘイズ一曹の言葉。ジョー・シマザキは広大すぎる宇宙空間こそが敵だと考えていたが。

 組織は拡大するものであり、軍という組織が拡大するためには敵が必要だった。
 宇宙開発の初期に警察活動のために設立された航空宇宙軍が、いかに変わっていったかを、人類の宇宙進出史と共に語る短編集。
 銀河系中心に送り出される探査船の運命を1人の男の生涯と共に綴った『星空のフロンティア』。
 外惑星動乱末期に外惑星連合軍の秘密兵器<ヴァルキリー>に襲われた輸送船団を描いた『砲戦距離一二、〇〇〇』と、その130年後、近傍恒星系にまで広がった植民地で広がった独立運動を鎮圧するために送り込まれた船団が再び<ヴァルキリー>に遭遇した顛末『襲撃艦ヴァルキリー』。
 そして外惑星動乱に失踪し、150年後に回収された仮装巡洋艦の最後の記録『仮装巡洋艦バシリスク』。

【仮装巡洋艦バシリスク】【谷甲州】【ダイダロス】【サイボーグ船】【戦艦大和】【情報】【銀河中心】
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「終りなき戦い」 ジョー・ホールドマン

2009-11-14 | ミリタリーSF・未来戦記
「今夜は、音を立てずに人を殺す八つの方法を教授する」
 あまりにインパクトがあったので、著者が聞いた言葉を作品にも取り入れたという教官の言葉。

 宇宙航行法コラプサー・ジャンプによって地球外へ開拓団を送り出すようになった地球人類は、まったく異質の文明を持つ異星人トーランとの全面戦争に突入してしまう。その戦争の主役となるのはエリート徴兵法によって集められた頑強な肉体と高い知能指数の兵士たちであり、彼らは対数フィードバックパワードスーツに身を包むことであらゆる環境に適応できる戦士となる。
 しかし、コラプサー・ジャンプではウラシマ効果の壁を破れない。一度出撃した部隊が帰還すれば、故郷では何十年何百年が経過しているのだ。ほんの数日の戦いで家族も友人も過去の歴史となり、それどころか地球の文化も風習もまったく馴染みのない別のものへと変化していた……。

 パワードスーツを着用して異星人との戦いに投入されるウィリアム・マンデラ二等兵の物語。戦い続けること=守るべきものの喪失につながる状況で、彼らが価値を見出すものは戦友しかいなくなるのだけれど、その戦友すら送り出される戦場が異なれば生死に関わらず再会はまず不可能となります。
 よく比較されるハインラインの『宇宙の戦士』は「大事なものを守り、自分の権利を主張するためには、自らが血と汗を流して戦わないといけない」という、アメリカ的な「無料のランチなどない」という思想を象徴した話ですが、こちらは「汗を流して戦ったところで、自分の守るべきものはもうどこにもない」という嫌戦的な話。無事に退役したところで故郷は既に見知らぬ異世界で戦場以外に行くところがないという悲惨さはベトナム戦争の引き写しであるというのにもうなずけます。
 軍隊というのは汚いところで、約束を反故にはしないけれど空手形は連発して裏の裏をかいてくるし、留守中の家族は社会から見捨てられているし、戦って守る価値があるものって何だ?という話ですが、これも結局、根っこの部分でハインラインと共通している気がします。「実際に戦ったことのない奴等が後方で偉そうに政治や行政を掌握してたら、戦っている兵士は報われないんだよ」ということなのですから。

【終りなき戦い】【ジョー・ホールドマン】【パワードスーツ】【クローン】【同性愛】【ウラシマ効果】【ベトナム戦争】
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「彷徨える艦隊4~巡航戦艦ヴァリアント」 ジャック・キャンベル

2009-11-11 | ミリタリーSF・未来戦記
 宇宙艦と士官の組み合わせという表紙イラストが続きますが、さすが寺田克也。統一感を持たせながらも飽きさせません。でも、今回は誰なんだろう? タイトルからすると巡航戦艦ヴァリアントと艦長のランディス中佐かと思われますが、今回<ヴァリアント>もランディス艦長もそんなにキーとなるような活躍はしていない気がします。

 ギアリー大佐率いるアライアンス艦隊の敵はシンディック艦隊だけではない。ギアリーの失脚を謀る内部の敵は潜伏したまま活動を活発化させ、さまざまな破壊工作を仕掛けてくる。それは単なる反ギアリー派なのか、それともシンディックのスパイ、あるいは異星人の手先なのか……。

「わたくしは自分の人生や自分の故郷で、どんな男性にも従属するつもりはありません。そばにいる男性に私が求めるものは、対等のパートナーという役割です」
 ターニャ・デシャーニ艦長の言葉。

 ここ数日『とらドラ!』を全巻一気読みしていて、『彷徨える艦隊』との共通点を見つけました。凶悪な美女との三角関係に翻弄される常識人の物語。今回は、この「あいたたたっ!」な三角関係が表面化して、またもやギアリー大佐に新たな危機がっ! しかし、ここは女性2人の沈着冷静かつ慇懃無礼なやりとりのはざまを縫って、なんとか着地成功。さすがは伝説の英雄! これが全6巻と聞いて、あと3冊でまとまるもんかい!と思わないでもありませんでしたが、この三角関係にけりが付いたなら、あと2巻で敵包囲網を突破して異星人の罠をかいくぐり政治的対立の圧力をはねのけるくらい何とかなりそうです。

【彷徨える艦隊4】【巡航戦艦ヴァリアント】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【漂流艦隊】【裏ネット】【奇跡】【ワーム】
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「葡萄山司令部、陥落!?~銀河乞食軍団 黎明篇2」 鷹見一幸

2009-09-25 | ミリタリーSF・未来戦記
「頭ごなしに命令されるのは下僕だが、やってくれと頼まれれば仲間だぜ」
 誰だって下僕より仲間の方が良いとご隠居の言葉。

 反旗を翻した〈蒼橋〉星系に送り込まれた〈紅天〉星系の艦隊は、植民地同様の扱いをしてきた宇宙生活者たちの徒党相手に予想外の苦戦を強いられる。しかし、〈蒼橋〉側も使用した踏鞴山のビーム砲が放射した電磁パルスの影響ですべての通信が途絶するという打撃を受けていた。
 そして、その間に戦況を一転させようと、潜伏していた〈紅天〉星系の工作部隊が動き出し、葡萄山司令部を手中に収めるのだが……。

 5冊でも10冊でも続く話だと思う一方で、3冊で完結という話も聞いた気がするのだけれど、いずれにしても2冊目というのはスターウォーズと一緒で反乱軍が押されまくる話。政治外交やら戦術戦略やらリアルに絡んできて、あまり問答無用で痛快無類の大活劇とはいえないのが残念だけれど仕方がありません。次回『激戦!蒼橋跳躍点』に期待します。

【葡萄山司令部、陥落!?】【銀河乞食軍団 黎明篇】【鷹見一幸】【野田昌宏】【鷲尾直広】【機動スーツ】【EMP】【天邪鬼】
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「スター・パニック」 伊吹秀明

2009-09-14 | ミリタリーSF・未来戦記
「いまからきみは地球防衛軍の長官だ」
 17歳のアイドルが一日地球防衛軍長官になったちょうどその日に異星人襲来! 宇宙大名行列ともいうべき<天の轍>は行く手を遮るものすべてを無礼討ちしつつ進撃する。その行く手にある小さな星など彼らには虫けらの如く踏みつけるだけの存在だった……。
 一方、中枢コンピューターがアイドル・山口ロリエを太陽系統合作戦会議議長と認識してしまった地球防衛軍ODEは、なんとしてもこれから24時間をロリエを長官として乗り切らねばならなかった!

 人類文明圏の存亡を賭けた24時間の戦い(アイドル付き)。
 やたら日本人が目立つ地球防衛軍だけれども、これは北米が15年前の<天襲>事件で壊滅したことと、そのとき手に入れた異星のテクノロジーをコピーして使うのに長けていたからということらしい。なるほど!
 宇宙大名行列に宇宙御家騒動にアイドルとおふざけな話になるかと思ったら、艦隊戦闘シーンはきちんと描写しています。やっと太陽系に広がった人類文明が星間文明に挑む殲滅戦です。ここがおふざけだと死んでいった者が浮かばれません。だから、面白いんですよね。

【スター・パニック】【一日地球防衛軍長官ロリエ】【伊吹秀明】【新世紀シミュレーション】【宇宙由美かおる】【妖星ゴラス】【オッドマン仮説】【降伏の儀式】
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