付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「E.G.コンバット 2nd」 秋山瑞人

2012-02-24 | ミリタリーSF・未来戦記
「ご武運を。あなた方の行く先に、いつも暖かな空気がありますように」

 落ちこぼれ訓練生チームのルノア隊が、誰にも攻略不可能と思われた緊急出撃訓練をクリアした!
 興奮冷めやらぬルノア隊と協力し、やはりミッションをクリアしたもう1つのチームであるカデナ隊では、訓練基地随一の優等生カデナ・メイプルリーフが、憧れのルノア教官に何とか自分の隊の指導教官になってもらおうと画策を始める。
 そんなカデナをルノアは諭すのだが……。

 実習が実戦に変わるとき、カデナは反逆者となる。

 女性を優先して狙う生成晶から逃れるため、人類の女性の大半が疎開した月は、地球戦線の情報もろくに伝わらず、危機感が希薄な情報のガラパゴスではあったけれど、実際はそれより遙かにヤバい場所でした……という話。さっきまで普通にバカ話していた仲間が次の瞬間には消えているような展開に真っ青。
 でも、まだ出版社的には「爆笑&感動」のキャッチフレーズが生きてます。確かに笑えるけれど、コメディとは違うんだよね。半分は試験で、半分は査問。
 カデナ、いいこじゃないか。

【E.G.コンバット 2nd】【秋山瑞人】【☆よしみる】【電撃文庫】【人工知能】【双脚砲台】【座学試験】【医療技術試験】【夜戦治療演習】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「彷徨える艦隊7~戦艦ドレッドノート」 ジャック・キャンベル

2012-02-18 | ミリタリーSF・未来戦記
 戦意高揚のために戦死した軍人を英雄視して祀り上げていたら、100年もしてから本人が生還し、しかも100年続いた戦争に決着をつけてしまったものだから政府関係者は大慌て。こいつが野心を起こしたら軍も市民も味方について、あっという間に政府が転覆してしまう。……
 人は他人を見るときも自分を基準にしてしか見ることができないので、自分だったらクーデターを起こす=あいつは絶対にクーデターを起こす! 絶対に野心があるに違いない!……という展開で、自己保身に走った軍や政府の上層部が火のないところに煙を起こし、大火事にしようと一心不乱に励むのを、ギアリー大佐あらためギアリー元帥が「誰がそんなこと望んでると思ってんじゃ!」と火消しに奔走。

 アライアンスとシンディックの戦争は終結したが、政府はギアリーを異星人探査と交渉の旅へと送り出した。体のよい厄介払いである。
 しかも、上層部は補給艦をごっそり艦隊から引き抜こうとするし、昔は耐用年数が100年はあった戦艦も今は粗製濫造で3年も経てば戦闘が無くても故障だらけだし、反戦グループの船が追いかけてくるし、シンディックはギアリーが甘いと思いこんでつけ上がるし、異星人は端から話し合う気がなく……。

 ギアリー元帥の「これが逆境だ!」も7冊目です。

 結局、大戦争を陰から操っていた異星人の正体を探るべく、わけのわからない(主旨のはっきりしない)命令書のままに、大遠征から帰還して艦も兵士もぼろぼろの艦隊を再編して、再び宇宙の深淵へ……って、そろそろ本当に伝説の軍神“ブラック・ジャック”ギアリーのクーデターでもいいんじやないかという気がしてきました……。

【彷徨える艦隊7】【戦艦ドレッドノート】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【ハヤカワ文庫SF】【捕虜収容所】【生ける英雄】【ファースト・コンタクト】【スパイシー・チキン・カレー】【茶番将軍】【自爆種族】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「E.G.コンバット」 秋山瑞人

2011-11-02 | ミリタリーSF・未来戦記
 長男がまだ中学生の頃、なにか面白い本を貸してくれと言ったので、この秋山瑞人のデビュー作であるこの本を「続きもあるけど、読んではいけないよ……」と言い含めた上で貸したのだけれど……「決して開けないでください」という言葉が守られたためしはないのですよね。

 ルノア・キササゲはまだ21歳の女性であり、北米総司令部で最年少の大尉。そして人類と謎の侵略者である生成晶との戦いでは撃破数が歴代7位。月より舞い降りしワルキューレ、反応速度の女神と呼ばれ、ファンは多数。
 だが、出る杭は叩かれる。英雄ルノアは、戦場となった地球から疎開先である月へと送り返され、訓練校で落ちこぼれ5人組の教官となるのだが、地球と月の訓練校とのギャップに悩むことになる。こんなカリキュラムで訓練した教え子を戦場に送り出しても、あっという間に戦死するだけだと分かっているのは実戦経験のあるルノアだけ。
 ルノアはあえて通常のカリキュラムを外れてみせるのだが……。

 互いに試行錯誤を繰り返す、教官と教え子たちの成長物語。表紙にクセはあるけれど、この手の話の中ではダントツのトップ。
 『エンダーのゲーム』とか『アルテミス・スコードロン』みたいなミリタリーSF仕立ての青春学園ものって好きなのですが、最近は魔法使い養成学校ものばかりで、戦士訓練学校ものはほとんどみないなあ。ハリポタ以来、魔法使いもの一色のような気がします。

「階級っていうのはね、部下への保証書なのよ、ルノア。伊達や酔狂でもらえるほど安いもんじゃないわ」
 サヨコ・ヤマグチ次官の言葉。

【E.G.コンバット】【秋山瑞人】【☆よしみる】【員数合わせ】【宇宙怪獣】【起動演習】【ベナレス条約】【私の彼はパイロット】【悪魔の発明】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「防衛戦隊、出陣!」 マイク・シェパード

2011-10-25 | ミリタリーSF・未来戦記
「制式はいいものです。徹底的に試験され、実証されている。でも明後日死なないためには妥協も必要です」
 背に腹は代えられないとホールジー号艦長、サンディ・サンチャゴの言葉。

 でっち上げのスキャンダルで内閣の支持率を下げ、議会で過半数を手に入れた野党が暫定政権を樹立。
 しかし彼らの愚策が窮地を招き、知性連合の中核たるウォードヘブン星は、ほぼ無防備の状態で6隻の戦艦からなる敵艦隊の襲撃を受けることとなった。
 圧倒的な敵に立ち向かうのは、旧式艦や廃棄予定の小型のPF艦、武装ヨットなどからなる、プリンセス・ロングナイフ指揮する、つぎはぎの混成部隊だけだった……。

 なんというか、笹本祐一の『ミニスカ宇宙海賊』とか『星のダンスを見においで』での、決まり事のルールより経験に裏づけられた裏技が有効な世界、雑多なスペシャリストが集まって、強大な敵に寡兵が連携で立ち向かう痛快さが好きな人にはお奨めの3作目。これで登場人物がべらんめえ口調でしゃべり出したら『銀河乞食軍団 黎明編』。
 主力艦が出払った星の防衛に、高速パトロール艦やらヨットまでをかき集め、海千山千の船長やら整備員やら沿岸警備隊やら陸軍から出入り業者までがよってたかって、できる限りのことを思いつく限りやっていく面白さ。なんというか、チーム有象無象。人事部、最高! そして、技術者はやっぱりおかしいというのはお約束。
 もちろん謎のメイドも健在。防弾ボディスーツをバーゲンで2ダース購入して自走式トランク(今回は8個)に詰め込んでおく用意の良さは文句なし。

「雇い主の宝飾品の補修のために熔接トーチを持ち歩くのはメイドの基本です」

【防衛戦隊、出陣!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【戦闘メイド】【私掠船】【空挺降下】【テロリスト】【結婚式】【暫定政権】【バグパイプ】【マーチ・オブ・キャンブレドス】【死亡フラグ立てまくり】【第8雷撃隊】【911】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「共和国の戦士3~クローン同盟」 スティーヴン・L・ケント

2011-10-05 | ミリタリーSF・未来戦記
「わたしは賭けたりしない。勝つだけだ」
 白鳥腕中央艦隊司令官、オルデン・ブロシアス大将の言葉。
 ギャンブルで儲けようと思ったら、胴元になるしかない。

 状況は毎回変わり、そのたびに主人公の立ち位置は変わるのだけれど、その中身は「クローン兵士の部隊はいつも欺され使い捨てにされてます」ということになりがち。でも、二転三転する状況に一気に読まされてしまうんですよね。
 印象的なキャラクターは凄腕の傭兵フリーマン。全編通じての出番は決して多くないのだけれど、『鉄腕バーディー』のスケルツォ教官(地球人バージョン)というか、『シティ・ハンター』の海坊主というか、神出鬼没のワンマンアーミーぶりがこの作品の醍醐味。主人公のハリスは良くも悪くも“良き海兵隊員”として遺伝子レベルで型にはめられているので、フリーマンのゴーイング・マイウェイっぷりが引き立ちます。

 孤立した農業惑星で信仰厚い農民として生きるよりは死んだ方がマシと、惑星フリーマンを飛び立ったウェイソン・ハリスとレイ・フリーマンだったが、シン・ニッポン勢力に助けられ、モガト教徒と戦うためAUと同盟を結ぶ使者として送り出されるのだが……。

 ミリタリーSFとしては何の不満もないけれど、この作品の日本観にはアメリカ映画のニンジャ並のインパクトに頭を抱えます。日本人って、こんなに時代錯誤のエロオヤジ集団と見られてるんでしょうか? 日本艦には他国の艦にはみられない女性クルーが乗り込んでいるのだけれど、これがセクサロイド扱いされているのはどーよ?

【共和国の戦士3】【クローン同盟】【スティーヴン・L・ケント】【クローン】【入植者】【SEALs】【殺人ボーイスカウト】【海兵隊】【女体盛り】【サムライ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「救出ミッション、始動!」 マイク・シェパード

2011-08-29 | ミリタリーSF・未来戦記
 まったく風情も遊び心もないサブタイトルです。軍事小説っぽいといえばポイですけどね。
 今回も若めの女性がでかい銃を持った表紙です。

「人はそのときやるべきことをやるだけです。結果は受けいれるしかない。まだ生きていれば、ですが」
 警護官ジャック・モントーヤの言葉。

 強襲艦<ファイアボルト>がドック入りしている間、上陸することになったロングナイフ中尉だったが、待っていたのはいつもの運転手や警護官だけではなかった。
 いつの間にか母親が手配して雇い入れた新任メイドのアビー・ナイチンゲールが、彼女を身分にふさわしい粧いに変えようと手ぐすね引いて待っていたのだ……。

 美貌の海軍士官は何十もの星系を束ねる知性連合の王の曾孫であり、財閥総帥の孫娘であり、ウォードヘブンの首相の娘という、チートな設定の軍人キャラが主人公の冒険譚で、今回はどちらかというとスパイ話。ジェームス・ボンド以来、海軍士官は諜報員なんですよ……って違うか。行方不明になった同僚が、自分のために誘拐されたと判断し、独断で奪回作戦に向かうプリンセス・ロングナイフの大暴れ。
 ただし、1巻の表紙イラストが間違いだったことが、この巻で判明。彼女は無い胸を張って前進するタイプだった模様。胸の谷間はなく、寄せて上げるブラが武器の収納スペースとして大活躍。ニードルガンを隠し持つメイドといい、本当にアメリカ人の書いた小説か疑問に思わないでもありませんでしたが、年齢設定でなんとなく納得。アビー36歳。良いキャラだけど、ラノベでこの年齢はないわな。
 でも、地球生まれらしいメイドさんが、意気揚々と12個の自走式トランクの群を率いて歩いていく様は壮観。
 
【救出ミッション、始動!】【海軍士官クリス・ロングナイフ】【マイク・シェパード】【エナミカツミ】【戦闘メイド】【軍用ティアラ】【プッシュアップブラ】【盗聴器】【エボラウィルス】【ナノマシン】【ショウ・コスギ】【ディンギー】【タクシー運転手】【防弾下着】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「花咲けるエリアルフォース」 杉井光

2011-07-28 | ミリタリーSF・未来戦記
 日本列島は箱根の関を境界に東西分断されていた。そして4月8日。西側を支配している民国による皇国への奇襲によって内戦が始まった。
 その日、少年は戦火によって焼け落ちる桜の樹を見ていた……。

 時代はおよそ現代、舞台は日本、主役となるのは中学生。そういう条件で本気のミリタリー小説をラノベでやればこうなる、という見本のような作品。近衛の役立たずぶりをギャグで流して良いのか分からないけれど、話は巧い。面白い。
 でも、日本の国土を戦場にしてますから、ラフィールとジントのようなボーイ・ミーツ・ガールから始まるものの、勝っても負けても周囲は焼け野原。同級生も先生も家族も炎と瓦礫の下。主人公たちの操る超兵器でも戦況を覆すまでには至らず……というあたりがなんともストレスがたまります。戦争なんて、そんなものですけれど。

【花咲けるエリアルフォース】【杉井光】【るろお】【ソメイヨシノ】【空中空母】【へーか】【桜花】【避妊具】【花見】【多脚砲台】【皇室】【日本分断】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「彷徨える艦隊6~巡航戦艦ヴィクトリアス」 ジャック・キャンベル

2011-05-27 | ミリタリーSF・未来戦記
「法律家は、みな異星人かもしれない」
 ジョン・ギアリー大佐の言葉。

 ついに味方の星域に帰り着いたアライアンス艦隊。
 しかし、ギアリー大佐の顔色はすぐれない。大佐を英雄視・神聖視するあまり、ヘタレな政府は打倒して政権奪取すべきと考える艦長は少なくなく、政府はそんな大佐が調子に乗ってクーデターを起こすのではないかと警戒し、旗艦艦長と政治アドバイザーの副大統領は女2人のいがみ合いで火花を散らして一触即発。
 それでも大佐はなんとか評議会に、ここが正念場と惑星連合(シンディック)本星系への艦隊派遣を決意させ、この戦いの背後にいる異星人の存在を認識させるのに成功するが、その代償として評議会はギアリー大佐を宇宙艦隊元帥に任命してしまう。
 それが暴発寸前の艦長たちを納得させる、たったひとつの冴えたやり方だという、いかにも政治的な判断で……

 100年の宿敵シンディックとの決戦、そして謎の異星人との戦いに勝利して、大佐が尻に敷かれるまでの話。長くて、分厚いのだけれど、冗長と感じないのは、あれこれ問題が山積して、それを解決したり棚上げしたりしながら進んでいるからでしょうか。特に今回は大佐を支えてきた腹心の艦長たちの不満爆発が山場。ギアリー大佐が成功すればすべて大佐の功績、大佐が失敗すれば補佐する艦長たちの責任……そんな空気がひしひしと。
 この艦隊内部の人間関係のギスギスをなんとかすることを思えば、敵本星の攻略やら正体不明の異星人大艦隊との戦いなんてちょろいもんです。

 今回のツッコミ処は、新登場の高速補助艦<タヌキ>。
 艦隊の後方で修理や補給を担当する艦艇は、ジンとかフェアリーとか神話の生き物の名前が艦名に割り当てられているのですが、タヌキ。確かに日本昔話のタヌキは立って歩いて話して化けますが……、解説の岡部いさく氏の「ジャック・キャンベル、どこで日本語を仕入れてるんだ?」という言葉には同感。
 まあ、赤いキツネと緑のタヌキでなかっただけマシですが……。

【彷徨える艦隊6】【巡航戦艦ヴィクトリアス】【ジャック・キャンベル】【寺田克也】【岡部いさく】【ワーム】【捕虜】【不幸なインビンシブル】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「栄光の<連邦>宙兵隊~異星使節団を守護せよ」  タニア・ハフ

2011-05-13 | ミリタリーSF・未来戦記
「良い副官を持つことは、有利な位置と数の上での優位をあわせ持つに等しい価値がある」
 シルスヴィスの格言。

 部隊の半数を失う損害を出し、再編も半ばの宙兵隊部隊シークオ中隊に新たな任務が与えられた。連邦加盟を検討しているシルスヴィス族の星に送り込まれる使節団に、儀仗兵として一個小隊を同行させるというのだ。
 通常なら実戦部隊を儀仗兵とするなどあり得ない任務だが、連邦を構成する種族は多くても戦闘に耐える野蛮性を維持している種族は少ない。それに対してシルスヴィス族は戦士階級ばかりの種族であり、その戦闘種族に連邦加入を促すには実戦経験の豊富な部隊が伴っていた方が説得力を増すというのだが……。

 ミリタリーSFはあれこれあるのだけれど、陸戦もので軍曹が主役という話は多くありません。主役はたいてい士官コースに入ってしまって偉い人になっちゃうか、最初から偉い人なんです。でも、そんな小説でも必ず登場し、主人公たちを支え、兵士たちをまとめ上げ、部隊を仕切っているのは叩き上げの古参軍曹たち。
 この作品の主人公であるトリン・カー二等軍曹は、世に遍く存在する他の軍曹と同様に、眠ることなく、ちょっと目を話すと何をしでかすか分からない兵卒どもを統率し、戦場に目を配り、新米士官のお守りをしつつ、戦いに勝ち生き残るために最善の道を模索します。
 ひたすら厳しい状況が続く、この話の中で思わず笑ってしまったのは、兵士の何気ない一言に周囲が慌てふためくところ。家族の写真を見せたり「おれ、この戦いが終わったら」とか言い始めたりしたとこ。

【栄光の<連邦>宙兵隊】【1:異星使節団を守護せよ】【タニア・ハフ】【増田幹生】【籠城】【狙撃】【死亡フラグ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「共和国の戦士2~星間大戦勃発」 スティーヴン・L・ケント

2011-03-08 | ミリタリーSF・未来戦記
『生きることは殺すことよりもずっと大きな体験なのだ』
 しかし、ウェイソン・ハリスは殺すことでしか生き方を知らない。

 ウェイソン・ハリスはクローン兵士である。
 クローン兵士は自らがクローンと気づいた瞬間に自死するようプログラミングされている。
 そして、ウェイソン・ハリスは自らがクローン兵士であることを知っている。

 だが、彼は生きている。
 それは彼が戦闘能力を強化した、リベレーターと呼ばれる特殊タイプの最後の生き残りだからだ……。

 『共和国の戦士』の続編で、星間戦争がついに勃発。
 共和国(統合政体UA)は強大な艦隊を有しているけれど、自己転送能力を持つ艦は巨大艦1隻しかなく、他は転送ステーションのディスクをくぐることでしか恒星間を移動できない(カウボーイ・ビバップみたいなのね)。
 これに対抗する反乱勢力「国家連合」にはまともな艦隊がない。
 モガト教徒は40年前ほど前に独立を目論んで脱走した銀河系中央艦隊の生き残りで、自己転送できる艦隊を保有しているが、きちんと艦を整備し、コントロールする技術を失っている。
 本来ならば、共和国の優勢は動かないはずなのだけれど、ここに人種融合が進む銀河系の中でも民族色を維持し続けていた日本人の勢力が加わり、1対3となって戦局が大きく動きます。文化的には閉鎖的だけれど、テクノロジーにはめっぽう強いヒノデ勢力です……って、なんで日本人なのかなあと思いましたが。
 そんなに変な描写はありませんが、唯一、艦橋に設置された鳥居っぽいモニュメントだけはなんだかなあと笑いました。
 なんか、大戦はこの艦で終わってしまったような気がしますが、あくまで勃発ですからこれからまだまだ戦いは続くのでしょうね。主人公は相棒の黒人巨漢と2人だけで、これから何をしようというのでしょうか。

【共和国の戦士2】【星間大戦勃発】【スティーヴン・L・ケント】【クローン】【入植者】【ヒノデ】【カトリック】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地球戦線4」 ジョン・リンゴー

2011-02-05 | ミリタリーSF・未来戦記
 表紙はいかにも「キングギドラっ!」なんだけれど、首の数が違います。どちらかというとヒュドラかな。

 2004年10月。北米大陸での戦いは首都ワシントンの攻防に突入していた。テレビメディアの流す派手な映像が視聴率を稼いでいる一方、インターネットでは詳細に戦況を解説するウェブサイトにアクセスが集中している。
 しかし、戦いは何も北米だけで起きているわけではなく、中東ではイスラム防衛軍が第二次大戦当時の装備まで投入して激戦に突入し、中国大陸ではアメリカからの支援物資を利用しての人海戦術を繰り広げており……。

 これも一種の仮想戦記かな。
 戦いは死屍累々の激戦ばかり。敵前逃亡も相次ぎますし、それを食い止める努力も綺麗事では済みません。けれども、銀河テクの産物であるコンバットスーツ部隊なんか恐れもしない猪突猛進のポスリーン人たちが、工兵部隊にはビビリまくる姿に爆笑。工兵部隊がここまで活躍する話は、他で読んだことが無い気がします。
 最後の最後にまたまたカリーちゃん登場。まだ8歳とのことです。末恐ろしい8歳だこと……。

【地球戦線】【ポスリーン・ウォー2】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【工兵の故郷フォート・ベルボア】【悪魔の掟】【ワシントン記念塔】【クレイジー・オン・ユー】【壁に穴】【電磁投射砲】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地球戦線3」 ジョン・リンゴー

2011-01-18 | ミリタリーSF・未来戦記
「わたしはお酒を飲まないし、悪態もつかないし、ギャンブルもしません。でも、充分、自分の人生にワクワクしています」
 解体技師アマンダ・ハントの言葉。

 犬のノミを退治するいちばん簡単な方法は、犬ごと火の中に投げ込むこと。
 でも、それが効率的だからと言って正しい方法じゃない。
 同じような理屈で、大統領は軍事的に正しい方法ではなく、政治的に正しい方法を選択します。しかしそれは、単純な人数比で1:7という戦力差(本当はその2倍)を無視し、充分な装備も与えられず訓練も半ばの部隊を精鋭部隊と同一視する、楽観的なものでした。
 フレデリックスバーグは多くの人々と共に地図から消え、悪鬼の軍団は分離してワシントンとリッチモンドをめざしはじめ……。

 またしても死屍累々。そして少女カリー・オニールはしっかりおじいちゃんに教育されちゃいました……という話。いくらなんでも「客が来た」と聞いて「味方? それとも敵?」と応えるような娘なんて、再会したら両親はびっくりだ。まだ10歳にもなっていないはずなのに部屋まで汚して……。

【地球戦線】【ポスリーン・ウォー2】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【マクドナルド】【ノースカロライナ】【ポーカー】【戦闘修道士】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「戦士志願」 ロイス・マクマスター・ビジョルド

2011-01-11 | ミリタリーSF・未来戦記
 《ヴォルコシガン》シリーズの邦訳1作目にして、今まで読んだビジョルド作品でいちばん面白かった作品。

 17歳の少年マイルズには野望があった。帝国士官学校へ入学し、いずれは皇帝に使える戦士となること。それは帝国の有力貴族であるヴォルコシガン卿を父に持ち、グレゴール帝とも幼なじみであるマイルズには当然の道だった。
 しかし、マイルズには生まれながらの身体的ハンディキャップがあった。妊娠時の母親が毒ガステロの被害を受けたためだ。小柄な体格、脆い骨格……士官学校の体力テストで不合格となったマイルズは、父親の腹心の部下であるボサリ軍曹、その娘で幼なじみのエレーナと共に傷心旅行へ出かけるのだが、旅先のベータ植民惑星でひょんなことからオンボロ貨物船を手に入れてしまう……。

 体力的には人並み以下の貴族のお坊ちゃまが、つい手を出してしまった人助けをきっかけに、家名も通用しない異国の地でウソにウソを塗り重ね、ハッタリにハッタリをかけ続けながら、いつしか止まることのできないチキンレースに巻き込まれ、トップランナーになってしまう話。トカゲは竜にならねばならなかったから竜になった。マイルズは提督にならねばいけなかったから提督になった。そういう話。
 傭兵たちのシビアな雇用関係には大爆笑。

【戦士志願】【ロイス・マクマスター・ビジョルド】【士官学校】【傭兵隊】【福利厚生】【若作り】【謀反】【通商破壊戦】【惑星封鎖】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地球戦線2」 ジョン・リンゴー

2010-11-13 | ミリタリーSF・未来戦記
「まず掘って、それからなかで死ぬ」
 それが設営部隊。最新鋭装備の配備が遅々として進まない本土防衛戦では、工兵隊が頼みの綱です。

 予想より遙かに早くボスリーンの前哨部隊が太陽系へ到達。宇宙戦闘艇やフリゲートの迎撃を難なくかわし、世界各地に降下していく。
 まだ、防衛体制の整っていない地球軍は懸命に戦線を維持しつつ、焦土作戦を展開し始めていた……。

 ということで、シリーズ4冊目にして地球本土での逆境死闘篇がいよいよ本番です。
 ポスリーン族の宇宙軍が何万と地上降下します。『降伏の儀式』のピンクのゾウさんは「降伏します」といえば許してくれましたが、こちらのワニ頭のケンタウロスは他者=食い物としか考えていないので防戦する方は最後は自爆してでも相手に食糧は渡してやらないぞという覚悟です。
 ピーター・ラビットのくだりには『世界大戦争』を連想してしまいました。戦うべき人が戦って死ぬのは任務の内だけれど、こういうのはいかんよ。群像劇なので、キャンプ場の親父から消防署長、ハイスクールの学生カップルまで老若男女が登場しますが、どれだけの人が生き残れるのでしょうか。

【地球戦線】【ポスリーン・ウォー2】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【キーウエスト】【地下トンネル】【騎兵隊】【焦土作戦】【消防署長】【ノースカロライナ】【GOTH】【マスコミ】【ブービートラップ】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「地球戦線1」 ジョン・リンゴー

2010-10-16 | ミリタリーSF・未来戦記
「敵から身を守るのはたやすい。だが、味方から身を守るのは、ひどく難しいのだ」
 老オニールの言葉。

 異星人ポスリーンの太陽系侵攻まで2年。
 地球人をポスリーンの矢面に立たせる腹づもりの銀河連盟だが、その支援は十分ではなかった。NATO軍や中国軍は同じくポスリーンの侵攻に苦しむ星々へ傭兵同然で送り込まれて経験値と外貨稼ぎをする一方、平野部の防衛はほぼ不可能として各地で山岳要塞の建設が始まり、五体満足な成人はすべて徴兵されていた。
 しかし、政治的判断から沿岸部の大都市防衛をアメリカ大統領が決断したことにより、幾つかの都市では要塞化が進められ、子供や老人相手にテロ工作の訓練が実施されることとなった。
 その頃、両親が軍人のカリー・オニールは、人里離れた農場で暮らしている祖父に預けられていたが、ベトナム戦争時に工作員として派遣され汚れ仕事に手を染めていた老オニールは、この8歳の孫娘にそのテクニックを伝承しようとしていた。
「設置されたクレイモア地雷を解除しようとするのは、バカか大バカだけだ」

 前線の軍人たちは頑張って戦っては1章もたずに戦死していく一方、後方の将軍や政治家は古い考えから脱却できず、銀河連盟は裏工作に余念が無く、宇宙艦隊はオンボロだらけで、銀河世界における地球の初陣は既に末期戦の様相を呈しています。
 ポイントは、銀河文明は地球の遙か先を行っているのだけれど、行きすぎてしまって……というか、文化として固定してしまって、量産を前提としない技術体系になっているというあたり。宇宙フリゲート1隻を家内制手工業で50年かけて建造し、200年使うとかいうペースでは戦争準備が間に合わないのです。
 それから日本は地下都市建設が伝統的に得意だとか、ここは笑うところなのかな。

【地球戦線】【ポスリーン・ウォー2】【ジョン・リンゴー】【ひろき真冬】【植民船】【バーチャル・シミュレーション】【スイス護衛兵】【グルカ兵連隊】【パイプ爆弾】【大統領】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする