付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「アラスカ戦線」 ハンス・オットー・マイスナー

2009-02-25 | 戦記・戦史・軍事
 太平洋戦争さなかの1944年。アメリカ本土爆撃に必要な気象情報を入手するため、日本軍の特殊部隊がアラスカの森林地帯へと侵入した。10人の日本兵を率いるのは、元オリンピック・メダリストの日高遠三大尉。
 しかし、その電波を米軍も察知し、野獣監視人アラン・マックルイアをガイドにアラスカ・スカウトとの合同部隊を編成して森林地帯に部隊を投入するのだが……。


……という、アラスカを部隊にした日本兵とアメリカ人のサバイバルをドイツ人が書いた話。考証的におかしな点が皆無ではないけれど、欺し欺され、追いつ追われのサバイバルゲームにして男たちの戦いは、ささいな点など気にさせません。

「ハワイ諸島は昔からアメリカのものだったか? なぜアメリカはプエルトリコを、グアムを、ウポルを治めているのか? 有色人種の希望でか? テキサスとカルフォルニアにはどうしてやって来たのか? 弱体のメキシコを略奪するためではなかったか! ネヴァダ、アリゾナ、ニューメキシコ……(以下略)」
 なぜ日本はこんな戦争を始めたかとアランに訊ねられた刀自本少尉が正当防衛だと言い張る返答の一部。狂気の暴論と一蹴されますが、このくだりはけっこう長いので、アメリカ人には書けなかったかも知れません。

 後日談も良い感じに締めくくられています。

【アラスカ戦線】【ハンス・オットー・マイスナー】【気象情報】【純白のオオシカ】【巨熊】
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「女王陛下のユリシーズ号」 アリステア・マクリーン

2009-02-23 | 戦記・戦史・軍事
 さて、ここで問題です。

Q:
 『女王陛下の007』
 『女王陛下のプティアンジェ』
 『女王陛下のモンティ・パイソン』
 『女王陛下のユリシーズ号』

 この中で仲間はずれはどれでしょう?

A:『女王陛下のユリシーズ号』

 他の3作品は女王統治下のイギリスの話だけれど、『女王陛下のユリシーズ号』だけは第二次世界大戦、つまり国王統治下のイギリス艦の話。誤訳なんだけれど、こちらの方がカッコイイから無問題ってことだったらしい。英国軍艦ユリシーズ号の波瀾万丈の冒険譚……じゃあないなあ。どちらかというと末期戦。

 Uボートひしめく北極海航路。そこに大局的に見れば必然、当事者にしてみれば無茶無謀な作戦で、輸送船団が送り出されることになる。なんとか援助物資を送り届けてソ連を支援しないといけないのだ。
 その護衛につくのは、歴戦の勇者である旧式軽巡<ユリシーズ>、駆逐艦が6隻、そして廃艦寸前の空母2隻(艦載機なし)。しかも叛乱騒ぎの中で出航したため、乗員は傷病兵か営倉から引っ張り出されたばかりの男たち。燃料も片道分。戦艦大和の沖縄特攻が大名旅行に思えるありさまで、果たして輸送船団は港にたどり着けるのだろうか……。

 えっと、たどり着けませんでしたっ!
 冒険小説で分類されがちだけれど冒険小説じゃない。男の生き様といえば男の生き様なんだけれど、こりゃ違うでしょ。

【女王陛下のユリシーズ号】【アリステア・マクリーン】【輸送船団】
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「中東戦争全史」 山崎雅弘

2009-02-17 | 戦記・戦史・軍事
 中東で繰り広げられている戦争とテロの歴史を、紀元前のそもそもの始まりから説き起こし、政治外交から軍事的な面まできちんと網羅して解説したもの。
 これを読むと、きれいごとの理屈ではどうにもならない状況がよく分かります。何千年という歴史の中でねじれにねじれ、こじれにこじれたものを、世界大戦におけるイギリスの二枚舌外交(三枚かな?)が煽って火をつけて放り投げたわけで、終始救いがないひどい話。
 救いがあるといえば、「どんなときでも人は諦めなかった」ということだけだけれど、諦めなかったからこそここまで酷くなっている話というのもわかるので、やっぱり救いがないです。

【中東戦争全史】【山崎雅弘】【パレスチナ】
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「ある主計士官の手記」 藤城友吉

2008-09-15 | 戦記・戦史・軍事
 陸軍主計士官として招集され、第三十師団輜重兵第三十連隊に加わり、平壌からミンダナオ島へと送られた著者の回想録。
 物資調達といっても買い出し程度から、山のような書類が行ったり来たりする統制品の指名入札とか、あれやこれやの毎日ですが、フィリピンに送られるようになるとそういう仕事はぴたりとなくなります。調達とかどころでなく、食うモノにすら困るようになるのです。
 司令部は降伏を許さず、それでいて武器弾薬どころか食料すら届かなくなり、兵隊や看護婦たちはひたすら 徒歩で撤退を続けます。すでに集団としての体裁を成さず、次々に脱落していきます。主計士官の著者も、書類を捨て武器を捨て軍刀を捨て、最後には兵隊たちから預かった預金帳の表紙すら捨ててしまいます。
 そういえば、食べ物に関するメモが多いですね。まだ戦況が良かった頃は軍票で何を買った、何と何を交換したという話ばかりですが、後半になると正体不明のキノコを食った、子ネズミ3匹を1人で食ったとかそういう話になるわけです。
 著者は戦っていないし、本来の主計仕事は書き残してどうこうするものでもないし、そうなると食中心になるのは当然かも知れません。

【ある主計士官の手記】【藤城友吉】【病院】【平壌】【飢餓】【捕虜収容所】
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「戦争は女の顔をしていない」 スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ

2008-08-19 | 戦記・戦史・軍事
「真実というのは我々が憧れているものだ。こうでありたいと願うものなのだ」
 執筆時の検閲官の言葉。

 第2次世界大戦、ソ連での呼称なら大祖国戦争だけれど、この戦争に参加したソ連の元・女性兵士たちへのインタビュー集。運転手、軍医、給食係、通信兵、整備兵、歩兵、狙撃手、戦車兵、高射砲部隊、土木大隊、政治将校……。やはり医療・通信が多いけれど、実戦部隊も少なくないし、その話は悲惨なものが多い。

 だいたい第2次大戦後に「男女平等」「マイノリティの権利向上」という考えが急速に進むのだけれど、それはこの大戦争によってそれまで社会の担い手であった成人男子が根こそぎ戦場へ動員され、それによって生じた空白を女性が埋めて実績を作ったことが大きいのですね。
 工場だって、公共交通機関だって、女子供がちゃんと何年も動かしてきたのだから、今さら「女子供は黙っていろ」なんて言わせないし、女性自身にも「もしかして、男と同じように働けるじゃない」という意識が芽生えます。
 もちろん一朝一夕に進むわけでないのは、歴史の証明する通り。
 でも、社会主義国、共産主義の国では、それこそ男女とも同じように働いて社会参画して当然というイメージがあっただけに、このインタビュー内容は意外でもありました。
 ぜんぜん、平等じゃないじゃん!

 確かに第2次世界大戦にソ連が100万人以上の女性を兵士として戦場に投入した話は有名。英米などの各国でも軍人として女性は加わっていたものの、補助要員ばかりで直接戦闘に加わったものはいませんし、日本などは補助要員でもせいぜい電話交換手とか看護婦(当時)といった軍属止まりです。
 ところが、国土が戦場となったソ連は、魔女飛行隊が知られているように、多くの女性兵士が実戦に投入されていました。けれども、たとえば生き残った女性エースパイロットでも、戦後の活動を追跡することはほぼ不可能。足跡を追えても活躍らしい活躍をしている人は皆無。アメリカのジャクリーヌ・コクランの暴れっぷりを思うと、嘘のように静かです。
 なんでかなあと思ってましたが、結局、ソ連も男性社会であって、戦争で活躍したからといって、むしろ活躍したからこそ、女性兵士たちは周囲の社会から疎まれたのですね。「男だらけの世界に潜り込んだふしだらな/人殺しの娘がいたら、他の姉妹まで嫁のもらい手が無くなる」「どうせ戦場でぴーぴー泣いていただけだろう」などと思われていたらしいことは、戦後何十年も経って実現したインタビューの端々からも伺えます。

【戦争は女の顔をしていない】【アレクシエーヴィチ】
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「本当にあった陸自鉄道部隊」 伊藤東作

2008-07-15 | 戦記・戦史・軍事
 えっと、「面白い話」とか「エッチな話」ではなく「陸自鉄道部隊」です。中身にまったくふさわしくありませんが、面白いから買ってしまいました。

 鉄道というのは大量輸送に適した交通手段であり、線路のない場所は走れない、線路を壊されたら動けないという弱点を抱えながら、戦略的に重要なシステムとしてあてにされています。
 旧陸軍にも鉄道連隊という工兵科に属する輜重兵科がありましたが、陸上自衛隊にも有事の際には人員や物資を移動させるのに必要だからと、施設科に属する輸送兵科があったのですね。施設なのに輸送ってのも変ですが、モノが鉄道なので、機関車を運転したり保守整備するだけでなく、壊れたら線路から敷き直して修理する必要があるのですね。
 それができたのは、昭和35年2月。しかし6年足らずで、この鉄道部隊第101建設隊は消えてしまいます。
 当時の国鉄がストを繰り返して市民の生活の足を奪っている間に、道路整備が進み、自動車が社会に普及し、時代が鉄道から自動車に移行してしまったのですね。そしてこの第101建設隊も、昭和38年の東北大豪雪、昭和39年の新潟地震に出動しただけで御役御免となったのだそうです。

 メモ:大豪雪の際は、火炎放射器も投入されたが除雪作業には力不足で、結局はスコップによる人力作業に終始したとのこと。

【本当にあった陸自鉄道部隊】【伊藤東作】【SL】【国鉄】【自衛隊】
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「アメリカ義勇航空隊出撃」 吉田一彦

2008-07-07 | 戦記・戦史・軍事
 ここしばらく、太平洋戦争前夜から終戦後までの人物伝を読みあさってます。進行中の企画の資料ですが、こういうのを付け焼き刃といいます。それにこの手の本は、10冊読んで1冊実になれば儲けものです。まあ同じ時代の同じ場所の1つの大きな話が、中心となる人物が変わるだけでまったく別物になるのがおもしろいところ。こういう感覚をPBMにも移していきたいものです。
 今回は蒋介石の下で航空隊を設立して暴れ回ったクレア・シエンノートの一代記。早期監視システムや編隊行動を積極的に発案し導入した人物で、上司に持てば頼れる親父だが、部下に持つとわがままでうるさい乱暴者となってしまうお人。リアルでつきあったら、イヤな相手のような気がします。
 シエンノートは太平洋戦争前夜から中国大陸でいろいろやった人ですが、逆にみれば「彼がやったとされていることは、それまでは誰もほとんど考えてもみなかった」ことです。当時の空の様子を把握するのになかなか役立ちそうです。

【アメリカ義勇航空隊出撃】【吉田一彦】【シエンノート】【日中戦争】
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「ザ・マーチ 1977年世界の兵器」 編:西村多加志

2008-05-24 | 戦記・戦史・軍事
 30年前の最新兵器情報満載の1冊。何もかも、皆、懐かしい……。

 こういう雑誌は数年前のものだと情報が古くて役立たずになるものですが、ここまで古いと新旧ギャップを楽しめますね。もうすっかり消えて話題にも上らないもの、いまだ現役で頑張っているものとかあれこれ。
 まだソ連が東西対立で頑張っていた時代です。空軍の特集記事なんか、『ソ連の最新軍用機の虚実』。これなんか、ソ連崩壊後のデータと検証したらどれだけ読みが当たっていたか解るってもんです。まあ、それができるほどのマニアじゃありませんけど。
 その他の記事は、世界の最新機を無人機からテスト中の最新機まで。海軍は原潜特集で、陸軍は戦車とミサイル中心に。ミサイルは推進機関の構造や誘導方法から載っているから、もしかしたらどこかで参考にすることがあるかも知れないな。
 もう少し捨てずに取っておくことにしましょう。
 ちなみに写真は裏表紙の広告記事。「どんな高度でも、どんな速度でも……どんな脅威に対しても……」って、この煽り文句が格好良いよね。個人で買って使えるものなら使いたくなるコピーです。

【兵員輸送車】【ミサイル誘導】【無人機】
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「あっと驚く飛行機の話」 飯山幸伸

2008-05-23 | 戦記・戦史・軍事
 普通にミリタリーもので語られるのとはちょっと違った視点で語る飛行機の話。
 零戦と同時期の似た機体を集めてどれがどれを真似たのかとか、日本ではトンデモ兵器扱いされる風船爆弾が与えた影響のあれこれから構造まで、エピソードとか資料をあれこれと。
 いちばん気になったのは、というか、それが目的で買った記事は、フォン・ローセン伯の冒険の顛末。
 スウェーデン貴族のカール・グスタフ・フォン・ローゼン伯は、義を見てせざるは勇無きなりを地でいく家系。ソ連軍に隣国フィンランドが攻撃され冬戦争に突入するや、自腹で旅客機DC-2を買い入れ、それに機銃や爆弾を搭載して義勇兵として乗り込んだのだが……という話。
 旅客機をチャーターして空爆というと『男一匹ガキ大将』の石油危機編を思い出してしまいます。内容的には目新しいモノはなかったけれど、これだけまとまっているのは貴重かな。でも、そんなに「あっと!」とはいいませんでした。

【風船爆弾】【ムスタング】【ハンシン・ユッカ】
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「世界の戦車」 チェンバレン&クリス

2008-04-30 | 戦記・戦史・軍事
 資料という名の下に、あれこれ本が集まってきます。たいていはミステリー、SF、ミリタリーだったりするので、そうなんでもかんでもというわけじゃないけれど。昨年は、持っていた人が手放したのでということでシャーロック・ホームズ関係の研究書ばかりがダンボール2杯分届きました。誰かは知らないけれどありがとうございます。
 というか、みんな「自宅に置いておくと場所塞ぎorどこに仕舞ったかわからなくなるもの」を持ってきているだけじゃないかという疑念も。

 さて、ていとくが「これは必要ですよね!?」と大日本絵画の新刊案内を置いていきました。いや、必要でも何でもないです。でも、載っていたチェンバレン&クリスの『世界の戦車』をbk1に注文。ちょうど書評で稼いだポイントが買えるくらいたまっていたのも好都合。第一次大戦からの世界各国の戦車を図版を付けて、細かなバージョン違いまで解説した本。個々の文章はさほど詳しくないけれど、全体では膨大な種類になるので総体として詳細な本。
 さらに小林源文のイラストエッセイもおまけに収録って、そりゃ絶対にチェンバレン&クリスの原書にゃないよね。

【戦車】
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「ドイツの火砲~制圧兵器の徹底研究」 広田厚司

2008-04-26 | 戦記・戦史・軍事
 砲兵が活躍した最後の大戦争である第二次大戦時に、ドイツの火砲がいかに発達していったかをさまざまな砲の種類と共に紹介していった1冊。

 歩兵が近接戦闘に突入する前に敵火力を制圧するために使用する近接支援用の迫撃砲。歩兵と共に移動して直接火力支援を行う歩兵砲。これを戦車の車体に載せると自走砲。山岳地帯での支援用に分解容易な小型軽量砲として設計された山砲。対戦車砲に装甲列車に列車砲、対空砲に対空要塞とレーダー網。
 しかしソ連の火砲に比べてドイツの火砲は終始射程が短く、また戦況の悪化により開発した兵器も大量生産に至らなかった。主力は最後まで前大戦時の改良版であったという……。

 ここまで徹底的に追求して浮かび上がるトホホな実態。
 山砲はいろいろ試してみたけれど、いちばん評判が良かったのは第一次大戦前から輸出していたクルップ製の山砲だったとか。
 通常火砲より信頼性は劣るけれど発射装置が安価で製造も簡単なことから普及したロケット砲。でもいちばんのきっかけはそれまでに東部戦線でソ連軍からさんざんカチューシャ・ロケット砲の洗礼を受けていたため。
 強力だけれど、一箇所突破されると残りのほとんどが無用の長物となる沿岸砲や要塞砲、航空機の発達で時代遅れになっていた鈍重で金食い虫の列車砲。
 弾薬も足りなくてソ連軍の捕獲砲が火砲不足を補っていたということですし、装甲列車も先陣を切って配備し活用していたのはソ連軍と聞くとますますトホホ。

 こうしてみると、ドイツは決して兵器の先進国では無かったのですね。
 それでも頑張ったのは対空砲群。宮崎駿がマンガに描いた対空要塞フラック・トゥルムも大活躍(当社比)。何千門という対空砲や機関砲、そして夜間に接近する敵を捉えるサーチライト中隊、警戒レーダー、大型測距儀、聴音機を統括する指揮所。結局、複雑のシステムを動かすのが好きなだけだったんでないかいという気も。
 もちろん、ちらっとではあるけれど、風力砲や電磁砲にも言及。言及してあるだけだけれども。

【砲兵】【開発の無駄】【多様性】【生産性】
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「カラーで見る第二次世界大戦~ヨーロッパの戦い」

2008-04-22 | 戦記・戦史・軍事
 DVDで見る60年以上前の映像集で、ノルマンディ上陸からベルリン陥落まで。
 ノルマンディは上陸開始、戦闘後。防空気球の群れがきれい。アルデンヌの戦いはニュースのみ。ベルリンは瓦礫の山。連合軍はあいかわらず情け容赦のない市街地爆撃。確かにアルデンヌ以後、黒人兵の数が増えてます。当初は黒人兵は「前線で戦わせる価値/能力もない」とみなされていたのだとか。
 あっちこっちの収容所では文字通り死体の山。地面の中から人の残骸。見学させられる近隣市民の列。
 でもやっぱりイタリア戦線は無視され続け、一進一退が続いているうちに「欧州での戦い、終結宣言」。

 本当に、カラー映像が残ってるんだなあ。着色じゃないと思うけど……。
 ただ、報道とか軍の記録ならともかく、一兵士の家族団らんみたいなものまでフィルムがあるので、国全体が金持ちなんだなあと。まあ、大恐慌といいながら、農夫が「自家用車」で引っ越しする国ですから。

【第二次大戦】【カラーフィルム】
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「カラシニコフ自伝 世界一有名な銃を創った男」 エレナ・ジョリー

2008-04-16 | 戦記・戦史・軍事
「もちろん、カラシニコフ銃を手にしたビンラディンの姿をテレビで見るたびに憤りを覚える。(中略)テロリストも正しい選択をしているのだ。一番信頼できる銃を選んだという点においては!」

 現在、世界中で6000万丁以上が生産され、使用されているカラシニコフ自動小銃の設計者であるミハイル・チモフェエヴィチ・カラシニコフの生涯を、エレナ・ジリーが聞き書きしてまとめたもの。

 カラシニコフは1919年のロシア革命の直後に生まれ、スターリンの圧制下のシベリアで家族を次々に失い、やがて整備士として戦車部隊に配属。第二次大戦のブリヤンスクの戦闘で重傷を負うも生還し、ファシストを倒すための銃を創りたいという一心で開発に打ち込み始めたカラシニコフは、やがて著名で階級も遙かに上の技術者たちとの競争に打ち勝つだけの銃を生み出すことになる。
 しかし西側の技術者たちとは異なり、カラシニコフの手には銃の生産によるライセンス料は入ってこない。彼の主な収入は軍の年金くらいだ。けれども、彼は共産主義者として、そのことに対する不満は語らない。ただ、もう少し自由に使える資金が有れば後進の育成と開発が楽になるのにというだけだ。
 共産主義が成功したとは思っていないが、その理想は信じているのだ……。

 動乱のロシア現代史のど真ん中を生き続ける技師の自伝。
 武器史家エドワード・エゼルとの交流から、ユージン・ストーナー(M16の発案者)、ビル・ルガー(スターム・ルガー社の創設者)、ウジール・ガル(ウージー短機関銃の生みの親)といった西側技術者と知り合うことになる一幕も面白かったし、もう少し詳しく聞きたいと思いました。

【カラシニコフ】【自動小銃】【官僚機構】
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「グリーンビーチ」 ジェイムス・リーソー

2008-03-26 | 戦記・戦史・軍事
「ジャックだ! わたしが殺さなきゃならなかった男がいる!」

 1942年8月、フランス沿岸のディエップ(暗号名グリーンビーチ)に南サスカチェワン連隊を中心としたで6000名のカナダ・イギリス連合の奇襲部隊が上陸し、ドイツ軍と交戦状態に入った。
 その中に1人の技術者ジャック・ニッセンサールが混じっていた。彼の目的はただ1つ、近い将来の反攻上陸に備えてドイツ軍のレーダー基地の機能を確認すること。それこそ、この奇襲の真の目的だった。
 ニッセンサールに同行するのは10名の護衛兵。だが、レーダー技術者であるニッセンサールをドイツ軍に渡すことはできない。敵の手に落ちそうな時は彼を射殺すべしとの厳命を受けていたのだ……。

 ちょっとマイナーなディエップ奇襲作戦の物語だけれど、参加したカナダ人部隊の損耗率65%、5人に1人が戦死という酷い戦い。一見して、ただの負け戦。
 ただ、この作戦があったからドイツ軍のレーダー網の能力を把握できたわけだし、ここで上陸用舟艇や水陸両用車の欠陥が露見したり港湾確保の困難が実証され、2年後の上陸作戦へとつながることになります。何事もやってみないと解らないのです。
 やってみないとわからんといえば、ここで港の占領はたいへんだとわかって、移動式の港を作って持っていこうぜ!のノリで開発されたのがコンクリート製の人工港マルベリー。
 でも、それも1基は嵐で沈んだとか、苦労して作って運んだマルベリーより、古い船を沈めて港代わりにしたグーズベリーの方が使い勝手が良かったらしいとか、これまた使ってみなければわからない話があれこれ。まあ、マルベリーがどれだけ使い物になったのか、読む資料ごとに評価が違うんでよくわかりません。どれが正解か教えて欲しいです。

【グリーン・ビーチ】【ディエップ奇襲作戦】【ジェイムス・リーソー】【ジュビリー作戦】【RAF】【強襲】
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「第二次大戦に勝者なし」 アルバート・C・ウェデマイヤー

2008-03-14 | 戦記・戦史・軍事
 第二次大戦にアメリカが参戦する以前から動員計画などの作戦立案に参画していたウェデマイヤー将軍の回想録。
 前線の兵士や指揮官ではなく、その任務の大半を後方での作戦立案や調整に奔走していた著者だけに、欧州戦線で戦力集中によって敵に決定的打撃を与えたいアメリカと分散攻撃でまず弱体化に導きたいイギリスの主導権争いとか、計画漏洩の疑いでFBIの取り調べを受けたりと、別の意味で生々しい話題の数々。前にも書いたけれど、チャーチルが執筆してノーベル文学賞を取った『第二次大戦回想録』では「全部ワシがやった」的な自慢話になっていたのに対して、こちらのウェデマイヤー将軍は「最初からの私の言ったとおりにしていれば……」という後悔口調なのも特色。
 『中東戦争全史』と合わせて読むと目を覆いたくなるけれど、マキャベリズムを徹底的に貫くイギリスと、まだまだ青いアメリカという対比も面白いかな。それから、チャーチルは国民の士気を煽り立て維持する能力は最高だが、戦略家としてはダメダメだからなんとかして決定権を取り上げろと右往左往する様子も人ごとなら面白い。

【第二次大戦】【勝利の計画】【回想録】
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