そもそもの話からすれば、人間の存在というものがどうとか、社会の構造とか文明の発展がどうのとかいう既存の枠組みを取っ払い、未来において人間の肉体が遺伝子改良やサイボーグ化で元の形を失ったり、巨大なネットワークで人間の意識が肉体を離れたり同化しちゃったりするようなサイバーでパンクな話を「サイバーパンク」と呼ぶようになりました。この「サイバーパンク」の定義そのものからして諸説あるけど、それは置いときます。
これに対して、イギリスのヴィクトリア朝あたりを舞台にした作品なのに、ネジ歯車や蒸気機関による技術革新がオーバーテクノロジー的に発展し、レトロ風味だけど変に高度なテクノロジーが発達している世界の物語を「スチームパンク」と呼びます。これは、ジーターが「あれがサイバーパンクなら、自分たちの書くような話はスチームパンクと呼んで差別化しようぜ」と言い出したことが始まります。このあたりはジーターの『悪魔の機械』の後書きに詳しいです。
それで、スチームパンクというのは超未来的技術が跋扈しているヴィクトリア朝ロンドンとか、アメリカ西部開拓時代とかが舞台になるわけですが、その亜流ともいうべき物語は日本にもあります。
「和風スチームパンク」というべきか、「カラクリ時代劇」というべきか、戦国時代や江戸時代を舞台に、トンデモな超兵器がしれっと登場する作品ですが、日本の場合、これにまことしやかに忍術忍法が混ざってくるので油断なりません。
『虚船』 松浦秀昭
文化年間。江戸幕府は既に地球防衛組織<青奉行>を結成していた。
<青奉行>の本部は江戸のとある問屋の地下深く、秘密裏に造られ、直情径行な奉行職・浅葱のもと、日夜、謎の円盤・虚船に対し、敢然と立ち向かっていたのである……と、宇宙からの侵略者相手に花火を使った哨戒網からカラクリ仕掛けの巨大ロボットまで駆使して立ち向かう物語です。
『赤胴鈴之介』 原作:武内つなよし
時は幕末。鈴之助は剣術家として著名な千葉道場に入門し、兄弟子やライバルたちと切磋琢磨しながら幕府転覆をもくろむ鬼面党と対決していく……という1950年代の少年マンガから始まって、ラジオや映画になった活劇のアニメ版。最初は普通の武芸ものだったのに、いつの間にか機械仕掛けの青銅鬼が登場したり、敵方に戦車やら水中竜型潜水艦やら蝙蝠型の飛行メカが登場して怪しげなことに。
最近の国産ファンタジーでは真空状態で敵を切り裂く風魔法が定番だけれど、これはこの作品の「真空斬り」が根底にあると信じてます。
『大菩薩峠の要塞』 朝松健
天保八年、甲州鴉ケ原で砲術試合が開催されるということで、日本各地より名うての銃士たちが集まっていた。だが、それは幕府転覆を画策する滝津姫の陰謀であった。砲術試合を隠れ蓑に、大菩薩峠に密かに築かれた巨大要塞では、巨大砲が江戸城を照準に入れようとしていた……という、幕末ガンアクション小説。
『仮面の忍者 赤影』 原作:横山光輝
戦国時代も末期。織田信長や木下藤吉郎らが頼みとする忍者がいた。飛騨の影一族、その赤影は仲間の青影や白影らと共に、金目教を操る甲賀忍軍やまんじ党などの忍者たちと戦い続ける!……という1967年テレビ特撮作品。テレビ版は日本のスチームパンクの金字塔。
巨大な神像を模ったロボットや怪獣と忍者が空を飛び、砲撃し、爆撃して戦う大活劇。巨大なコマが地を割って出現し、巨大要塞が空を飛び海中に潜り、サイレンが鳴り響き、空飛ぶパラソルと大凧が空中戦を繰り広げ、南蛮渡来のビーム砲で水上バイクを撃破するようなことを平然とする話。あ、原作マンガは真っ当な忍者ものです。
『ロボットカーニバル』 監督:北久保弘之 他
8人のクリエーターが「ロボット」をテーマに制作した7本のアニメ短編を収録したオムニバス集。その一篇、「明治からくり文明奇譚〜紅毛人襲来之巻〜」。
まだ江戸時代の風景が残る東京。その帝都を狙う紅毛人マッドサイエンティストの巨大ロボットに立ち向かうのは、祭のために作られていた人型山車であった……。
『さくや妖怪伝』 監督:原口智生
富士山の噴火によって結界が破れ、封じられていた妖怪たちが地上に出現した。幕府の密命により、公儀妖怪討伐士の少女・咲夜は土蜘蛛の女王を討伐すべく仲間たちと旅立った……という忍者+妖怪もの。スチームパンクというにはギミックが大筒1つで物足りないけれど、巨大な松阪慶子は必見。
『白獅子仮面』 制作:大和企画
妖怪を率いて江戸を支配しようとする火焔大魔王に立ち向かうため、大岡越前は影与力・剣兵馬を長とする武装同心隊を結成。兵馬は獅子面の神の力で白獅子仮面となって妖怪に立ち向かう……という大江戸変身ヒーローもの。編隊を組んで飛来する唐傘小僧の大軍を、手裏剣投擲で撃ち落としていくシーンが好き。江戸空襲かよと。
『変身忍者 嵐』 原作:石森章太郎
魔神斉が従える忍者集団・血車党が日本を征服すべく動き出した。化身忍者の秘法によって肉体改造されたハヤテは、変身忍者嵐に化身して仲間の伊賀忍者たちとともに立ち向かう……という赤影の系譜に仮面ライダーの血を流し込んだ作品。
前半は血車党の化身忍者が敵だけれど、後半は魔神斉を操っていた大魔王サタンの西洋妖怪軍団と戦いますが、これを今風にリメイクすると「仮面ライダー響鬼」になります。
『風雲ライオン丸』 原作:うしおそうじ
『快傑ライオン丸』の後番組だけれど、主人公は役者も同じで名前も同じの別人。『素浪人 月影兵庫』と『素浪人花山大吉』の関係と同じですね。
本家スチームパンクだとレトロな超技術を登場させるのに世間に認められない発明家の作品とか歴史とは似て非なる別世界にしなくちゃいけないのだけれど、和風スチームの場合は「忍者の秘術」「南蛮渡来の技術」でたいてい説明つくんだよね。どれだけ万能なんだ、南蛮? あと、これに平賀源内を加えると完璧。
こういうのって、こども向けに限らず、さらっと大人向けにも混ざっているのが特徴。子連れ狼の乳母車とか必殺仕事人のアイテムとか。
これに対して、イギリスのヴィクトリア朝あたりを舞台にした作品なのに、ネジ歯車や蒸気機関による技術革新がオーバーテクノロジー的に発展し、レトロ風味だけど変に高度なテクノロジーが発達している世界の物語を「スチームパンク」と呼びます。これは、ジーターが「あれがサイバーパンクなら、自分たちの書くような話はスチームパンクと呼んで差別化しようぜ」と言い出したことが始まります。このあたりはジーターの『悪魔の機械』の後書きに詳しいです。
それで、スチームパンクというのは超未来的技術が跋扈しているヴィクトリア朝ロンドンとか、アメリカ西部開拓時代とかが舞台になるわけですが、その亜流ともいうべき物語は日本にもあります。
「和風スチームパンク」というべきか、「カラクリ時代劇」というべきか、戦国時代や江戸時代を舞台に、トンデモな超兵器がしれっと登場する作品ですが、日本の場合、これにまことしやかに忍術忍法が混ざってくるので油断なりません。
『虚船』 松浦秀昭
文化年間。江戸幕府は既に地球防衛組織<青奉行>を結成していた。
<青奉行>の本部は江戸のとある問屋の地下深く、秘密裏に造られ、直情径行な奉行職・浅葱のもと、日夜、謎の円盤・虚船に対し、敢然と立ち向かっていたのである……と、宇宙からの侵略者相手に花火を使った哨戒網からカラクリ仕掛けの巨大ロボットまで駆使して立ち向かう物語です。
『赤胴鈴之介』 原作:武内つなよし
時は幕末。鈴之助は剣術家として著名な千葉道場に入門し、兄弟子やライバルたちと切磋琢磨しながら幕府転覆をもくろむ鬼面党と対決していく……という1950年代の少年マンガから始まって、ラジオや映画になった活劇のアニメ版。最初は普通の武芸ものだったのに、いつの間にか機械仕掛けの青銅鬼が登場したり、敵方に戦車やら水中竜型潜水艦やら蝙蝠型の飛行メカが登場して怪しげなことに。
最近の国産ファンタジーでは真空状態で敵を切り裂く風魔法が定番だけれど、これはこの作品の「真空斬り」が根底にあると信じてます。
『大菩薩峠の要塞』 朝松健
天保八年、甲州鴉ケ原で砲術試合が開催されるということで、日本各地より名うての銃士たちが集まっていた。だが、それは幕府転覆を画策する滝津姫の陰謀であった。砲術試合を隠れ蓑に、大菩薩峠に密かに築かれた巨大要塞では、巨大砲が江戸城を照準に入れようとしていた……という、幕末ガンアクション小説。
『仮面の忍者 赤影』 原作:横山光輝
戦国時代も末期。織田信長や木下藤吉郎らが頼みとする忍者がいた。飛騨の影一族、その赤影は仲間の青影や白影らと共に、金目教を操る甲賀忍軍やまんじ党などの忍者たちと戦い続ける!……という1967年テレビ特撮作品。テレビ版は日本のスチームパンクの金字塔。
巨大な神像を模ったロボットや怪獣と忍者が空を飛び、砲撃し、爆撃して戦う大活劇。巨大なコマが地を割って出現し、巨大要塞が空を飛び海中に潜り、サイレンが鳴り響き、空飛ぶパラソルと大凧が空中戦を繰り広げ、南蛮渡来のビーム砲で水上バイクを撃破するようなことを平然とする話。あ、原作マンガは真っ当な忍者ものです。
『ロボットカーニバル』 監督:北久保弘之 他
8人のクリエーターが「ロボット」をテーマに制作した7本のアニメ短編を収録したオムニバス集。その一篇、「明治からくり文明奇譚〜紅毛人襲来之巻〜」。
まだ江戸時代の風景が残る東京。その帝都を狙う紅毛人マッドサイエンティストの巨大ロボットに立ち向かうのは、祭のために作られていた人型山車であった……。
『さくや妖怪伝』 監督:原口智生
富士山の噴火によって結界が破れ、封じられていた妖怪たちが地上に出現した。幕府の密命により、公儀妖怪討伐士の少女・咲夜は土蜘蛛の女王を討伐すべく仲間たちと旅立った……という忍者+妖怪もの。スチームパンクというにはギミックが大筒1つで物足りないけれど、巨大な松阪慶子は必見。
『白獅子仮面』 制作:大和企画
妖怪を率いて江戸を支配しようとする火焔大魔王に立ち向かうため、大岡越前は影与力・剣兵馬を長とする武装同心隊を結成。兵馬は獅子面の神の力で白獅子仮面となって妖怪に立ち向かう……という大江戸変身ヒーローもの。編隊を組んで飛来する唐傘小僧の大軍を、手裏剣投擲で撃ち落としていくシーンが好き。江戸空襲かよと。
『変身忍者 嵐』 原作:石森章太郎
魔神斉が従える忍者集団・血車党が日本を征服すべく動き出した。化身忍者の秘法によって肉体改造されたハヤテは、変身忍者嵐に化身して仲間の伊賀忍者たちとともに立ち向かう……という赤影の系譜に仮面ライダーの血を流し込んだ作品。
前半は血車党の化身忍者が敵だけれど、後半は魔神斉を操っていた大魔王サタンの西洋妖怪軍団と戦いますが、これを今風にリメイクすると「仮面ライダー響鬼」になります。
『風雲ライオン丸』 原作:うしおそうじ
『快傑ライオン丸』の後番組だけれど、主人公は役者も同じで名前も同じの別人。『素浪人 月影兵庫』と『素浪人花山大吉』の関係と同じですね。
本家スチームパンクだとレトロな超技術を登場させるのに世間に認められない発明家の作品とか歴史とは似て非なる別世界にしなくちゃいけないのだけれど、和風スチームの場合は「忍者の秘術」「南蛮渡来の技術」でたいてい説明つくんだよね。どれだけ万能なんだ、南蛮? あと、これに平賀源内を加えると完璧。
こういうのって、こども向けに限らず、さらっと大人向けにも混ざっているのが特徴。子連れ狼の乳母車とか必殺仕事人のアイテムとか。