付け焼き刃の覚え書き

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「南国流星怪奇譚」 芝村裕吏

2020-05-29 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「生きると死ぬとの間には、いくらでもその間がある。危険性という間がな。そのどこを狙うかという話だ」
 セイこと西村清吉は、コステンロスにそう言った。

 時は大正20年4月。
 不慮の事故で脚を悪くした元憲兵・西村清吉は、海軍司法警察官として日本統治下の南国パラオにある南洋庁に出向することとなった。
 素行不良なものは即座に内地に送り返され、現地人といえば酒を呑んでのんびりしているだけの南洋で事件など起きるはずもなかったのだが、パラオからさらに2000キロの彼方、サイパン支庁のそのまた先の孤島アナタハンで、駐留している日本人が相次いで行方不明になるという連続失踪事件が起きているという……。

 帯のあおり文句は「カタブツの軍人×南国の美丈夫×金髪の美少年」ですが、雰囲気としては「ホジスン×海野十三×ウィンダム」かな。クトゥルフRPGのキャンペーンシナリオ第1回みたい。ただ、初っぱなから栗の花が香るような展開に、話がどちらに転がっていくか不安になるくらい先読みのできない序盤からの、出会う人すべてが胡散臭い調査パートを経てのクライマックス。まさに武侠の快男児……というのともちょっと違うかな。素直に考えて「南国」で「流星」から始まる「怪奇譚」なのです。

【南国流星怪奇譚~アナタハンの影~】【芝村裕吏】【ミドリノエバ】【星海社FICTIONS】【大正流星怪奇譚】【関東大震災】【遷都】
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