付け焼き刃の覚え書き

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「新・里見八犬伝 (上)」 鎌田敏夫

2023-05-13 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「光は一瞬だ。しかし、闇は永遠に続く」

 「星よ、導きたまえ」のセリフがテレビCMで何度も流れヒットした1983年の角川映画、曲亭馬琴の伝奇小説『南総里見八犬伝』をムチャクチャ大胆にアレンジした薬師丸ひろ子主演の『里見八犬伝』をベースに、さらに大きく変身させたノベライズといえないノベライズがこれ。公開当時のカドカワノベルズ版や84年の角川文庫版を経て、ハルキ時代小説文庫で復刻。映画スチールや角川と言えば生頼範義といったイラストも良いですが、これもなかなか。

 暴虐の領主、蟇田定包を打ち倒した里見義実だったが、やがて里見家も隣国の軍勢に囲まれ落城の危機に陥る。万策尽きた義実は飼い犬の八房に「敵将の首を討ちとれば娘の伏姫を嫁につかわす」と戯れに声をかけるが、まさにその夜、八房は見事に敵将の首を討ちとってしまう。八房の妻として山に消えた伏姫を取り戻そうとした軍は逆に姫を殺してしまうが、この一連の事件はすべて蟇田の愛妾、共に討ち取られた毒婦・玉梓の呪いであった。
 しかし、伏姫の体から仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌の各字を刻んだ八つの霊玉が飛び散り、死の直前、伏姫は「百年の後、この光の玉は八人の犬士となって蘇り、里見の姫を奉じて玉梓の呪いに打ち勝つでしょう」と言い残す……。 

という、原作準拠の前日譚を軽く飛ばして始まる、闇の魂を持つ悪の軍団vs八人の光の戦士の戦いの顛末。一応、里見家の静姫と大塚の里の浜路をWヒロインに、数奇な運命の若者が紆余曲折を経て集うという『南総里見八犬伝』をベースにした展開ですが、初っぱなから陵辱、殺人の連続で徹頭徹尾死屍累々。映画が面白かったので小説も買ってみたという妹が、親に叱られて取り上げられたくらいのジャンル違い。
 解説では「現代伝奇バイオレンスの先駆け」と評されてますが、エログロバイオレンス要素が強くて、そもそも映画と関係ないやろ?という感想でした。刊行としては小説版の方がちょっと早いのだけれど、逆にカドカワノベルズ版を読んで期待して映画を見に行った人はがっかりしたろうなあ。

【新・里見八犬伝 (上)】【鎌田敏夫】【Kotakan】【時代小説文庫】【疾風迅雷の大伝奇エンターテインメント・ノベル】
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