それまで創作論というと文学者の自分語りとかノウハウ本的なものが主流でしたが、10年代あたりからライトノベルにおいて「創作論×ボーイ・ミーツ・ガール」みたいな組み合わせの作品が見られるようになりました。
とりあえず、サッと探したのが以下の通り。これ以外にあったら教えてください。
『小説家の作り方』 野崎まど(2011)
作家の物実にファンレターを送ってきた少女は、とびっきりの美少女だけれどどこか世間知らず。彼に小説の書き方を教えて欲しいと頼み込んできた。この世で一番面白い小説のアイデアを閃いてしまったのだけれど、それを文章にすることができないというのだ……。
「この世界に存在する全ての言葉が正解です」
『犬とハサミは使いよう』 更伊俊介(2011)
岡山は東京より新刊の発売が1日遅い。それだけが、父親の転勤で引っ越しする家族と別れて、春海和人が東京に残った理由だった。その和人が強盗の凶弾に倒れて、この上もないくらい死んだ。ところが、気がついたらダックスフンドの姿で甦ってしまっていて……。
自分が死んだことよりも、犬の姿で生き返ったことよりも、本を読めないということにもがき苦しむ読書マニアと、やたらめったら分厚い本を書いてはベストセラーにしてしまう、本を書きたくてたまらないS系執筆マニアの物語。
「書けない作家に価値なんてありません! 本を生み出してこその作家です!」
『半熟作家と“文学少女”な編集者』 野村美月(2011)
売れっ子の高校生作家、雀宮快斗は新しい担当編集者に振りまわされていた。いつもならケンカして担当交代となるところが、いつの間にか天野遠子のペースに巻き込まれ、やるつもりのない原稿修正に応じてしまったり、勝手が違ってイライラがつのるばかり。そんなとき、まだ未発表の作品内容にまで言及する脅迫状じみたファンレターが届き……。
文学少女シリーズの外伝。編集者になった天野遠子に、最後の最後まで追いつめられる新人作家の成長と挫折。
「作家は読者の言葉を聞くだけじゃダメなの。そこに作家自身の意志や誇りがなければ」
『エロマンガ先生』 伏見つかさ(2013)
和泉マサムネは高校生にしてラノベ作家と兼業。そんな彼には引きこもりの妹がいるのだが、あるとき、ひょんなことから彼女が人気のイラストレイター「エロマンガ先生」であると知ってしまう……。
才能はあるけれど自分の世界にこもって扱いづらい妹とそれに惚れ込んでしまった真面目な兄のドタバタコメディにして、創作者の苦悩と工夫と努力を軸にしたドラマです。 誰でも、自分だけの“世界で一番面白い小説”を持っているのだ。
「私がライトノベルだ!」
『男子高校生で売れっ子ライトノベル作家をしているけれど、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている。』 時雨沢恵一(2014)
いかに文章を書き始め、ストーリーやキャラクターを考え、賞に応募し、採用され、作品を書き続けていくかを、年下のクラスメイトで声優の女の子に首を絞められている男子高校生で売れっ子ライトノベル作家の回想を通じて描いていくもの。
「誰だって、許せない過去はあるよ。人は、そんな過去と一緒に、成長していくんだよ。苦い食べ物でも、やがて血肉にはなるでしょう」
『城ヶ崎奈央と電撃文庫作家になるための10のメソッド』 五十嵐雄策(2014)
一ノ瀬渉は偶然から、美人で性格も良く運動にも秀でている胸の大きな女子高生・城ヶ崎奈央の秘密を知ってしまった。彼女は作家になりたかったのだ。それも電撃文庫で。しかし、彼女の作品の出来は今ひとつだった……。
男子高校生が従姉の編集者から執筆上のメソッドを入手して、女子高生の創作活動を手助けする物語。
「文章力とか構成力なんてものは後からでもどうにかなる」
『下読み男子と投稿女子』 野村美月(2015)
葉鳥高校の氷ノ宮氷雪は孤高の美少女。美人で大人っぽい雰囲気でクラスメイトたちは近寄りがたいと遠巻きにあこがれるだけだ。でも、青は知ってしまった。氷雪が実はライトノベルを書いていて、スター文庫新人賞に投稿していて、そのタイトルが『ぼっちの俺が異世界で、勇者で魔王でハーレム王』ということを。彼のバイトは出版社の投稿作の下読みだったのだ……。
「ラノベのいいとこって、なんでもアリで、自由なとこなんじゃないかな。どんどん新しい書き方が生まれていって、わくわくさせてくれる。だから、やりたいことは全部やって、書きたいことを書こう」
『獣耳吸血鬼少女の売れないなろう作家が自作品を電子書籍にするようです』 左高例(2020)
獣耳吸血鬼にして明治生まれの年金生活者カレーちゃんは、実は本が売れずに書籍化打ち切りを食らったなろう作家なのだ。このままだと貯金が底をついてしまう。そこで彼女は自作品をKindleに電子書籍として売り出すことに決め、アパートの大家にして友達のドリル子と協力して本の作成や宣伝を行うことにしたのだが……。
もしかしたら参考になるかもしれない、電子書籍を自分で売り出すための方法も書かれた、美少女なろう作家の日常ファンタジー。これに関しては「ボーイ・ミーツ・ガール」ではなく「ガール・ミーツ・ガール」なドリル・コメディですけど。