付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「八犬伝(上)」 山田風太郎

2024-12-15 | ホラー・伝奇・妖怪小説
「だいたい絵入りの読物なら、絵は作者と同等だよ」
 前作「椿説弓張月」のとき、北斎は馬琴の指定に従わず、話にないものまで描き込んだが、「さし絵は作者のそえものではない」と開き直った。

 曲亭馬琴は訪問した葛飾北斎に、構想中の次回作の冒頭あらすじを語って聞かせた。南総里見家の姫に懸想する犬が敵将の首を取り、褒美に姫を妻として山に連れ去るところから始まる伝奇小説で、その姫の死によって全土に飛び散った儒教における八種の徳、仁義礼智忠信孝悌いずれかの文字が浮き出る珠を手にした若者たちが、紆余曲折の果てに巡り会う大河絵巻だ。
 話を聞いて面白いという北斎だったが、挿絵を描いて欲しいという頼みだけは頑として引き受けなかった……。

 滝沢馬琴の『南総八犬伝』の執筆風景を、その物語の概要や見せ場を再話する「虚」のパートと、馬琴と北斎、馬琴を取り巻く人々との関わりを描く「実」パートの二部構成で語る、「虚」と「実」の物語。『シン・ゴジラ』は「現実 対 虚構」だったけれど、こちらは「虚実はあざなえる縄のごとし」かな。

【八犬伝(上)】【山田風太郎】【滝沢馬琴】【せがわまさき】【角川文庫】
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「八犬伝」 原作:山田風太郎 | トップ | 次の記事へ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ホラー・伝奇・妖怪小説」カテゴリの最新記事