付け焼き刃の覚え書き

 本や映画についての感想とかゲームの覚え書きとかあれこれ。(無記名コメントはご遠慮ください)

「淡海乃海 水面が揺れる時 十六」 イスラーフィール

2024-04-15 | 戦国転生・歴史改変
「母上が俺を怖がるのは叡山を焼いたからでも一向一揆を根切りにしたからでもない。それ以前からだ。俺が子どもらしくない、自分のことは思えない。そのことに怯えていた」
 朽木基綱は元服した息子の滋綱が、あまりに自分に似過ぎていると忠告する。

 1587年、朽木家は九州再征を果たし、西日本から抵抗勢力を完全に排除した。残すは関東・奥州のみとなったのが、そんなおりに琉球よりの使者が親書を携えてきた。日本に服属するという内容だが、問題は宛先が帝ではなく相国である基綱ということだ。その扱いに朝廷は揺れ動くのだが、基綱にとってはどちらでも良いことだった。
 琉球は位置的に明との交易の中継点であるだけではなく、スペインやポルトガルなど西欧諸国が日本への侵略を画策する際の拠点ともなる位置にある。実際、既に支援者であった大友の没落で切支丹が苦境に立たされている現状を打開するため、宣教師たちが拠点のマニラから軍船を呼び寄せようとしているらしい。日本統一の前であれ後であれ、琉球を支配下に組み込むのは基綱にとっては決定事項であった……。

 各勢力関係図とか人物紹介はあるけれど、そろそろ家系図が必要かも。子や孫や養子が増えました。
 歴史改変戦国絵巻『淡海乃海』も16巻到達。九州平定もほぼ終わり、奥州に向けて謀を巡らせているけれど、アジア情勢も予断を許しません。子どもたちの独り立ちも始まりました。
 物語として、どこで区切りを付けるのか、どこまで突っ走るのかワクワクしながら待ち続けています。

【淡海乃海 水面が揺れる時 十六~三英傑に嫌われた不運な男、朽木基綱の逆襲】【兄弟】【関白解任】【イスラーフィール】【碧風羽】【TOブックス】【本格大河ドラマ】【弱肉強食の世を描く戦国サバイバル小説】【小説家になろう】
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「「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室」 キャスリーン・フリン

2024-04-14 | 食・料理
「もし僕に何かできるとしたら、何かひとつを変えることができるとしたら、それは、料理は全然難しくないってみんなに気づかせることだよね。料理って本当に簡単だよ」
 イギリス人シェフ、ジェイミー・オリバーの言葉。

「料理なんて簡単だよって友だちは言うわ。教えてあげるよって。でも私にとっては料理ってすごく怖いものだから」
 新婚の女性、ドナ(26)の本音。アフリカの飢えた子どもたちを支援する国際機関に勤務しているドナは、冷蔵庫の食品を腐らせているのが苦しい。

 自分自身、勤務先からリストラされたのをきっかけに、憧れの名門料理学校に通い始め、38歳で卒業している著者が気がついたのは、周囲に自分は料理が苦手だと思い込んでいる女性の多いこと。ふとしたきっかけから、そんな女性たちを集めて料理を教えたら何か変わるのではないかと、年齢も職業もバラバラな料理下手の女性10人の料理教室を始めたのだが……。

 とりあえず、泣けませんでした。料理技術が未発達な異世界に足を踏み入れたら、こんな感想をもつのかなあとは思いましたけど。
 著者も含めた11人の女性の人生を語りながら、どうして料理を苦手と思うようになったのか、どうしてこんな食生活をするようになったのか等々ファミリーヒストリーを交えて追いかけながら、ときおりレシピを挟みつつ「料理をする生活」を探求するドキュメンタリーっぽい本。
 でも、人あたりはソフトだけれど言ってる内容は山岡士郎だからね。グルタミン酸とか食品添加物とか固形のカレールーとかホットケーキミックスとか頭から否定するようなことはしないけれど、成分を順番に読み上げて「こんなにいろいろ入ってるんですよねー」とこんなものを口にしていていいのかなーというスタンス。

【「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室】【キャスリーン・フリン】【冨田マリー】【新潮文庫】【一冊で何度も美味しい料理ドキュメンタリー】【自炊すればするほど体重は減る】
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「戦国小町苦労譚17」 夾竹桃

2024-04-13 | 戦国転生・歴史改変
「人は数が集まり、熱くなってしまえば我を忘れる阿呆が必ず出る。そういう奴は口で言っても無駄だ。先に拳で黙らせてから話をするのが一番だ!」
 一応、話をする気はあるらしい、森長可の言い分。

 1578年11月、静子が段取りを任された『京都御馬揃え』は無事に終わった。史実より約1年半早く開催される運びとなった馬揃えでは、織田家の偉功はむろんのこと、その織田信長と近衛前久が静子に庇護を与えていることも十分にアピールされたが、その裏では光秀らによる出陣の準備も進んでいた……。

 仕事の褒美に新しい仕事を願い出る、永久機関的ワーカーホリックの静子の日常回。
 メインストーリーは馬揃えから光秀の西国進出が始まるあたりまでで、こぼれ話的なサイドストーリーが半分くらいになります。

【戦国小町苦労譚】【十七、西国進出とこぼれ話】【夾竹桃】【平沢下戸】【アーススター】【戦国ライトノベル】【羊羹】【鉄道構想】【マンガン選鉱】【オオウミガラス】【綿花】【酒合戦】【百万石の酒杯】【レーション選定】
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「かませ犬転生」 一ノ瀬るちあ

2024-04-12 | 異世界転生
 大好きだった異世界ファンタジーRPG「ルーンファンタジー」の世界に転生したのは良いけれど、主人公と瓜二つ(色違い)で同じ魔法を使う敵キャラのクロウだった。もっといくらでも活躍できそうな設定と能力だったのに、ストーリーの都合で単なる主人公のかませ犬で終わってしまった不遇キャラだ。
 ならば、今こそ自分の力で最強のダークヒーローとなり、主人公の行く先々に圧倒的な実力で立ちはだかる存在になってやろうではないか……。

 せっかく主人公と色違いで、同じスキルを使うというおいしいキャラにもかかわらず、なんて不遇な扱いなんだ!?と自分の力を高めながら、しっかり主人公の壁となって立ち塞がり、思わせぶりな言葉を吐きながら去って行くというライバルキャラになりたいなという話。つまり、理想のキャラ、理想のストーリー展開を追い求め、マッチポンプを繰り広げる悪役ストーリー。

【かませ犬転生~たとえば劇場版限定の悪役キャラに憧れた踏み台転生者が赤ちゃんの頃から過剰に努力して、原作一巻から主人公の前に絶望的な壁として立ちはだかるような~】【一ノ瀬るちあ】【Garuku】【電撃の新文芸】【最強の「かませ犬」転生ファンタジー】【たとえば劇場版限定の悪役キャラに憧れた踏み台転生者が赤ちゃんの頃から過剰に努力して、原作一巻から主人公の前に絶望的な壁として立ちはだかるようなかませ犬転生】【カクヨム】【ルーン文字】【冒険者試験】【ドッペルスライム】
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「魔女と傭兵3」 超法規的かえる

2024-04-11 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「“納得”とは、時にそれを得るためだけに命を懸ける者すらいる程の贅沢品なのだ」

 低ランク冒険者の狩り場付近に賞金首の昆虫型モンスターが出現。まだ等級不足のシアーシャは受ける仕事がなくなって、冒険者家業は開店休業。暇を潰しにジグと朝市へと出かけて焼き魚を満喫していたが、人間と亜人の諍いで周囲が騒がしくなって落ちついて飯も食えない。
 もとより人外であるシアーシャに人種間の問題に興味はないし、ジグにとっては剣を向けたら敵判定くらいの割り切りで関わりのない話だ。狩り場で蜥蜴人の冒険者たちの窮地を救ったのはたまたま。敵ではなかったし、助けられるから助けた、それだけのことだ。
 ところが若い女性(に見える)新人冒険者が普通に亜人と付き合っているのが面白くない者がいたらしい。冒険者ギルドの依頼をめぐって日々嫌がらせが続き、ついにシアーシャの堪忍袋の緒が切れた……。

 戦乱の大陸から逃れて異大陸に渡った魔女と護衛の傭兵。確かにここでは人間同士が争ってはいないけれど、それはここが平和な大陸だからではなく、魔物が跋扈していて人間同士争っている場合じゃなかった……という『魔女と傭兵』も無事3巻。今回は、真面目に冒険者としてランク上げにいそしんでいるのに、亜人とちょっと仲が良いからと嫌がらせしてくる人間至上主義者に、魔女がついにプチンと切れて大暴れする回。
 面白い話がちゃんと内容に合った巧い絵が付いて書籍化されるのは嬉しいな。暑苦しいおっさんも、蜥蜴のおっちゃんもみんな大事な物語の登場人物なのです。見所をきちんと描いてくれてます。血まみれでイッちゃってる魔女も美しいですね……。

【魔女と傭兵3】【超法規的かえる】【叶世べんち】【GCN文庫】【本格ファンタジー】【小説家になろう】
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「レアモンスター?それ、ただの害虫ですよ」 御手々ぽんた

2024-04-10 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 山奥と言うほど山奥では無いけれど、高校生のユウトが住む一軒家には虫が良く湧く。ゲジゲジだ、アリだ、ハチだときりがないし、庭の雑草もよく茂る。
 そんな彼の日常が、たまたまもらったネット配信用ドローンに撮影され、本人の知らないうちにネットで流された途端に世界中に大反響を巻き起こした。恐慌といっていいかもしれない。ユウトがぞんざいに丸めた新聞紙で叩き潰しているのは、レアなダンジョン深階層のレアモンスターではないのか!? 彼が刻んでいる小ネギは霊草か!!
 住んでいる当人が気がつかないうちに、周囲がダンジョン化していたのだ。しかも通常では攻略不可能とされる黒ランクの高難易度。霊草の安定供給を求めて接触を図っていたダンジョン公社の最優先事項は、ユウトが既に人間の領域を超えていることを自覚させないことになっていた……。

「ユウトは自分のことを人だと思っている」

 無自覚系最強キャラの日常が、本人の意識していないうちにネットで拡散されたところから始まるダンジョン攻防記。本人が強くなっているのはともかく、ドローンのクロがいつのまにか自我を持って、器械の身で魔素を吸収したりドロップアイテムを取り込んでどんどん進化して采配ふるっているのに気がつかないのはいかがなものか。のんき過ぎだぞ……といいつつ、そこで気づいてしまったら世界が終わりかねないというバランスが絶妙なのです。まさに「どうして異常性に気づかない!?」ですよね。
 ヒロイン枠ではクラスメートでいまいち伸びない配信者の早川さんがいますけれど、これだけ物語の導入に貢献し、事件に巻き込まれてと大忙しなのに、クロさんに勝てそうにないのが残念です。有能な執事で無敵のメイドで若干の黒幕要素あり。主人公を少しぞんざいに扱いながらも忠誠心は高そうと、あれこれてんこ盛り過ぎです。

【レアモンスター?それ、ただの害虫ですよ~知らぬ間にダンジョン化した自宅での日常生活が配信されてバズったんですが~】【御手々ぽんた】【kodamazon】【GA文庫】【ダンジョン配信から始まる最強無自覚ファンタジー】【小説家になろう】【カクヨム】
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「朝起きたら探索者《シーカー》になっていたのでダンジョンに潜ってみる3」 いかぽん

2024-04-09 | 異世界結合・ゲート・ゾーン
 六槍大地たちの、限界突破のための異世界での冒険は続いている。
 着々とイベントをクリアし、経験値を貯めている大地らだがまだまだ決め手に欠けている。そんな中、グリフォン山のクエストを請けることにしたのだが……。

 ありがとう、全年齢。おのれ、全年齢。
 普通に男女3人、両手に花の異世界冒険を愉しんでます。

【朝起きたら探索者になっていたのでダンジョンに潜ってみる3】【いかぽん】【tef】【ファミ通文庫】【カクヨム】【小説家になろう】【露天風呂】【ゾンビの群】
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「凶乱令嬢ニア・リストン 2」 南野海風

2024-04-08 | 時代・歴史・武侠小説
 魔法映像の普及を目指すニアの活動はまだ道半ば。なんといっても、頭を使う問題は苦手なのだ。失敗すれば何千という金額の損害では済まない。強いだけでは成り立たない世界は、げに恐ろしき。
 視聴者を増やすには裸体を映し出す恋愛ものか、血しぶき舞い散る戦いか、はたまた視聴者参加型のイベントか。学生の武術大会にカメラを持ち込んで試合を映すだけでなく、試合前後に選手のインタビューとか流したら親は絶対に観るよね。
 試行錯誤で思考を繰り広げるニアは天破流の師範代代理、ガンドルフを巻き込んだ。「私を闇闘技場に連れて行って」と……。

 まだ齢6歳の、貴人の娘を、危険な非合法な場所に連れて行かねばならなくなったガンドルフの運命やいかに!? そして闇闘技場の決勝に立つ謎の女戦士たち、ミス・サーバントの正体とは!!
 メイドが意地を見せる回。

【凶乱令嬢ニア・リストン 2~病弱令嬢に転生した神殺しの武人の華麗なる無双録】【南野海風 】【磁石】【HJ文庫】【武を極めたバーサーカー令嬢の最強転生ファンタジー】【天使のような凶乱令嬢が繰り広げる最強無双譚】【小説家になろう
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「男女比1:5の世界でも普通に生きられると思った?」 三藤孝太郎

2024-04-07 | 異世界転移・召喚
 片里将人は気づいたら見知らぬ世界にいた。見た目は変わらない現代日本だが、男性の数が少ないパラレルワールドだ。ちゃんと戸籍はあるし、入学予定の大学の入学手続きも終わっていた。
 男性の数がちょっと少ないだけだから、前の世界と変わらず普通に生きていけるよね……と甘い気持ちで異世界生活を始めた将人だったが、男女比が1:5と偏っていると女性は肉食系で積極的になりがちな一方で、男性は選べる立場から傲慢になりがち。彼にとっての「あたりまえの女性との接し方」が女性たちには劇薬で、片っ端から恋に落としいれてしまうことになる……。

 状況認識のできない主人公による貞操逆転世界もの。
 女子大生やOLから女子中高生まで、どれもこれも堕とされ、重い愛を抱え込むようになる話です。

【男女比1:5の世界でも普通に生きられると思った? ~激重感情な彼女たちが無自覚男子に翻弄されたら~】【三藤孝太郎/たろたろ/こーたろ】【jimmy】【電撃文庫】【修羅場スレスレの無自覚たらし込みラブコメディ】【貞操逆転世界で普通に生きられると思い込んでる奴】【カクヨム】【小説家になろう】【ハーメルン】【貞操逆転世界】
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「陰キャだった俺の青春リベンジ6」 慶野由志

2024-04-06 | 過去転移・人生やり直し
 新浜心一郎の二度目の青春は順風満帆だった。春華が突然に倒れるまでは。
 誕生日パーティの夜に倒れた彼女は、そのまま原因不明の抜け殻のようになってしまう。だが、その春華がうわごとのように口にする言葉の中に出てきた「スマホ」という単語は、まだこの時代には存在していない。
 それを耳にした新浜は、彼女の心が本来の時間線、ブラックな環境に身も心も打ちのめされて死を選んでしまった未来を歩んでいるのではないかと直感する……。

 異世界に転生するわけじゃない、同じ人生やり直しの『陰キャだった俺の青春リベンジ』が6巻で完結。タイムリープによる歴史改変がどんな影響を及ばすか……からの大団円。やり直しの意味と意義をしっかり描いてのハッピーエンド。物語はこうでなくちゃ。

【陰キャだった俺の青春リベンジ6~天使すぎるあの娘と歩むReライフ~】【慶野由志】【たん旦】【角川スニーカー文庫】【タイムリープ青春ラブコメ】【青春リベンジラブコメ】【カクヨム】
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「夏目漱石ファンタジア」 零余子

2024-04-05 | 異世界転生
「俺たちは楽しんで小説を書いていたんじゃない。表現しないと己が壊れていくという強迫観念に駆られ、血を吐きつつ筆を手にしたんだ」
 執筆は心の治療、表現しないと死んでしまうのだと樋口夏子。

 言論の自由のない時代に、個性と自由のために戦った文士がいた。文豪にして個人主義者、夏目漱石である。
 1910年、文人たちを束ねて木曜会を組織し、作家の自由を脅かし利用しようとする政府や社会主義者との武装闘争を続けていた夏目は「修善寺の大患」事件で命を失うが、星一の助けを借りた医学者・野口英世によって蘇生された。しかし、それは彼本来の肉体ではなく、女流作家である樋口一葉の身体であった。
 夭逝した一葉の遺体は将来の医学技術の発達に期待して冷凍保存されていたのだが、作家をつけ狙う殺人鬼『ブレインイーター』によって脳髄を奪われてしまい、軍医総監の森鴎外と闇医者の野口英世はそこに夏目漱石の脳を移植することにしたのだ。
 夏目の暗殺をきっかけに文学界と政府は手打ちの状態に持ち込み現在は均衡状態にあるのだが、作家への襲撃を繰り返しながらそり脳を奪っていくブレインイーターの被害者は増え続けるばかり。女流作家の身体で復活した夏目漱石だったが、親友である正岡子規の仇を討つべくダムダム弾を手に立ち上がった……。

 表現の自由を守るために戦う夏目漱石が記憶を取り戻し、心を手に入れるまでの活劇譚。作家と編集者の戦いに推し命の読者が乱入するような話ですね。
 いきなり女教師として女学校に潜入しろと言われ、会話に迷ったら「月が綺麗だな」ですべて誤魔化せと言われて開き直ってみたりとかドタバタめいた展開もあったり、女の園ならではの百合百合しいエピソードも挿入されつつ、基本は創作者としての業に立脚した戦いが繰り広げられます。
 加藤保憲が登場しないのが不思議なくらいの、明治伝奇アクション小説でした。

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「デューン 砂の惑星2」 原作:フランク・ハーバート

2024-04-04 | ミリタリーSF・未来戦記
 砂の惑星デューンは産出されるスパイス「メランジ」の価値から、その惑星を制する者が全宇宙を制すると言われている。
 アトレイデス公爵家はデューンの統治を任されていたが、ハルコンネン家と皇帝の策略と武力侵攻により殲滅されてしまう。その生き残りで公爵の息子であるポールは、閉鎖的な砂漠の民フレメンに受け入れられ、彼らと共にハルコンネン家とゲリラ戦を繰り広げることになるのだが、彼の母親であるレディ・ジェシカへのフレメンたちの態度がおかしい。レディ・ジェシカに彼らの宗教的指導者、教母の後継者となれというのだ。
 彼女は銀河系における最大の政治勢力のひとつ、女性修道会ベネ・ゲセリットのメンバーだが、なによりポールの母親であり、ポールが予言の救世主ならば、彼の母親も教母であるはずだというのだ。さもなくば死を……。

 確定申告が終わったタイミングだったので、家族3人で初日のレイトショーで観てきました。劇場の大スクリーンで観て正解。逆光のシルエットとか、たびたび砂の中から無数の兵士が湧き出るシーンはカッコいいですね。この作品ならでは。
 個人用シールドが発達しすぎて携帯火器が使い物にならなくなり、ガンシップみたいなオーニソプターとかロケットランチャーみたいな兵器も脅威だけれど、結局最後は剣戟による白兵戦が有効なので乱戦になるという世界の物語。なんとなく剣と魔法の世界みたいですが、カムラン・ブルームの核弾頭15発よろしく、ガーニイ・ハレックの核弾頭92発とかあれこれビックリドッキリを挟みつつ、サンドワームが暴れ回るクライマックスへと突入します。ひとことでまとめると「ポウルのミラクル大作戦」。
 ストーリー的には1984年のデイヴィッド・リンチ版『デューン/砂の惑星』のラストシーンに追いつきましたね。こちらはまだまだ続けられる状況というか、さすがに『砂漠の神皇帝』まではいかなかろうとか思いつつ、さらなる修羅場(複数)が生まれたところでのエンディング。大団円ではあるんだよ。ただ、その大きな輪っかがどこに向かって転がっているか分からないだけで。
 小ネタの感想としては「おにいちゃん大好き妹が存在感ありすぎ」「砂虫からの降り方がわからない」「あっという間に煙の中に消えていった皇帝親衛隊」「鬼の形相のゼンデイヤ」といったところか。ゆっくりとした語り口に反して意外とストーリー展開が速いのも魅力です。ただ、やっていることは派手なのに印象は地味。『スターウォーズ』のような英雄譚ではなく、叙事詩的に語られているからでしょうか。

【デューン 砂の惑星2】【ドゥニ・ヴィルヌーヴ】【ワーナー・ブラザース】【レジェンダリー・ピクチャーズ】【ティモシー・シャラメ】【レベッカ・ファーガソン】【ゼンデイヤ】【ジョシュ・ブローリン】【オースティン・バトラー】【フローレンス・ビュー】【デイヴ・バウティスタ】【クリストファー・ウォーケン】【レア・セドゥ】【スエイラ・ヤクープ】【ステラン・スカルスガルド】【シャーロット・ランプリング】【ハビエル・バルデム】【アニヤ・テイラー=ジョイ】【地雷】【核弾頭】
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「辺境モブ貴族のウチに嫁いできた悪役令嬢が、めちゃくちゃできる良い嫁なんだが?」 tera

2024-04-03 | 異世界転生
「ここでは傷を否定しない。むしろ誇りに思うんですよ」

 ラグナ・ヴェル・ブレイブは日本人の転生者だが、今は田舎貴族の三男。のんびり暮らすはずが父親も長男・次男もろとも国境紛争で戦死。いきなり後を継ぐことになって領地運営に翻弄される日々だ。
 そんなところに突然、格上の貴族令嬢との婚姻が決まってしまう。なんでそんな話がと思っていたけれど、やってきた令嬢と会って納得。彼女は乙女ゲー世界の「悪役令嬢」で、しかも断罪後。顔に大きな傷を作っての輿入れであった……。

 なんか知ってる乙女ゲーの世界っぽいけど、自分は名前も知れないキャラだしストーリーとは関係なさそうだからのんびり暮らそうとしていたところからの二転三転。関係ないどころか、悪役令嬢が追放されるような形で送られた辺境の領主だった……というところから、なんのかのといっても有能で気配りのできる良い嫁なので幸せにしてやりたいじゃないか!という話です。
 話は面白いけど、辺境伯を「伯爵とは名ばかりの田舎貴族」と解釈しているあたりに馴染めない読者には辛いかも。国境の守りを固めて常に戦い続けている守りの要を、軽んじて馬鹿にしているような国は滅びますよね。

【辺境モブ貴族のウチに嫁いできた悪役令嬢が、めちゃくちゃできる良い嫁なんだが?】【tera】【徹田】【ドラゴンノベルス】【乙女ゲー世界の悪役令嬢(可愛い嫁)を破滅ルートから救えるのは俺だけ!】【カクヨム

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「不良聖女の巡礼1」 Awaa

2024-04-02 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
「いい人でありたいとは思っている。追放されても、心は聖女でいたいから」

 瘴気によって人類の生存圏が小さくなってしまった世界。キャロルは世界を救う聖女候補生5人の中で唯一の庶民で孤児院出身。しかし、聖女選定の儀式で発現したのは『腐食の力』。聖女の資格なしとして追放されてしまうのだが、彼女はもともとそんなお上品な聖女に収まるような器では無かったのだ。
 学生服を脱ぎ捨てて自由な気ままな旅に出たキャロル。ほとぼりを冷ますためにと最初は森奥深くで動物たちと暮らしていたのだが、ついに問題発生。持ってきていた煙草が切れてしまったのだ。
 町まで出かけて、小銭を稼いでタバコを買うだけのはずだったのだが……。

 面倒から逃げてるつもりがトラブルに次ぐトラブルで、ほぼ世直しの巡礼みたいになっちゃうキノコ使いキャロルの日々。他の4人の聖女が箱入り娘の貴族子女ばかりだったのに対して、彼女こそ実戦派の最強存在だった……というややオカルト寄りの空気、正統派のファンタジーですが、ウェブ版からはかなり改稿されてます。

【不良聖女の巡礼 1~追放された最強の少女は、世界を救う旅をする~】【Awaa】【がわこ】【オーバーラップノベルス】【神を信じない最強“不良”聖女が世界を救う冒険譚】【小説家になろう】【ハーメルン
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「廃嫡王子の華麗なる逃亡劇」 出雲大吉

2024-04-01 | ヒロイックファンタジー・ハイファンタジー
 エーデルタルト王国の王子ロイドは優秀な魔術師だったが、この国は武を貴ぶお国柄。剣もロクに使えない王太子ではいけないと、あっさりロイドを廃嫡して弟のイオンを王太子に、ロイドは辺境の寂れた土地の領主へと追いやられることになった。
 腹いせに着火の魔法の護符を離宮に仕掛けたのだが、同じことを考えていたのが婚約者のリーシャ姫。この国は貞操観念が高すぎる国でたとえ婚約者といえども二夫にまみえるくらいなら死んだ方がマシというお国柄。リーシャも魔法の護符を離宮に仕掛けていたことから、せいぜいボヤ騒ぎのはずが連鎖して大炎上。
 これは辺境暮らしどころではないと国外逃走。途中で出会った元同級生のマリアが海外留学するというのに便乗して、そのまま飛行船を乗っ取ったまでは良かったのだが……。

 理不尽な理由で廃嫡された王子の流浪の旅……というとお約束パターンにはまりがちなところを、主人公の厚顔不遜なクズさと国民性によるヒロインたちの特異性から話がぶっ飛んでしまう『廃嫡王子の華麗なる逃亡劇』。
 冒頭の廃嫡されるくだりでちらりと主人公に同情しかけたものの、そこからの放火、乗っ取りと、落ち込むどころか反省のない傍若無人ぶりです。そのまま異国で冒険者暮らしとなるのですが、高慢な王族スタンスのまま贅沢し放題で横車を押しっぱなし。そんな普通の話なら主人公に敵対しては転落していくような「改心しない悪役」が諸国を蹂躙していく展開となります。
 ヒロインたちは常識人のはずですが、あくまで母国エーデルタルトでの常識や慣習にしたがってますので、他国人から見ると主人公に負けず劣らずの「ヤベーやつ」なのです。あっちの常識、こっちの非常識というやつですね。

【廃嫡王子の華麗なる逃亡劇~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~】【出雲大吉】【ゆのひと】【カドカワBOOKS】【廃嫡王子のやりたい放題ファンタジー】【小説家になろう】【カクヨム
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