ホルヘ・ルイス・ボルヘス/柳瀬尚紀訳 2015年5月 河出文庫版
前回、「餓蟇」なんてモノノケが出てきた小説だったんで、それからのつながり、というほどのことでもないが。
ちなみに、餓蟇(がこ)ってのは、無数の手脚を持つ、胴の長い蝦蟇の姿をしたもののけで、これに取り憑かれた人間は、相手の人間の内臓を食ってしまう。うーむ、グロテスクだ。
さて、『幻獣辞典』の存在については、私にとっては『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだときからだから、ずいぶんと前から知ってることになる。
何度か買って読もうかと思ったんだけど(なかなか素敵な装丁の本だったと記憶している)、そのたびに何故か見送ってしまった。
学校通ってたころに、図書館でパラパラと見たことはあるんだけど、それで終わりにしてしまった。
で、ことし5月に入ってからだったかな、書店で文庫が出てんのを見かけて、これはさすがにと思って、買った。1188円って値段、わりと高めだよね。
内容はあらためて言うまでもなく、文学とかに登場した架空の動物たちを集めたもの、たとえば一角獣とかね。
その数120、アタマっから読んでったら、けっこう読みごたえはあった。
知ってるもの(名前を聞いたことがあるという意味だ、あたりまえだけど、見たわけぢゃない)も、まったく知らなかったものもあって、いろいろ。
どこまでが世界中の文献から蒐集してきたもので、どこからが著者が素知らぬ顔でさも昔からあったかのように創作しちゃったのかは、わかんないけど。
ヨーロッパの神話に出てくるやつなんかよりも、中国のものなんかのほうがいいね、私の趣味としては。
読むたび感想変わりそうな気はするけど、今回のいちばんのフェイバリットを選ぶとしたら、そーだなー、「墨猴」かな。短いので全文引いちゃう。
>北方では珍しくないこの動物は、体長が四、五インチある。目は深紅、皮は漆黒で、絹のようにすべすべして、枕のように柔らかい。奇妙な本能がその特徴である――墨を好むのだ。人が座って書き物をしようとすると、この猿はそのそばに胡坐をかき、手を重ね合わせてうずくまり、書き終るのを待つ。それから墨汁の残りを舐めつくすと、満足して静かに尻をついて座る。 ――王大海『海島逸志』(一七九一)
この、役立たなさが、なんともいい。
前回、「餓蟇」なんてモノノケが出てきた小説だったんで、それからのつながり、というほどのことでもないが。
ちなみに、餓蟇(がこ)ってのは、無数の手脚を持つ、胴の長い蝦蟇の姿をしたもののけで、これに取り憑かれた人間は、相手の人間の内臓を食ってしまう。うーむ、グロテスクだ。
さて、『幻獣辞典』の存在については、私にとっては『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を読んだときからだから、ずいぶんと前から知ってることになる。
何度か買って読もうかと思ったんだけど(なかなか素敵な装丁の本だったと記憶している)、そのたびに何故か見送ってしまった。
学校通ってたころに、図書館でパラパラと見たことはあるんだけど、それで終わりにしてしまった。
で、ことし5月に入ってからだったかな、書店で文庫が出てんのを見かけて、これはさすがにと思って、買った。1188円って値段、わりと高めだよね。
内容はあらためて言うまでもなく、文学とかに登場した架空の動物たちを集めたもの、たとえば一角獣とかね。
その数120、アタマっから読んでったら、けっこう読みごたえはあった。
知ってるもの(名前を聞いたことがあるという意味だ、あたりまえだけど、見たわけぢゃない)も、まったく知らなかったものもあって、いろいろ。
どこまでが世界中の文献から蒐集してきたもので、どこからが著者が素知らぬ顔でさも昔からあったかのように創作しちゃったのかは、わかんないけど。
ヨーロッパの神話に出てくるやつなんかよりも、中国のものなんかのほうがいいね、私の趣味としては。
読むたび感想変わりそうな気はするけど、今回のいちばんのフェイバリットを選ぶとしたら、そーだなー、「墨猴」かな。短いので全文引いちゃう。
>北方では珍しくないこの動物は、体長が四、五インチある。目は深紅、皮は漆黒で、絹のようにすべすべして、枕のように柔らかい。奇妙な本能がその特徴である――墨を好むのだ。人が座って書き物をしようとすると、この猿はそのそばに胡坐をかき、手を重ね合わせてうずくまり、書き終るのを待つ。それから墨汁の残りを舐めつくすと、満足して静かに尻をついて座る。 ――王大海『海島逸志』(一七九一)
この、役立たなさが、なんともいい。