many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

志らくの言いたい放題

2018-01-27 18:52:14 | 読んだ本
立川志らく 2018年1月 PHP文庫版
最近書店で見かけて買って読んだ、新しい文庫。
うしろのほう見たら、2010年12月の『立川流鎖国論』を改題、加筆・修正したものだっていう。
そういわれると、なんとなく察し、というか邪推かもしんないけど、がつく。
いまや志らくはテレビ番組のコメンテーターとして名を馳せてるからねえ(実は私は見たことないんだが)、そういうタイトルのほうが売れそうだ。
立川流鎖国論ぢゃあ、立川流マニアしか読まないもん、きっとw
ってことで、本書はタイトルから世間が想像するかもしれない、志らくが世相を斬るとかそういうんぢゃなくて、立川流とは何かという、イズムのようなものの披露。
もっとも、本文中には、
>(略)最近の芸能人のなにがいやかというと、テレがない輩のなんと多いことか。
>まあ芸能人と呼ばれている大半は電波芸者であり、世間様にさからわず、ただ煽るだけ。(略)
>ワイドショーのコメンテーターの「長いものにはまかれろ」的態度は、人間らしいと言えばたしかにそうだが、品がないことおびただしい。(p.164)
なんて阿諛追従のやからへの毒が含まれてたりするんで、油断ならない。
全編おもしろくて一気に読んでしまったようなとこあるんだが、なかでも談春に関して語ってるとこがいちばんおかしい、つい笑ってしまう。
談春と志らくといえば、談春が前座時代に家元の命で魚河岸に修行に行ってたときに、志らくはイヤですと言って魚河岸にはとうとう行かなかった、談春をして立川流の闇とまで言わせた因縁があるんだが。
志らくは兄弟子に気ぃつかってんのか、ポスト志ん朝の座におさまったのは談春なんて、持ち上げるようなことも以前の著書には書いてたりするんだけど。
本書でも、随所に兄弟子を敬愛してるようなんだけど、そのわりには言うことやることムチャだなってことが多くあって、それがおかしい。
たとえば、あるとき二人で高校に落語やりいった、二人で一時間の持ち時間の予定。
ところが、客席の高校生はだれきってて態度がなっちゃいない、先にあがった志らくは頭きて5分でやめちゃう。
で、談春は、いきなり出番ふられて、まるまる時間も残されてるから、あわてて、怒って、高座に上がる。そこで、
>で、きちんと古典落語を五十五分演じておりました。さすがは平成の名人だ。(p.170)
というのが爆笑もの、ひどいパスだしといて、名人だで済ますことはないでしょ。
まあ、兄弟弟子の絆はどんなもんだかともかく、本書には師弟関係について多くが語られている。
談志家元の弟子たちの話はこれまでも聞いたり読んだりしたことあるんだけど、志らくも自分の弟子に苦労してることを書いている。
師匠が思うように弟子はなんないんだけど、そこはビシッとやるところはやる。
>立川流における師弟の定義は「情」ではなく「価値観」。(p.250)
って言葉に、多くは言い表されているなあ。
コンテンツは以下のとおり。
序章 「立川流」とはなんなのか
第一章 継承される「談志イズム」
第二章 談志への愛、演劇への愛
第三章 立川談春伝説
第四章 個性なのか、ぶざまなのか
第五章 立川志らく伝説
第六章 談志の価値観、一門の了見
第七章 立川談志伝説の真相
終章 立川流はどこへ行くのか
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする