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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲

2019-01-06 17:48:39 | 読んだ本
町山智浩 2012年 集英社文庫版
映画評論家の町山さんが、スポーツから見えてくるアメリカについて書いたエッセイを集めたもの。
おもしろそうなんで、去年の11月だったかな、古本買って、最近読んだ。
初出は「Sportiva」っていう雑誌で、単行本刊行は2009年だそうだ。
内容は、だいたい2005年から2009年くらいにかけてのものが中心といえよう。
一編あたりの長さは文庫で4ページくらいだから、わりと短いけど、なかみはけっこう、おーそんなことがって思えるものいっぱい。
特にやっぱ、こういうのは映画になってるとかって専門分野につなげられると、なんか観てもいないうちから、ムダ知識増えてトクしたような気にさせられる。
知らなかった意外なこともいっぱい、たとえば、フィラデルフィア・フィリーズは2007年7月15日の試合に負けて、「プロスポーツ史上初めて“1万試合負けたチーム”になった」(p.132「いっそ一度も優勝しなければよかったのに」)とか、その時点で、通算8810勝10000敗で、メジャーリーグの最多敗戦チームだって。
ちなみに2位がアトランタ・ブレーブスだっていうんだけど、私の知ってるブレーブスったら、マダックスとかグラビン、スモルツのいた強いイメージだったので、弱かったなんて思わなかった。
ひどかったブレーブスについては、前に読んだ『情報狂時代』のなかでも、70年代は史上最低のチームだったって書かれたんで、はからずも最近になって同時に知ったんだけど。
弱いだけぢゃなくて、むちゃくちゃなイベントを決行してて、試合前に有名人たちをラクダやダチョウに乗せて競走させたりとか、試合後に「ウェットTシャツの夕べ」っていう女性に水をぶっかけたうえでのコンテストをやったりとか、人気回復に結びつかない、しょうもないことしてたらしい。
本書にもどって、あまり私は興味ないバスケットボールについても、
>ダンクシュートそのものは昔から存在したが、相手チームを侮辱する行為とされ、NCAAでは反則、NBAでも使う者はいなかった。それをプロのテクニックとして完成させたのがABAのジュリアス・アービングだった。(p.173ダンクシュートは反則だった?)
なんてのは、古くて新しい情報で、ABAってのは1967年から76年までの9年間実在したプロリーグだってのも知らなかった。
もちろん、スポーツそのものだけぢゃなくて、アメリカ社会について解説してくれてることいっぱいあって、あいかわらず勉強になる。
いろいろあるけど、プロスポーツの白人支配について、フットボールを例に、「NFL選手の65%が黒人なのに、ゼネラルマネージャーに黒人はたった5%。チームオーナーはひとりも黒人がいない。」(p.198「4千万ドルもらっても奴隷は奴隷だ」)なんてのは、問題が奥深いものありそう。
スポーツでの華やかな活躍は、肉体的には優秀だけど頭脳はどうかなって偏見を助長して、黒人がほかの分野でもリーダーになることの妨げにつながってんぢゃないかと。
あー、でも、『虚構新聞』とか読んだ直後にこのての読んだりしたら、
>2005年8月初め、NCAA(全米大学体育協会)が、アメリカ先住民(かつてインディアンと呼ばれていた)のイメージをフットボールのチーム名に使ている18の大学に対して「公式戦ではチーム名およびマスコットを使わないように」と通達した。(p.179インディアンは「アワワワワ」なんて言わない)
なんてのは、冗談のニュースなのか現実なのか一瞬わかんないような感じになっちゃって、困った。
章立ては次のとおり。第2章のDaredevilsって単語は知らなかったんだけど、スタントマンを指すらしい。
第1章 強さこそはすべて All You Need Is To Be Strong
第2章 悪魔に挑む男たち Daredevils
第3章 スポーツ犯科帳 Sports Crime File
第4章 私を観戦に連れてって Take Me Out To The Ball Game
第5章 アメリカンスポーツの殿堂 Only In America
第6章 多民族国家のバトルロイヤル Racism In Sports
第7章 敗れざる者たち The Undefeateds
コメント
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