シリル・ヘアー/宇野利泰訳 昭和30年 ハヤカワ・ポケット・ミステリ
これは、去年バカンの『39階段』を探しに行ったときに、たまたま見つけて、思わずすかさず買ってしまったもの。
ほんのいくつか読んだだけだけど、シリル・ヘアーはとてもおもしろいので、聞いたこともないタイトルだけど、かまわず手に入れた。
原題「When the Wind Blows」は1949年の作品だというけれど、その古さがまたいいんだ、これが。
書かれてる物語の舞台も同じ時代のもので、戦後何年かしたところのイギリスのマークハンプトンとかいう地方都市。
弁護士のペティグルウは、だいぶ年下の女性との結婚と同時に、ロンドンの司法官生活をきりあげ地方都市に移り住んできた、年配の弁護士。
その妻エリナアは、音楽が趣味で、街の管弦楽協会の第二ヴァイオリンを受け持つことになり、その余波でペティグルウも楽団の事務的なことを手伝うようになる。
楽団の責任者はパセット夫人で、セロ奏者だが、それよりなにより社交に熱心、貴族社会のゴシップとか大好きなタイプ。
書記長のディクスンはさる子爵につながる血筋で、演奏はできないし音楽愛好家ではないが、出演する音楽家の人選や折衝は完璧にこなす。
指揮者のエヴァンズは、ひどい近眼なんだが、音楽家としての才能はすごく、演奏のことに関しては誰も逆らえない。
オルガン奏者のヴェントリイは、腕はそれほどでもないらしいが、楽器の蒐集に熱心で、金持ちなんで楽団に貢献してるけど、女性関係にせっそうがないことがだんだん明らかになってくる。
とかなんとかで、11月に行われる今シーズン最初の演奏会には、ポーランド生まれで現在英国国内にいるなかでは屈指のヴァイオリニストのルウシイ・カアレスを迎えて行うことになるわけだが。
もう、序盤を読んでるだけで、誰が何の理由で殺されるのか(殺されるんだろうな、きっと)想像するだけでわくわくする。
期待にたがわず、演奏会の最中に会場のなかで人が殺され、大騒ぎになるんだが。
凝ってるよぉ、舞台装置が。
演奏会前の午後の稽古場で、ヴァイオリニストのルウシイが、同じくこの日呼ばれたばかりのズバルトロウスキイというクラリネット奏者と、顔をあわすなり壮絶な罵り合いして、クラリネットが足りなくなる。
あちこち電話して探しあてたジェンキンソンという奏者を急きょ呼ぶんだが、駅で迎えの自動車に乗れなかったらしく、会場に時間までに着かず。
オルガン奏者のヴェントリイが本番に遅刻したので、演奏プログラムの順序が変更されながら進む。
足りなかったクラリネットの場所には、途中からひとりの奏者が入ってきたんだけど、事件後には姿を消して、周りも誰だかはっきり見ていない。
かくして、地元警察が関係者に事情聴取したりして捜査を進めてくんだけど。
警察部長のマックウイリアム氏は、ペティグルウに、あなたはロンドン警視庁のマレットと知りあいでしょ、とか言って協力を求めてくる。
そんなことで、トラブルに巻き込まれたくないペティグルウだったけど、捜査はしないが、事件を推理する探偵役になってしまう。
謎解きもお見事、そういう動機でって驚かされるようなとこも、旧き良きイギリスって感じだし。
それよりなにより、ペティグルウの推理の糸口が、演奏会の前夜祭で参加者のひとりと交わした会話で、ディッケンズが嫌い、デイヴィド・コパーフィールドが一番嫌い、ってとこから来てるってのが、すばらしく味がある。傑作。
これは、去年バカンの『39階段』を探しに行ったときに、たまたま見つけて、思わずすかさず買ってしまったもの。
ほんのいくつか読んだだけだけど、シリル・ヘアーはとてもおもしろいので、聞いたこともないタイトルだけど、かまわず手に入れた。
原題「When the Wind Blows」は1949年の作品だというけれど、その古さがまたいいんだ、これが。
書かれてる物語の舞台も同じ時代のもので、戦後何年かしたところのイギリスのマークハンプトンとかいう地方都市。
弁護士のペティグルウは、だいぶ年下の女性との結婚と同時に、ロンドンの司法官生活をきりあげ地方都市に移り住んできた、年配の弁護士。
その妻エリナアは、音楽が趣味で、街の管弦楽協会の第二ヴァイオリンを受け持つことになり、その余波でペティグルウも楽団の事務的なことを手伝うようになる。
楽団の責任者はパセット夫人で、セロ奏者だが、それよりなにより社交に熱心、貴族社会のゴシップとか大好きなタイプ。
書記長のディクスンはさる子爵につながる血筋で、演奏はできないし音楽愛好家ではないが、出演する音楽家の人選や折衝は完璧にこなす。
指揮者のエヴァンズは、ひどい近眼なんだが、音楽家としての才能はすごく、演奏のことに関しては誰も逆らえない。
オルガン奏者のヴェントリイは、腕はそれほどでもないらしいが、楽器の蒐集に熱心で、金持ちなんで楽団に貢献してるけど、女性関係にせっそうがないことがだんだん明らかになってくる。
とかなんとかで、11月に行われる今シーズン最初の演奏会には、ポーランド生まれで現在英国国内にいるなかでは屈指のヴァイオリニストのルウシイ・カアレスを迎えて行うことになるわけだが。
もう、序盤を読んでるだけで、誰が何の理由で殺されるのか(殺されるんだろうな、きっと)想像するだけでわくわくする。
期待にたがわず、演奏会の最中に会場のなかで人が殺され、大騒ぎになるんだが。
凝ってるよぉ、舞台装置が。
演奏会前の午後の稽古場で、ヴァイオリニストのルウシイが、同じくこの日呼ばれたばかりのズバルトロウスキイというクラリネット奏者と、顔をあわすなり壮絶な罵り合いして、クラリネットが足りなくなる。
あちこち電話して探しあてたジェンキンソンという奏者を急きょ呼ぶんだが、駅で迎えの自動車に乗れなかったらしく、会場に時間までに着かず。
オルガン奏者のヴェントリイが本番に遅刻したので、演奏プログラムの順序が変更されながら進む。
足りなかったクラリネットの場所には、途中からひとりの奏者が入ってきたんだけど、事件後には姿を消して、周りも誰だかはっきり見ていない。
かくして、地元警察が関係者に事情聴取したりして捜査を進めてくんだけど。
警察部長のマックウイリアム氏は、ペティグルウに、あなたはロンドン警視庁のマレットと知りあいでしょ、とか言って協力を求めてくる。
そんなことで、トラブルに巻き込まれたくないペティグルウだったけど、捜査はしないが、事件を推理する探偵役になってしまう。
謎解きもお見事、そういう動機でって驚かされるようなとこも、旧き良きイギリスって感じだし。
それよりなにより、ペティグルウの推理の糸口が、演奏会の前夜祭で参加者のひとりと交わした会話で、ディッケンズが嫌い、デイヴィド・コパーフィールドが一番嫌い、ってとこから来てるってのが、すばらしく味がある。傑作。