many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

25時

2020-03-21 18:50:37 | 読んだ本

デイヴィッド・ベニオフ/田口俊樹訳 平成十三年 新潮文庫
『卵をめぐる祖父の戦争』がけっこうおもしろかったので、同じ著者のものをもうひとつ読んでみることにして古本を買った。
原題「THE 25TH HOUR」」は2000年の作品で、デビュー作らしい。
デビュー作ってのには著者のそれまでのすべてが詰まってることがわりと多いので期待してしまう。
舞台はニューヨークで、1月最後の木曜日から金曜日にかけて。
主人公のモンティは元麻薬の売人、つかまって懲役7年が決定、明日から刑務所入るのでシャバでの最後の一日。
判決がくだされる前も、判決が出たあと自ら収監されに出頭する日までも、自由の身で過ごせるっていう変わった立場。
トシはたぶん27歳というところだけど、ものすごく羽振りがいい、クスリは高く売れるから。
生業は犯罪行為だけど、ふだんはどこのナイトクラブへ行っても用心棒に「モンゴメリー・ブローガンだ」って名前言えば、並んでるほかの客なんか飛び越して、中に入れてもらえる影響力を持っている。
アイルランド系らしいが、豊かな黒髪、きれいな緑の眼、長い睫毛、まっすぐに伸びた鼻梁、粒のそろった小さい歯、とてもハンサム。
容貌が可愛すぎるんで、ともすればなめられがちなのを承知してて、子どものころから先に相手を殴ることをして一目おかせてきた危ない面もある。
でも意外なことに、死にかけてたとこを拾った犬を大事にしてかわいがってたりする。
そんなモンティが明日の正午には刑務所に出頭する、そのあとは悲惨な84か月が待っているという最後の一日をどう過ごすか。
プエルトリコ系のかわいいカノジョがいるんでもちろん一緒の時間を過ごす。
夕飯は父親と一緒に二人で食べる、父親の経営する酒場はモンティの保釈の担保になってたりするんだが。
そして夜の11時くらいからは、ハイスクール時代の同級生でいまも親友の二人、銀行トレーダーのフランクと高校教師のジェイコブとナイトクラブで合流する。
クラブはまるで街じゅうがさよならを言いにきた送別会みたいで大にぎわい。
それでも明日は迫ってくる、最後の朝まで一緒にいる親友の二人にモンティは頼むことがあった。
読んでるうちに、刑務所への不安から、主人公が自殺を選ぶんぢゃないかと、すこし嫌な予感にハラハラしてくるんだけど。
ラストは、なんていうかちょっと映画的な感じがして、なんとなく『ラ・ラ・ランド』を私はおもいだした。
そういえば、基本最後の24時間のできごとを書いているんだけど、折にふれて、ハイスクール時代のこととか、麻薬の商売のこととか、主人公と彼女のなれそめとか、逮捕されたときのこととか、過去のエピソードが語られるのも、なんか映画みたいな感じ。(なんつーの、フラッシュバック? 用語よく知らないんだけど)

コメント
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