サンキュータツオ 平成28年 角川文庫版
去年11月だったか、なんかのついでに手に取ってみた中古の文庫。
著者については私は詳しくないんだけど、立川談志家元の残された上演を紹介するテレビ番組でナビゲーターをしてたのを憶えてたんで、そんなひとが何を書いているんだろうと気になったもんで。
そしたら、お笑い芸人なんだけど、早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了、文学修士だって。(本書カバーの紹介)
ってことは、趣味で好きなことについて書いたわけぢゃなくて、専門家による解説かと読み始めてすぐおどろかされた。
だから熱い熱い、国語辞典に対する思いがハンパではないことはすぐわかった。
いろんな国語辞典をとりあげて、どれも同じなんてことはなく作った編者の思いによって記述に特徴のある作品なんだ、ってあたりが大体メインとして訴えたいとこ。
だから、タイトルは「遊び方」だけど、選び方を教えてくれてる感じ。
かばんだって、どこへ出かけるのか何の用事で何を持ってくかによって、使い分けるでしょ、とか。
辞書を一冊しか持ってないのは、フォーク一本でどんな料理も食べてしまおうというのと一緒だよ、とか。
そういう例えでもって、国語辞典は複数使いなさい、と言われると、なるほどと思ってしまう。
後者の例の議論で大事なのは、ナイフやスプーンや箸も使えるようでないとマナーが乱暴になり、
>たとえば、誰かにメールを送るとき。いつも自分がフォーク一本で食べていれば、相手もフォーク一本で食べているものだと無意識に思ってしまう。(p.92)
ってことになり、相手を不快にさせたり、それで自分が痛い目にあったりするよ、というとこだと思う。
それにしても、
>「大人なら国語辞典は二冊持て!」これを私は、声を大にして言いたい。(p.79)
とか、
>毎年、「今年のベスト語釈賞」とかを決める国語辞典祭りができるくらい、ファンが増えたらとってもうれしく思います。(p.235)
とか、熱くなるのは理解できるんだけど、「『言海』をつくった大槻文彦氏を大河ドラマの主人公に」くらいまでいっちゃうとマニアックすぎてわかんなくなったりする、おもしろいけど。
ああ、そうそう、本書でひとつ気になるのは、話し言葉で書いてあるのはいいんだけど、とにかく「!」が多すぎて、それがちょっと読みにくく感じる、熱い思いを伝えたいのはいいけどそんなに「!」は要らないって気がする。(さすがに数えはしないけど。週刊ジャンプ級ではないかと。)
さてさて、そういう調子で、紹介されてる辞典のなかで、興味があるのは『基礎日本語辞典』かな。
ことばの本質的な意味を説明してくれる、「ことばの置き換え」するだけぢゃ辞書の意味はない、って観点から作られてるってのは読んでみたくなる。
あと、『日本語 語感の辞典』も見てみたい気がする、何か書くとき私はたいてい普通の辞書ぢゃなく『類語国語辞典』で済ませているもんで。
それと、どうでもいいけど、現在の日本語の文法では「形容動詞」って品詞の分類はメジャーぢゃないってのは、初めて知った。
外国人が日本語を学ぶときは、「イ形容詞」と「ナ形容詞」ってのを教わって、むかし私が学校で習った形容動詞は、連体形が「な」で終わるから「ナ形容詞」なんだって。
コンテンツは以下のとおり。
第1章 広くて深い辞書の世界をナビゲート
1.国語辞典は、みんなちがう!
2.国語辞典のルーツ
3.辞書の中にもブランドがある
4.国語辞典は二冊持つ時代
5.なぜ、こんなに多様化したのか?
6.忘れちゃいけない文法問題
7.辞書のディテールを楽しむ
第2章 タツオセレクト! オススメ辞書ガイド
1.キャラクターで解説! 個性派辞書図鑑
『岩波国語辞典』
『新明解国語辞典』
『明鏡国語辞典』
『集英社国語辞典』
『新潮現代国語辞典』
『ベネッセ表現読解辞典』
『角川必携国語辞典』
『新撰国語辞典』
『三省堂国語辞典』
『日本語 語感の辞典』
『基礎日本語辞典』
2.まだまだある! 紹介したかった「国語辞典」たち
3.タツオオススメ「辞書関連本」