村松岐夫・伊藤光利 昭和六十一年 日本経済新聞社
学生んときの参考書を発掘したので三十年ぶりにホコリはらって開いてみたシリーズの第何弾かだ。
けっこう当時有名だった本のように思えるが、なんで読んだのかはおぼえてない、私は自分の研究テーマで地方自治をとりあげたことはないからねえ、なんかの課題図書だったのかもしれない。
サブタイトルは「[日本的政治風土]の主役たち」で、それは巻頭の「はしがき」によれば、
>言いたいことは、地方議員が、国民の中に深く根をおろしている日本の政治文化と政治構造の接点にいること、この接点の動向は日本の政治の方向や雰囲気に大きな影響を与えているということである。(p.3)
ということだそうで、地方議員は日本政治の土台んとこで活躍していると、わりとポジティブな評価をする。
まあ、34年前の話ですけどねえ、その後日本もだいぶ変わったけど、くしくも地方議員出身の総理大臣も新たに誕生したことだし。
本書の内容は著者が1978~79年にかけて調査したデータで主にできてて、京都府の市町村議員全員へ郵送アンケートをしたらけっこう有効な結果をえられたというもの。
議員の回答を、市町村会・府県会べつとか、政党別とか、人口規模別とかで集計して分析してる。
人口の多いところになるほど、選挙区が区切られるから、地域全体というよりは選挙区だけの利益に特化するようになっちゃうってのは、ちょっとしたパラドックスっぽくておもしろいと思う。
ひさしぶりに読み返して、って前に読んだときの記憶は皆無なんだが、やっぱ問題意識として引っ掛かるポイントは「代表のスタイル」ってやつである、代議制が機能してないんぢゃないかってのが日本民主主義の問題点だからねえ。
>代表のスタイルというのは、議員が選挙民の命令どおり行動するのか(代理型)、自分の信念で行動するのか(信託型)の問題である。(p.139)
ってタイプ分けで、市町村会議員も府県会議員もほぼ同様の分布を示すとし、
>まず都市と農村の別でみると、農村部ほど信託型が多いのにたいして、都市部ほど代理型の議員が多く、政党別にみると、自民・民社両党と無所属の議員はいくぶん信託型が多く、(略)これに対して、共産・公明両党では代理型が圧倒的比率を占める。
>(略)わが国の代表のスタイルの分布は共産・公明両党の議員の比率によってほとんど決まるということである。(p.143)
っていう説明とかおもしろい、民社党もうだいぶ前から無くなってるけどね。
なにを代表するかっていう「代表事項」の研究も興味深くて、「個別的分配」よりも「政策」を革新・中道政党議員が重視しているという。
>無所属や自民党の議員は首長が保守系であれば、基本的な政策上の合意が存在することが多く、そのかぎりでことさら政策を提示する必要はない。これにたいして、多くの場合野党の立場にいる中道・革新政党の議員は首長に対抗するため政策上の対案を示したいと考える、という事情があるであろう。(略)
>日本とイギリスの傾向を共通に理解しようとすれば、次のようにいえようか。すなわち、資本主義国の「革新」政治家は、再分配政策(一方の階層から他方の階層に所得の再分配をさせる政策)を政策目標として掲げることが多いが、一般に、再分配を求めるためには、それを正当化する理論や実現する手段を体系的に考えることが必要である。(p.150-151)
ってあたり、ふむふむと考えさせられることが多い。
いま「革新」なんて言葉つかわないけどね。っていうか再分配大好きな勢力は政権に食い込んぢゃってるみたいだし、一律給付とか軽減税率とかそれでできてるんでしょ。
コンテンツは以下のとおり。
プロローグ――いま、地方議員たちは
1 日本政治を支える人びと
2 「地方議会」像の転換
1 地方議員のリクルート
1 地方議員の条件
2 地方議員になるまで
2 議員活動の諸条件
1 代表の性格と選挙過程
2 活動時間
3 報酬
4 無所属と政党化
3 地方議会の影響力
1 行政実務の論理と代表
2 議会活動
4 代表の構造
1 議員の連結機能
2 代表行動
3 代表関係のモデル
5 二元的代表民主主義と今後の展望
1 二元的代表民主主義と共同体維持
2 今後の展望