丸谷才一 一九七五年 集英社
これは、おととしの10月に地元の老舗古本屋で見つけて買ったもの。
どうもね、小説や随筆とちがって、評論となると、読んでみようと思うのが遅くなる、ついつい後回しにしてしまうので困ったものだ。
ところが、これは読んでみると、意外と読みやすいというか、私のようなものにもやさしく感じられる。
「あとがき」を見たら、なんとなくその意味がわかるような、種明かしが書いてあった。
>これは全集本、文庫本その他の解説として書かれた文章を集めたものである。一種の評論集と見て差支へない。
ということで、文庫の解説とかなんで、学術論文的なとこがないというか、入門者にもやさしいんだろう。
同じくあとがきには、毎度凝っている(と私にはおもわれる)、本のタイトルについても触れていて、
>『星めがね」とは言ふまでもなく天体望遠鏡の意。レンズの優秀を誇ることはできないにしても、すくなくとも数篇に関しては手前勝手な視覚の新しさを心中ひそかに自慢してゐる。
とある、うん、視覚のありようによって、文藝評論というのはとてもおもしろくなる。
コンテンツは以下のとおり。【】カッコでつけたのは、タイトルだけぢゃわかんないかもしれないから、誰について書いたのかというメモ、私が自分であとで探すためのもの。
I
慶応三年から大正五年まで 【夏目漱石】
『細雪』について
三人の短篇小説作家 【室生犀星・中野重治・堀辰雄】
松尾芭蕉の末裔 【横光利一】
長篇小説作家としての岡本かの子
最初の作家 【高見順】
詩人・批評家・小説家 【伊藤整】
水のある風景 【大岡昇平】
富士の麓 【武田泰淳】
『風土』について 【福永武彦】
『夜半楽』について 【中村真一郎】
批評家としての中村真一郎
父と子 【松本清張】
花柳小説論ノート 【吉行淳之介】
II
ジョイスと『ユリシーズ』
『若い芸術家の肖像』について
フランク・ハリスといふ男
否定形の抒情 【ヘミングウェイ】
アザゼルのいのち 【グレアム・グリーン】
もう一人のB・B 【ブリジッド・ブローフィ】
イギリスの短篇小説
III
序文から批評へ
ユーモア小説の諸問題
ノン・フィクションの楽しみ