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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

猫の縁談

2021-04-24 18:19:13 | 読んだ本

出久根達郎 一九九一年 中公文庫版
ことし2月だったか街の古本屋で買った文庫。
いままでに何冊か読んだことのある著者だが、いずれも古本屋に関する随筆みたいなものだったし、これもそうだと思ってたんだが、読んでみたら違って創作だった。
もっとも古本屋が語る古本屋を舞台にした話なんで、うっかりしてると著者の実話みたいな気になって読んでしまいそうになるが、現実にしては登場人物がかなり奇妙なんで、まあそういうことである。
たとえば、表題作には「猫じいさん」が主役で、「私」の古本屋の客として出てくる。
高齢の男やもめで、年取った猫を三匹飼っているが、いつまでも面倒みられないので猫をもらってくれる人はいないだろうか、と持ち掛けてくる。
老猫をもらってくれるひともいないだろうから、自分が大事にしている希少な本をつけるという、古本屋への相談だし。
ところが次の日に、その珍しい本を持ってくると、高い値段で売りたいと言い出す、タダでやるなんて言ったおぼえはないとか、ごねだす。
そのへんからウサンくささいっぱいで、めでたく本の買い手になり猫ももらうという客が見つかり、商談成立、無事引き渡しも済んだんだけど、そのあとトラブル発生してくるという展開の話。
一読したなかで私がおもしろいと思ったのは、通信販売のための目録発行をはじめた古本屋のところに、あやしげな「回し屋」が二人やってくる「腹中石」かな。
通信販売する古本屋同士の商品の交換を仲介するという不思議な存在で、うまくつきあってれば便利なんだが、なんか自分の利益になんなきゃそんなことはしないだろうし、自身は古本屋ではないというあやしさがあるのがおもしろい。
コンテンツは以下のとおり。
猫の縁談
腹中石
そつじながら
とつおいつ
猫阿弥陀

コメント
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