四方田犬彦 1993年 悠思社
これ、こないだ3月の古本まつりに出かけてったとき、探してたわけぢゃないけど、たまたま見つけたんで、即買ったさ。
棚に整然と並んでたんぢゃなくて、台のうえになぜかポンと出てた、それで表紙の絵をみた瞬間に、岡崎京子じゃん!って反応したわけで。
(四方田さんとヲカザキさんの関係については、過去に『ゴダールと女たち』記事コメントで教えていただいたことがある。)
なかみは著者の専門分野である映画のこと、あとがきによれば、1988年から1992年に朝日新聞東京版土曜の折り込み「風」に連載した映画評を集めたもの。
>この書物に集められているエッセイは、いずれもがひどく短いものばかりです。ぼくが普通に書く監督論や作品論が何十枚もする長いものであるとすれば、ここにはそのミニチュアが並んでいるといってもいいでしょう。(略)ドルズ・ハウスのように極小のものがびっしりと集められて、ひとつの匱(はこ)のなかに詰めこまれていると考えてください。ぼくがこの本を『ドルズ・ハウスの映画館』と名付けたのは、そこに理由があります。(p.6-7)
というのがタイトルの由来だそうです。
当然のように、とりあげられている映画は(私なんかの知らないような)ちょっとマニアっぽくて、
>ヨモタさんはアメリカ映画はお嫌いですか、とこのあいだ聞かれました。だってこのコラムではヨーロッパやアジアの映画は登場しても、ハリウッドが出てきたことが一度もないじゃありませんかと。冗談じゃない、とぼく。アメリカにも大好きな監督はいっぱいいますよ。(略)ただぼくは、昨今流行のハリウッド映画の子供っぽさが嫌いなのです。ぼくが観たいのは大人の映画。要するにそれだけ。(p.69)
と本文中でも語られてるとおりのチョイスです。
まあ、私は映画にはくわしくないので、そうやってせっかく上質なものを案内されても、特に観てみなくてはって気にはなかなかならないのだけれども。
一読したなかで興味もったのは、まず「てなもんやコネクション」、
>香港の男の子がひょんな偶然で日本観光旅行の懸賞にあたってしまいます。(略)彼は現金もパスポートもなくし、「浅草花やしき」に迷いこんでしまいます。彼はそこでなんと入場五百万人目のお客さんというわけで、夢の香港旅行ご招待。(p.136)
って、なんか楽しそう。
もうひとつは「テラコッタ・ウォリア(秦俑)」、
>時は紀元前三世紀。(略)はるかな東の国へ向かうのが嫌で、列を離れて逃げだした少女が、宮廷警備の若い武官と恋に陥ります。二人はひょんなことから本物の秘薬を口にしてしまい、以後、二千年にわたって離別と再会のドラマを演じます。(p.138)
っていうのも、ちょっと観てみたい感じする。
あと「マドンナ列伝」として、「6歳 オードリ・ヘプバーン」「8歳 浅丘ルリ子」「13歳 ブリジッド・バルドー」「15歳 吉永小百合」「15歳 アンナ・カリーナ」「17歳 ミア・ファーローとジーン・セバーグ」「17歳 ジェーン・バーキン」「19歳 マリア・シュナイダー」「22歳 グレタ・ガルボ」って、憧れた女優をあげてく章はおもしろかったな、ひとのそういう遍歴を読むのは嫌いぢゃないかも。
コンテンツは以下のとおり、なぜか発表順とか国別、ジャンル別とかぢゃなくて、五十音順に収録されてる。
青い青い海
紅いコーリャン
赤いシュート
赤と黒の接吻
アタラント号
アマチュア
安聖基
イザベル・アジャーニ
インタヴュウのコツ
インドシナ
インド夜想曲
美しすぎて
ウディ・アレンの『重罪と軽罪』
ウルガ
映画館でしちゃいけないこと
王手
鍵
革命前夜
数に溺れて
勝新太郎
悲しき酒場のバラード
彼女たちの舞台
狩人
カルテット
希望の樹
客途秋恨
キャロル・ブーケ
キャンディ・マウンテン
霧の中の風景
牯嶺街少年殺人事件
鯨とり
クラウス・キンスキー
桑の葉
ケーブル・ホーグのバラード
傾城之恋
こうのとり、たちずさんで
五月のミル
コックと泥棒、その妻と愛人
サワースィート
サンタ・サングレ――聖なる血
獅子座
シーズンオフ
徐楓
地獄の警備員
自由はパラダイス
シャーロット・ランプリング
上海ブルース
人生は琴の弦のように
ジャン=ポール・ベルモンド
シュガーグラス
12人の優しい日本人
ジュリエット・ビノシェ
真実の瞬間
聖なる酔っぱらいの伝説
存在の耐えられない軽さ
太陽は夜も輝く
誰かがあなたを愛してる
達磨はなぜ東へ行ったのか
菊豆
てなもんやコネクション
テラコッタ・ウォリア(秦俑)
遠い声、静かな暮らし
都会のアリス
ドグラ・マグラ
ドミニク・サンダ
囚われの美女
ナイト・オン・ザ・プラネット
夏目雅子
二十世紀少年読本
バイバイ・モンキー
バスティアンとバスティエンヌ・湖畔にて
バタアシ金魚
薔薇の王国
春来る鬼
春のソナタ
バロック
ピーター・ローレ
ピストルと少年
ふたりのベロニカ
冬の旅
冬物語
フランチェスコ
フリーダ・カーロ
ブリジッド・バルドー
林青霞
ペレ
北京物語
ホワイト・ドッグ
ボヴァリー夫人
ポンヌフの恋人
マイライフ・アズ・ア・ドッグ
マドンナ列伝
真夜中の虹
マリア・シュナイダー
マリリン・モンロー
曼陀羅
右側に気をつけろ
見知らぬ人
溝口健二の美学
メトロポリタン
本木雅弘
ヤーバ
山口百恵
浴室
欲望の翼
ラスト・オブ・イングランド
ラ・ピラート
ラ・ヴィ・ド・ボエーム
リビング・オン・TOKYO・タイム
ルイス・ブニュエル
ルイズ・ブルックス
レネットとミラベル 四つの冒険
恋恋風塵
ロベルト・ロッセリーニ
わんわん物語