エドワード・D・ホック/木村二郎訳 2002年 創元推理文庫
先々月だったか、電車乗って初めて行った場所の古本まつりで、買った文庫。
ワゴン数台ってあまり大きな規模でもなかったけど、意外とバラエティあって、やっぱたまには自分にとって新しい市場ものぞいてみるもんだ。
と言いつつ、これは前に読んでわりとおもしろかったシリーズの続きなんで、ちっとも新発見ではないんだが。
日本で独自に編纂したという短篇集だが、シリーズの発表順の第13作から第24作を順に収録、初出は1978年から1982年だという。
物語世界は、1927年から1930年ころのアメリカ、禁酒法の時代だ、大恐慌が起きたときのことなんかも語り手によって触れられてる。
その語り手・主人公サム・ホーソーン医師は1922年にノースモントで開業したから、二十代後半から三十になろうかというころか。
短篇集を発表順に収録してんのは、ときどき「ぢゃあ次回は、そのときの話をしよう」みたいに、アラビアンナイト的につながりのあるエンディングを使ったりしてるせいもあるんぢゃないかと思ったんだが、ホーソーン医師の自慢の自動車が焼けてしまって新車を買ったりとか、友人でもある保安官が結婚したりとか、物語世界にいろいろとイベントが生じてるんで時系列に沿ったほうが無難ではある。
サム・ホーソーンも1929年の夏には年下の女性との恋をするんだが、そのあとに起きた事件との関わりなんかで、短い仲に終わっちゃう。
そう、サム医師は本職は医者なんだけど、なんかっつーと怪奇・一見不可能事件の現場に立ち会うはめになっちゃって、素人探偵として問題を解決していく。
ちょっと目を離したすきに、他に誰もいないはずのテントのなかで、石膏の立像が手に持っていた剣でもって男が刺し殺されたりとか。
真夜中に、仕掛けを知らないものには入り口を見つけられない隠されたドアを開けて、中からは出ることのできない秘密の部屋に入っていった男が、胸にナイフを刺されて座って死んでいたとか。
まあ、いろいろ不可能殺人が起きるんだが、短い物語のなかで、鮮やかにタネあかしされるのは読んでて楽しい。
収録作は以下のとおり。なお、最後の「長方形の部屋」はこのシリーズには含まれない、ボーナストラック。
伝道集会テントの謎 The Problem of the Revival Tent
ささやく家の謎 The Problem of the Whispering House
ボストン・コモン公園の謎 The Problem of the Boston Common
食料雑貨店の謎 The Problem of the General Store
醜いガーゴイルの謎 The Problem of the Courthouse Gargoyle
オランダ風車の謎 The Problem of the Pilgrims Windmill
ハウスボートの謎 The Problem of the Gingerbread Houseboat
ピンクの郵便局の謎 The Problem of the Pink Post Office
八角形の部屋の謎 The Problem of the Octagon Room
ジプシー・キャンプの謎 The Problem of the Gypsy Camp
ギャングスターの車の謎 The Problem of the Bootlegger's Car
ブリキの鵞鳥の謎 The Problem of the Tin Goose
長方形の部屋 The Oblong Room