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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

ウースター家の掟

2022-09-06 21:05:10 | 読んだ本

P・G・ウッドハウス/森村たまき訳 2006年 国書刊行会
5月下旬ころだったか地元で買った古本。
原題「The Code of the Woosters」は1938年の刊行。
タイトルのウースターは、主人公バートラム・ウースターの家名なんで、ジーヴスものだとは思ったんだけど。
長篇で、前に読んだ『よしきた、ジーヴス』のつづきになってた、順番に読んでたからよかったようなものの、前作知らないと話が通じない長篇ってのは苦手分野かな、やっぱ短篇集のほうが私には好みだな。
さて、ウースター家の掟とはなんぞやということだが、
>あなた前にあたしに、ウースター家の掟とは〈決して友達をがっかりさせないこと〉だって言ってらっしゃらなかったかしら?(p.333)
って女友達に指摘されてるように、そういうことだ。
友達のためなら自らの危険をもかえりみず一肌脱ぐオトコ気は友人たちにも有名で、もし恐れおののいてしり込みするところを見せると、
>これが僕が学校時代に崇拝していたバーティー・ウースター――僕らが〈命知らずのバーティー〉と呼んでいたあの少年のなれの果てか?(p.148)
なんて言われちゃう。
そう言ったのはバーティーの友人の、ガッシーことオーガスタス・フィンク=ノトルで、前作に続いての登場。
このガッシーがマデラインという女性と婚約してるのは前作からのつづきなんだが、なんだかんだケンカばかりしてて、すぐ婚約解消って騒ぎになる。
この二人のあいだをとりもってやろうってのが、バーティーのひとつのミッションになる、それは友だち甲斐ってだけぢゃなくて、いろいろあって二人が結婚しないと、マデラインのほうがバーティーと結婚したいとか言い出すから、それを回避するためである。
もうひとつのミッションは、バーティーにとってのいい親類であるダリア叔母さんが、銀のウシ型クリーマーをくすね取ってこいと無理難題を命令してくる。
ダリア叔母さんの夫のトム叔父さんが買うはずで取り置きしてあったのがアクシデントで買えず、ほかの人が買ってしまったのだというが、それを買ったのがマデラインの父親のサー・ワトキン・バセットなんだけど、このパセット氏が治安判事で、かつて「刑の代替はこれを認めない」という短篇で警官のヘルメットを盗もうとしたバーティーに罰金刑を言い渡したという因縁の人物。
かくしてバーティーは、彼のことを忌み嫌っているバセット氏の邸へ、客人として乗り込んで行くことになるんだが。
着いてみると、友人のガッシーは、他人の侮辱的悪口を書き溜めた手帖を紛失してしまったとか言って、新たなトラブルが発生している。
それを拾ったのは、バーティーの女友達で、マデラインの従姉妹のスティッフィーなんだけど、このスティッフィーの婚約相手が、副牧師のハロルド・ピンカーといって、これがまたバーティーの親友のひとり。
それはそうと、このスティッフィーって女性がまたぶっ飛んだ性格をしてて、やたら事態を悪化させることばかりしでかす。
地元の巡査が気に入らないから、婚約者のハロルドにはあの警官のヘルメットを盗んできてよと命じるし、バーティーには騒動のネタになる手帖を返してほしければ銀のウシ型クリーマーをくすね取ってきてよと命じる。
かくして、銀のウシ型クリーマーとガッシーの手帖と警官のヘルメットをめぐって、サー・ワトキンの田舎の邸宅で騒動が繰り広げられる。
どうでもいいけど、本人は舞台にあらわれないのに、事件全体に大きな影響力をもつ人物がいて、それはダリア叔母さんのところのコックのアナトール。
ダリア叔母さんはバーティーに対して、言うことをきかないならウチにおまえを呼ばないからアナトールの料理を食べられなくなるよとか脅すし、サー・バセットはトム叔父さんに対して、銀のウシ型クリーマーとアナトールを交換しようなんて取引を持ちかけるし。
銀のウシ型クリーマーを手に入れるのはもちろん、唯一無比の芸術家とまで称されるアナトールをダリア叔母さんのもとに残せるかってのも重大な問題になってくる。


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