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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

漢字語源の筋ちがい

2024-10-30 19:08:37 | 読んだ本
高島俊男 2006年 文春文庫
これはことし6月ころに買い求めた古本の文庫、「お言葉ですが…(7)」ということで、前に読んだ『イチレツランパン破裂して』につづくもの、「週刊文春」で2001年から2002年ころが初出だそうで。
こないだ読んだ『日米開戦・破局への道』のなかで、牧野伸顕の話題になったとき「お互い忙しい時には一々伸顕(のぶあき)なんて言いません。「しんけん」で通ります。逆にそういうふうに通るということは大物になったということです。」なんて言ってるとこあったんだけど。
本書には、そういう名前のことを5回連続でとりあげたシリーズがある、徳川慶喜のなまえは「ケイキ」と呼んで間違いではないってとこから始まる。
>つまり「徳川慶喜(けいき)」というのは、この人のことを言う時の最も一般的な呼称なのだ。それに「徳川ヨシノブ」とむきつけに名を言うより、「徳川慶喜(けいき)」と音で呼ぶほうが、敬意をこめた呼びかたである。
>森銑三先生が若いころ、山田孝雄博士から、「人の名前を音読するのは、寧ろ敬意を表することになるので、定家をテイカと音読するのはいい。定家自身は、私はサダイヘです、といふのが当然で、私はテイカですとはいはない」と教えられたことを書きとめていらっしゃる(略)(p.229)
ということで、大物になると音読されるのはあたりまえってことらしい。
>日本人の名前は種々ある。うち慶喜、あるいは家康、吉宗のようなのを「実名(じつみょう)」と言い、また「名乗(なのり)」とも言う(略)
>実名は、公家、武家の男子が元服する時につける名である。嘉祥の文字二字より成る。(略)そしてそれを訓でよむ。(略)
>この「訓でよむ」というのが大事な原則である。そして、そのよみかたはどうであってもよい。(略)リクツはどうともつくから、実際のところ、一つの字をいろんなふうによむ。(p.230-231)
っていうことで、慶喜と書いて、ヨシノブと読もうがノブヨシと読もうがかまわないらしい。
>人が生前に、他人から実名で呼ばれることはまずない。というのは、実名というのは非常にだいじなものであるから、人はそれを尊重して、めったに口にせぬようにしなければならぬのである(略)
>誰も呼ばないのなら実名というのはいつ誰が使うのかというと、当人が公文書に署名する際にもちいるのである。つまり実名というのは、事実上、書くための名前である。だから、文字は絶対にまちがいは許されない。(略)そのかわり、それをどうよむのかは当人と親族くらいしか知らないということがしばしばある。(p.231-232)
ということらしい、実名の読み方ってのはわからないことが多いし、わかってても気安く呼んぢゃったりすんのは失礼なことだと。
音読みするのは、そのひとのこと直接さしてるんぢゃなくて、名前の文字をさして言ってる、間接的にいってるとこに敬意があるってことなんだろう。
さてさて、タイトルの「漢字語源の筋ちがい」ってのは何のことかっていうと、ある言葉について民間でいわれる語源ってのはあてずっぽうなものがあって、日本ではそれが漢字がらみでそうなることが多いって話。
たとえば、十二月のことを師走っていうのは、師である先生とか僧侶とかが忙しくて走る・馳せるって説明をつけることが多いんだけど、これって平安時代の書物にもあって千年くらい前から言われてるらしいが、ぢゃあ一年のおわりの月を「しはす」と呼ぶのはいつからかというと、それより何百年も前からのことで、なんでそう言うのかは古すぎてホントのことはわからないんだという。
おなじように十月のことを「神無月」というのは、神さまが出雲に集合しちゃっていなくなるからだっていうけど、「かみな月」の意味がわからなくなって「神無」って字をあとからあてたんだってことらしい、とかく漢字つかってあると字面に引っ張られて適当な解釈しちゃうのはアヤシイもんだと。
コンテンツは以下のとおり。
ウマイとオイシイ
 メル友、買春、茶髪
 ウマイとオイシイ
 女の涙
 鳥たち虫たち
 黒き葡萄に雨ふりそそぐ
 人はいつから人になるか
 孔子さまの引越
漢字語源の筋ちがい
 洗濯談義
 潔癖談
 吾妹子歌人
 ますらたけをの笠ふきはなつ
 漢字語源の筋ちがい
 看護婦さんが消える
 若鷲の謎
ドンマ乗りとカンカンけり
 紙芝居とアイスキャンデー
 だれが小学校へ行ったのか
 むかしの日本の暦
 ドンマ乗りとカンカンけり
 母の家計簿
 「スッキリ県」と「チグハグ県」
 片頬三年
訳がワケとはワケがわからぬ
 ミー・ティエン・コンの問題
 香港はホンコンか
 むくの人々?
 訳がワケとはワケがわからぬ
 連絡待ってますよ
 王様の家来
お客さまは神さまです
 前に聳え後に支ふ
 どうした金田一老人
 お客さまは神さまです
 だいぶまちがいがありました
 勉強しまっせ
 忠と孝とをその門で
ヒロシとは俺のことかと菊池寛
 慶喜(けいき)と慶喜(よしのぶ)
 ジュードーでごわす
 ヒロシとは俺のことかと菊池寛
 カメは萬年、ウエダも萬年
 おーい、源蔵さん
 主税がなんでチカラなんだ
 マルちゃんレーちゃん
「サヨナラ」ダケガ人生ダ
 「サヨナラ」ダケガ人生ダ
 臼挽歌
 アサガヤアタリデ大ザケノンダ
 人が生きてりゃ
 「イェイゴ」の話
 「円」はなぜ YEN なのか
 開元通宝と開通元宝

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