高橋秀実 平成20年 新潮文庫版
こないだ読んだ『はい、泳げません』と同じころ、やっぱ中古で買った文庫。
泳げませんのほうは、著者本人のスイミングスクール通いだったけど、こっちは奥さんのダイエットについて、いやー身を切ってネタを提供ですかー、果敢ですねえ。
奥さんは、結婚してからの10年で30キロ太り、158センチで80キロだという。
ある日、過呼吸かなんかで救急車呼ぶ騒ぎになって、病院に行って、特に異常はないんだけど、やっぱもうすこし体重落としたほうがいいんではないかと気づくとこから始まる。
でも、ダメだな、私には、この本はそれほど楽しく読めない。
『はい、泳げません』のほうは何か理屈ばっか言って泳ごうとしない男にイライラしたけど、これは何だかんだいってダイエットなんかしようとしない主人公の立て方なので、やっぱイラつく。
ダイエットとか、男の場合だと筋トレによる肉体改造とか、やるかやんないかだからねえ、やらないで方法論のまわりをクルクル回っててもしかたない。
でも、この奥さんのキャラ設定は、ある意味徹底的だ。
>「私は努力しないので、やせたいのよ」(略)
>「何もしないで、しあわせになりたいのよ」(略)
>「努力には“美”がない」(略)
>「努力せずに得てこそ、しあわせなのよ」(略)(p.35)
と、これってあれだ、典型的な女性原理、ディズニーの目指してるところだ。さらに、
>じゃあ、どういうダイエットなら、やってみたい?(略)
>「朝、目が覚めたらやせてた、っていうやつ」(p.36-37)
と来たもんだから、やっぱ、ありのままにしてたら、いつか王子さまがっていう、ディズニー的女性の価値観そのもの。
でも、まあ、本人はともかく、例によって著者はいろんな実体験をもつひとたちにインタビューしたりして、そのなかで特に目標達成したり成功したりしたひとの話なんかはおもしろい。
>自分を信じれる人はやせたがったりしません。自分のない人、自信のない人がダイエットに走るんです(p.111)
という意見なんかはいいねえと思う、ちなみに、これ、ダイエットに走る人を批判してんぢゃなくて、「ダイエットはライフワーク」とまで言い切って過激なダイエットをやらずにはいられないひとのセリフ、こういうひとが登場するからヒデミネさんの本はおもしろい。
あと、著者は山ほどあるダイエットの体験談広告なんかも数多くあたってみて、その結果として、
>体験者たちは、ダイエット法と必ず「偶然」出会う。(略)
>私の見る限り、「このダイエットは効果があると信じて一生懸命取り組んだら、本当にやせた」という気合いのこもった例はほとんどなく、みんな「たまたま」出会い、その結果に「びっくり」するのだ。(p.45)
というパターンに行き当たって、やや憤慨まで感じる。
でも、そこで女性誌の編集者に取材しに行くと、
>女性たちはこれらを読んで疑似体験するんです。自分もこうなれるんじゃないかしらとか、自分がこうなったらどうかしらとか。要するに“夢”を見るんです(略)
>ダイエット記事とはそのためにあるんです(p.47)
と、またしても努力なんかしない、みずから変身しようなんてこと企てない、ありのままでいると、ある日プリンセスになれる、ってディズニー的女性原理が登場するんである、これにはホント勝てない。
章立ては以下のとおり。第5章の「9、11、13」には、女性の服のサイズがなぜ奇数なのか、という話があって勉強になった。
Diet00 やせれば美人
Diet01 心臓バクバク
Diet02 デビュー前、デビュー後
Diet03 ダイエットが降ってくる
Diet04 信ずる者は救われる
Diet05 9、11、13
Diet06 エネルギーの温存
Diet07 食神の星回り
Diet08 体重計、壊れる
Diet09 同窓会に向かって走れ!
Diet10 ナルシストの暗示
Diet11 太る血液
Diet12 もう、食べたくありません
Final Diet 見えないダイエット
こないだ読んだ『はい、泳げません』と同じころ、やっぱ中古で買った文庫。
泳げませんのほうは、著者本人のスイミングスクール通いだったけど、こっちは奥さんのダイエットについて、いやー身を切ってネタを提供ですかー、果敢ですねえ。
奥さんは、結婚してからの10年で30キロ太り、158センチで80キロだという。
ある日、過呼吸かなんかで救急車呼ぶ騒ぎになって、病院に行って、特に異常はないんだけど、やっぱもうすこし体重落としたほうがいいんではないかと気づくとこから始まる。
でも、ダメだな、私には、この本はそれほど楽しく読めない。
『はい、泳げません』のほうは何か理屈ばっか言って泳ごうとしない男にイライラしたけど、これは何だかんだいってダイエットなんかしようとしない主人公の立て方なので、やっぱイラつく。
ダイエットとか、男の場合だと筋トレによる肉体改造とか、やるかやんないかだからねえ、やらないで方法論のまわりをクルクル回っててもしかたない。
でも、この奥さんのキャラ設定は、ある意味徹底的だ。
>「私は努力しないので、やせたいのよ」(略)
>「何もしないで、しあわせになりたいのよ」(略)
>「努力には“美”がない」(略)
>「努力せずに得てこそ、しあわせなのよ」(略)(p.35)
と、これってあれだ、典型的な女性原理、ディズニーの目指してるところだ。さらに、
>じゃあ、どういうダイエットなら、やってみたい?(略)
>「朝、目が覚めたらやせてた、っていうやつ」(p.36-37)
と来たもんだから、やっぱ、ありのままにしてたら、いつか王子さまがっていう、ディズニー的女性の価値観そのもの。
でも、まあ、本人はともかく、例によって著者はいろんな実体験をもつひとたちにインタビューしたりして、そのなかで特に目標達成したり成功したりしたひとの話なんかはおもしろい。
>自分を信じれる人はやせたがったりしません。自分のない人、自信のない人がダイエットに走るんです(p.111)
という意見なんかはいいねえと思う、ちなみに、これ、ダイエットに走る人を批判してんぢゃなくて、「ダイエットはライフワーク」とまで言い切って過激なダイエットをやらずにはいられないひとのセリフ、こういうひとが登場するからヒデミネさんの本はおもしろい。
あと、著者は山ほどあるダイエットの体験談広告なんかも数多くあたってみて、その結果として、
>体験者たちは、ダイエット法と必ず「偶然」出会う。(略)
>私の見る限り、「このダイエットは効果があると信じて一生懸命取り組んだら、本当にやせた」という気合いのこもった例はほとんどなく、みんな「たまたま」出会い、その結果に「びっくり」するのだ。(p.45)
というパターンに行き当たって、やや憤慨まで感じる。
でも、そこで女性誌の編集者に取材しに行くと、
>女性たちはこれらを読んで疑似体験するんです。自分もこうなれるんじゃないかしらとか、自分がこうなったらどうかしらとか。要するに“夢”を見るんです(略)
>ダイエット記事とはそのためにあるんです(p.47)
と、またしても努力なんかしない、みずから変身しようなんてこと企てない、ありのままでいると、ある日プリンセスになれる、ってディズニー的女性原理が登場するんである、これにはホント勝てない。
章立ては以下のとおり。第5章の「9、11、13」には、女性の服のサイズがなぜ奇数なのか、という話があって勉強になった。
Diet00 やせれば美人
Diet01 心臓バクバク
Diet02 デビュー前、デビュー後
Diet03 ダイエットが降ってくる
Diet04 信ずる者は救われる
Diet05 9、11、13
Diet06 エネルギーの温存
Diet07 食神の星回り
Diet08 体重計、壊れる
Diet09 同窓会に向かって走れ!
Diet10 ナルシストの暗示
Diet11 太る血液
Diet12 もう、食べたくありません
Final Diet 見えないダイエット
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1e/9f/64594cd579ef8230ca7817c7a397cb27.jpg)