many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

見世物の人類学

2018-03-11 18:47:01 | 読んだ本
ヴィクター・ターナー・山口昌男編 1983年 三省堂
これは何の根拠も予備知識もなく、半年前の古本まつりで買ったやつ、やっと最近読んだ。
もう、タイトルと著者名のいくたりかと、表紙画をふくむ装幀が気に入って買ったようなもの。
いざ読んでみようとしたら、表紙の固いのが、重たくて難儀した。
なかみは1981年に筑波大学でおこなわれた「見世物と民衆娯楽の人類学」という国際シンポジウムで発表された論文集。
編者あとがきにいわく、白熱した討論がおこなわれて、
>これに参加しなかった学生は一年分の大学の教室の講義を棒に振った以上のもの、市民はカルチャー・センターの十の講義を併せた以上のものを失ったといえるかも知れない
ってほど盛り上がったものらしい。
私は単純に見世物、それもあやしいやつを期待してたんだけど、シェイクスピア研究あり、スリランカの悪魔祓いあり、日本の巡礼や祭りの考察あり、ブラジルにおけるサッカーの意味あり、イランの伝統芸能パフォーマンスありーので、多岐にわたる文化に関する学問の論文いっぱいで、読むの大変だった。
だいたい予想したとおり、道化とか儀礼とか象徴とか周縁とか祝祭とかって言葉があちこち出てきて、私はちゃんとした勉強してないんだけど、まあニューアカってそんな感じだよなあと思い当たった。
境界っていうのがひとつキーワードかなあ、リミナル、いまいち意味がはっきりとはわからないけど。
コンテンツは以下のとおり。
(1)トポス
宗教的祭礼|神、危機、加護、救済 ヴィクター&エディス・ターナー
都市のグロテスク|闇の見世物と闇の空間 栗本慎一郎
シンハラの悪魔祓いにおける笑いと治療 ブルース・カッフェラー
現代巡礼と日本文化の深層 青木保
新宮・神倉神社におけるお燈祭り ヴィクター・ターナー
(2)テクスト
見世物の人類学へ 山口昌男
聖母と雌馬|シエナ競馬の象徴構成 ドン・ハンデルマン
ディズニーランドの馴致され植民地化された想像力|夢が実現した時の歓喜と危機 バーバラ・マヤホフ
視覚のカタストロフ|見世物芸のレトリックと形象性 中沢新一
(3)レトリック
社会の〈内なる〉スポーツ|国民劇・国民祭としてのフットボール ロベルト・ダ・マータ
シェイクスピアにおける祝祭|境界性の領域 エディス・ターナー
相撲の宇宙論 山口昌男
殉教と道化|イランの伝統芸能における文化コンテキスト ウィリアム・ビーマン
女の大力と見世物 宮田登
祝祭の中の裸者|現代オリンピックにおける遊びとパフォーマンスの諸ジャンル ジョン・マッカルーン
見世物としての会議|記号論的・言語学的視点から リンダ・ウォー
・あとがきに代えて 国際シンポジウムの出来るまで|演劇としての学問 山口昌男

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おんなのこ物語

2018-03-10 18:01:57 | マンガ
森脇真末味 2006年 ハヤカワコミック文庫版 全3巻
というわけで、前回のつづき。タイトルの「物語」には「ストーリー」ってルビふられます。
『緑茶夢』のつづき、といっても物語時系列的には前に遡ってるんだけど。
主人公は、『緑茶夢』の最初の『ドラムス〈スラン1〉』に出てきた、ドラムの八角京介。
タイトルはうそで、ロックバンドの男どもの物語がメイン。
ただし、ちゃんと出てくる女のコの尚子さんというのは、おもしろい性格したかわいいコです。
八角がメンバー最年少の17歳で高校生、スランのマネージャーとして前作でご活躍の水野が18歳、リーダーの仲尾とギターの桑田が同い年の22歳。
バンドの名前はSticker、けっこううまいと評判、自分たちの音楽にもきびしい。
スランのボーカルで最年少の弘が自分を拾った水野に何かとからんだように、この時代では八角が仲尾に対して何か複雑な感情もつようなとこある。
いやー、やっぱ苦手だなー、こーゆーの、いつ「お兄さま、ボクをしかって」みたいなことになっちゃうんだろー、みたいに思って読んでたんだが、そんなイージーなことにはならない。
読んでくうちに、なんか慣れてきて、後半戦では、けっこうおもしろいな登場人物どれもいいよって具合に楽しめるようになった。
全編をとおして、私のお気に入りは、コミックバンド・桃色軍団の大城さんということになりますが。
読み終わったとこで、あれ、この話って舞台が東京ぢゃなかったんだ、って意外に思って、またアタマんとこ戻って読み直してみた。
あと、『スラン』の最初の八角が登場する話もどうしてももう一回読まずにはいられなくなった。
収録作は以下のとおり、第3巻の三分の一くらいのとこで本編は終了、あとの短編はさらに過去に遡ってのスピンオフ的なもの。
おんなのこ物語
おんなのこ物語第1部 Sticker
おんなのこ物語第2部 IMPEDANCE
かきねの妹
男は寡黙なバーテンダー
Pool Sideのふたり
踊るリッツの夜〈I〉〈II〉
TIME〈I〉〈II〉
みりんでGO! I・II・III
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緑茶夢―スラン―

2018-03-04 18:07:33 | マンガ
森脇真末味 2002年 小学館文庫版
こないだ読んだ穂村弘の書評集『これから泳ぎにいきませんか』のなかに、マンガの文庫版の解説が収められていて、そこに
>森脇真末味は本当に凄い。『緑茶夢』『おんなのこ物語』のシリーズは漫画史に残る名作。『ブルームーン』はラインを超えちゃった傑作。全作品必読です。
って文章があって、そりゃ読まなきゃ、と思った次第。
なんせペンネームの「弘」は、そのマンガの作中人物の名前からとったのだというから、興味つきない。
しかし、いまから二十年以上前の作品らしいんで、あるかいなと心配したんだが、ちゃんとふつうに買えた。
『おんなのこ物語』を読もうとしたんだが、その前作にあたるのが『緑茶夢』だというので、そっちから読むことにした。
ちなみにタイトルは、「グリーンティードリーム」と読むらしい、なんか苦手だな、そういうの。
サブタイトルみたいになってる「スラン」は、主人公たちのつくっているバンドの名前。
で、問題の主人公である安部弘は、所収短編のトビラの紹介によると、
>某ロックバンドのボーカリスト
>メンバー最年少
>体重:ヒョージュン以下
>身長:女性に生まれていれば高かったのに
>高校はおちこぼれてサヨーナラ
>バンドでは言葉の暴力ではみだしっこ
>16歳である
ということで、見かけによらずケンカっぱやいんだが、自家中毒とやらで吐いちゃったりする、線の細そうな男の子。
16歳であるってのが驚きで、ほかの大人たちがつくってるバンドに、どこで才能見い出されたのか、加入してる。
そのスカウトしてきた当人らしい、バンドのマネージャーの水野礼二ってのがもうひとりの主要人物で。
なにかとワガママばかりの弘が、だんだん礼二に(ずっと年上なのに面と向かって「礼二」と呼ぶんだが)頼るというか甘えるようになるさまが、私ゃあ、あんまり好きぢゃないんだな、こういうの。
かくして、やっぱり私は、いわゆる少女マンガってのが理解できないんだなと、再認識した次第。
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四角い卵

2018-03-03 17:43:15 | 読んだ本
サキ/和爾桃子訳 2017年 白水社
年明けくらいに書店でみかけて買った、まだあったんだサキの短編、ってちょっと意外に感じて。
初期短編集の「ロシアのレジナルド」と、没後出版された短編集「四角い卵」と、その他見つかったもの全部って感じで集めて翻訳されたもの。
コンプリートできたらうれしいと感じるファンにはありがたい企画。
初期のものは、全体的に短いものが多いような印象がある。
よく知られた傑作短編とちがって、ちょっとどこがおもしろいのかわかんないのもあるけど。
ほかには戯曲みたいのとか政治風刺とか、ふつうの短編以外のものもいろいろ。
表題作の「四角い卵」は、らしい短編で、戦時下のカフェみたいなとこで、たまたま隣り合わせただけなのに「おなはし」を持ちかけてくる男の話。
卵も近ごろぢゃ値段が高いけど、よくないところはあの丸い形で、うっかりするとテーブルから転がり落ちてすぐ割れてしまう。
自分の叔母が養鶏場をやってるんだが、たくさんの雌鶏のなかには、丸っこくない卵を産むのがいて、自分はそういうのを集めては交配と生産をつづけてきた。
その結果、便利な四角い卵をつくることができて、今後の商売の見通しは明るいんだけど、困ったことに叔母が儲けはもとから養鶏場をやってる自分のものだと言いだした。
品種改良をしたのは俺だから、そこは訴訟をしてはっきりさせようと思うんだが、裁判の費用が手元にない、そんな高額ぢゃなくて小ガネが足りないだけだから、融通してくれないか、と。
まあ、よくある「おはなし」だから、乗るはずもないんだけど、チクっと厳しい断わりかたをするのが、サキらしくていい。
収録作は以下のとおり。
ロシアのレジナルド Reginald in Russia
レディ・アンの沈黙 The Reticence of Lady Anne
地名の岐路 The Lost Sanjak
女性は買い物しない The Sex That Doesn't Shop
トード・ウォーターの仁義なき戦い The Blood-Feud of Tord-Water
青年トルコ党の惨敗 A Young Turkish Catastrophe
宅配人ジャドキン Judkin of the Parcels
ゲイブリエル‐アーネスト Gabriel-Ernest
聖者と小鬼 The Saint and the Goblin
ラプロシュカの未練 The Soul of Laploshka
獲物袋 The Bag
いたちごっこ The Strategist
流されて Cross Currents
十三人いる The Baker's Dozen
小ネズミ The Mouse
四角い卵 The Square Eggs
西部戦線の鳥たち Birds on the Western Front
国家の祭典(ガラ・プログラム) The Gala Programme
地獄の議会 The Infernal Parliament
猫を讃えよ The Achievement of the Cat
古都プスコフ The Old Town of Pskoff
クローヴィス、実務のロマンなるものを語る Clovis on the Alleged Romance of Business
聖賢語録 The Comments of Moung Ka
犬と暮らせば Dogged
トム叔母さんの旅 Travelling with Aunt Tom
ジャングルの掟 A Jungle Story
政界ジャングルブック The Political Jungle-Book:III.Hugheera's Hunting
エデンの園 The Garden of Eden
池 The Pond
聖戦 The Holy War
暮らしの歳時記 The Almanack
捨て石のお値段 A Sacrifice to Necessity
部屋割り問題 A Housing Problem
闇の一撃 A Shot in the Dark
東棟 The East WING
伍長の当直記 On Being Company Orderly Corporal
ボドリー・ヘッド版サキ選集序文 J・W・ランバート
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