many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

虫と歌

2018-06-10 18:36:46 | マンガ
市川春子 2009年 講談社アフタヌーンKC
『宝石の国』といっしょに買った、短編集。
連載中のもののアタマの数巻だけ読んで、どうしたらいいかわかんなくなっちゃったときに、短編集を読んだら評価がしやすいんぢゃないかと思って。
一読してみて、私はこっちのほうが好きですね。
それにしても、人間ぢゃないものへの偏愛ぶりのようなものは、宝石にいく前から既にバリバリあったんだと、妙に納得。
「星の恋人」2007年
人のみかけはしているが、植物からつくられた男の子さつき。
その切り落とした指から挿し木して作られたという女の子つつじ。
ふたりを作った植物発生学専門のさつきの叔父さんというキャラがなんとなくいい。
「ヴァイオライト」2008年
飛行機落ちたのに生き残った二人の男の子が山を下りていこうとする話。
ビリビリで電気を発するほうのキャラがなにを象徴してるのか、私にはよくわかんない。
「日下兄妹」2009年
野球部のエースだった日下雪輝は、肩の軟骨がこわれて、手術を受けようとかせずに退部する。
家は古道具屋で、そこにあったタンスのネジあてが逃げ出して、なんだかわかんないけど小さな生き物になる、これがやがてヒナって名前で呼ばれて妹扱いされる。
野球部に戻るようにって部員たちがとっかえひっかえ押しかけてくるんだけど、その様子がおかしい。
私はこれがいちばん好きだな、ラストがびっくりで。
「虫と歌」2006年
3人兄妹のいちばん上の兄の仕事は、スケール200倍の昆虫の模型づくりらしい。
でも、ホントの仕事は、人型の昆虫づくり。
「ひみつ」
単行本描き下ろしってことの2ページ超短編。
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プライド

2018-06-09 18:05:11 | 読んだ本
金子達仁 2017年 幻冬舎
ここんとこ複数読んでる“あのころの”格闘技に関する本、一応これで一区切りっつーか、買ったの年明けだけど、読んだの最近。
著者名は『泣き虫』のことでおぼえてたんで、タイトルからしても、高田が中心の本かなって予想はついたが。
高田と、PRIDEを主催したKRSを立ち上げた榊原氏との出会いから、ヒクソン戦までがメイン。
榊原氏は当時、東海テレビの系列の東海テレビ事業というとこの若手社員にすぎなかったんだけど、名古屋で高田と朝まで飲んでたとこで、ヒクソンかタイソンとやって引退したいって高田の言葉を聞いてしまう。
イベントをいろいろ手がけてたけど、自身は格闘技の大物プロデューサーってわけでもなかった若者が、その前にK-1を名古屋に呼んだりって実績もあったりして、本気になって動いた末には、とうとうPRIDE・1を実現させることになるんだが、いま考えるとすごい。
んー、でも、高田に関してはこれまでいろいろ読んだこともあったから、前に読んだ『プロレスが死んだ日。』同様に、ヒクソンのことのほうが面白いと思わされた、改めて今んなってあのときのことを物語にされると。
著者はヒクソンに対して2日間延7時間のインタビューを敢行、ヒクソンは20年経ったけど、榊原に初めて会ったときのことをよくおぼえていたという、いいねえ、そういうの。
あと、ヒクソンはVTJで日本で試合したことがあるんだけど、そのときの周囲の反応から、
>日本の観客が他の国の観客と違っていることを知った。(p.160)
ってことらしいんだが、そういうのもよかったとこだ。VTJに行くのを一族のプロデューサー的なホリオンが反対して、以来関係が決裂、ヒクソンは肉親でもビジネスに関しては信用しないんで、いろんな交渉・契約事には慎重というかシビアになったとか。
ヒクソンの話のなかでは、観衆の前でのデビュー戦となったズールとの試合(これは伝説的だよね、1980年、ヒクソン20歳のとき)について語ってるとこも興味深い。
結果としては2ラウンドでヒクソンが勝つんだが、実は1ラウンド終了時点でヒクソンは「もうやりたくない」と弱音を吐いてたんだそうで。
>「なぜわたしはズールに勝てないと思ったのか。自分の疲れだけにフォーカスしてしまい、相手が見えていなかったからだった。自分が作り上げた恐怖で、自分をダメにしそうになっていたんだ。この試合は、いまでも人生で一番大切なことを教えてくれた試合だったと思ってる」(p.214)
という言葉は重い。だから、その後は精神面のコントロールを重視して、心の鍛錬も極めてくようになった。
対する高田は、スケジュールの調整過程で一度ヒクソン戦はあきらめたりとかってこともあったし、何を練習しても不安だらけで、やりたくない気持ちでリングに上がってしまったんだから、その差は歴然。
ヒクソンは高田に勝った瞬間、セコンド陣などが大喜びしてるのに、笑って喜んだりはしなかったという。
>(略)勝ったのはもちろん嬉しかったけど、歓喜するほどではなかった。なぜならば、明日もまた試合があるかもしれない。ここで歓喜することで生まれるスキが、明日のパフォーマンスに影響するかもしれない。そのせいで命を落とすかもしれない。(p.243-244)
ってのは20年後になって語ったことだから創られてるかもしれないけど、それにしたってカッコいい。残心ってやつですか。
あと、この本のもうひとりの重要人物っつーか、おもしろい存在は、安生。
道場破りに行って返り討ちにあったのは周知のことだが、そのときマスコミ・ファン向けのあおりとして「ヒットマン」と称して出向いてったんだが、これが間違いの始まりで。
平和な日本と違って、ブラジルでは路上で命にかかわる暴力沙汰も起こりうるから、そんなこと名乗ってったら本気で殺意があるんぢゃないかってぐらいの過剰反応を引き起こしていた、ヒクソンも最初からヤル気になっていたと。
そこでヒクソンにボコボコにされてしまったのは、もう済んだことだからいいんだけど、本書のストーリーのなかでは、安生の魂はその日に死んでしまったと、すべてが終わってしまったと。
で、高田・ヒクソン戦のあと、高田が会場を引き上げるときに、詰めかけた報道陣に聞かれる前に、安生は高田に歩み寄って、
>高田さん、終わりって言わないでください。これが始まりだって言ってください。(p.251)
と言ったと。安生にしか言えない、安生以外だったら高田には届かないような言葉。
ここんとこがクライマックスだね、だって、そのアドバイスを受けなかったら、終わったって高田が言っちゃって、その後のPRIDEシリーズは無かったかもしれないんだから。
さっすが、名プロデューサー、比類なき名参謀の安生の面目躍如ってとこか。
ちなみに、どうでもいいってばいいんだけど、本書の扉の次のページんとこに、キャプテンハーロックのキャラの画があって、最初見たとき意味がわかんなかったんだが、本文中にあるように、このヤッタラン副長というのが安生にそっくりだってことらしい。そういや「Thanks for AJ......」って画の下に書いてあった。
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オーブランの少女

2018-06-03 18:12:23 | 読んだ本
深緑野分 2016年 創元推理文庫版
これは、穂村弘さんの『きっとあの人は眠っているんだよ』で採りあげられてて、興味もって、読んでみた。
ちなみに、穂村さんの好きなのは、「解かれる謎の背後にもうひとつの解けない謎をもったミステリー」だそうだ。
古いものかと思ったら、全然新しいものだったようで、ふつうに書店の文庫売り場に並んでた。
長編かと勝手に決めつけてたんだけど、目次みたら短編集だった、長くないものだと身構えずに読むことができる。
(長いと途中で放り出して忘れてしまうことのないよう、コンスタントに書を開くスケジュールがなんとなくほしくなる。)
「オーブランの少女」
文庫のトビラめくったとこに「LES FILLIES DANS LE JARDIN AUBLANC」なんてあるから、一瞬翻訳かと思ってしまう。
オーブランってのはどこかわかんないけど(たぶん上の欧題からフランスあたりと想定して取り掛かった)、庭園の名前。
最初に惨劇の発生について書かれて、あとから手記で過去ふりかえってく形式の話。
オーブランの地には、館主マダム・キャロと二人の女性教師と女医と、病が完治するまで家族のもとに帰れない十数名の少女たちがいる。
少女たちはほとんどが10歳より下で、なぜか花の名前で呼ばれている、マルグリット、ミュゲ、イリス、ダンディリオン、カメリア、ミオゾティスなどなど。
それで同じ白いワンピースを着せられて、左手首に色違いのリボンを結ばされる、赤と青と黄と紫、誰がどの色なのかその理由はよくわからないが、外してはいけないと館主から言われる。
「仮面」
雪の降るロンドン、まだ馬車が使われている時代の話、夜中にアトキンソン医師は、キャバレー「ルナール・ブルー」の女主人を往診する。
実は訪問の目的は、薬物の誤った使用を装って、夫人の殺害を依頼されたのに応えるためだったので穏やかではない。
「大雨とトマト」
これも舞台はどこか外国、嵐の日曜日の昼の古い安食堂には、いつもの安いランチを食べてる常連の客がひとりだけだった。
そこへ雨にぬれた少女が入ってきて、トマトのサラダをくださいと言うんで、メニューにはないけど店主はつくってやる。
こんな雨の日にめずらしい客なんだけど、どこかで見たような顔なんで、店主が問うと、隣町から来たと少女は答える。
「片想い」
舞台は戦前の日本、高等女学校に通う寄宿生、同室の水野環さんと「わたし」岩本薫子の話。
環さんは顔もかわいくて成績優秀で性格はまじめ、まわりの女生徒たちからも人気があるが、長野の資産家である実家とは何かトラブルがあるらしい。
「氷の皇国」
これの舞台は架空の国、大陸を流れるラズラト河のちかくにあるユヌースク。
ある漁村で網に首の斬られた死体がかかったことから、漁師たちは酒場で大騒ぎで評定をするが、居合わせた吟遊詩人が、ユヌースクの最後の皇帝にまつわる話をはじめる。
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一行怪談

2018-06-02 19:14:58 | 読んだ本
吉田悠軌 2017年 PHP文芸文庫版
以前、穂村弘の何かで(いま調べたら『鳥肌が』だった)とりあげられてたんで、気になって探してたんだけど、つい最近になって中古の文庫をみつけた。
見たら、文庫の巻末解説は穂村さんだった、ほんとに好きなんだねえ。
一行ってのは、たとえであって、二、三行になってるものもあり、よーするに「文章に句点は一つ」というのが定義らしい。
「詩ではなく物語である」ってのも宣言されてることだが、文庫とはいえ1ページに1物語というのは大胆な構成だ。
コラムものなんかでもよく感じることだが、こういうのって、本になってまとめて読んでみるってのは、けっこう味消しなとこがある。
雑誌とかに毎号1個だけ載ってるとかいうんだったら面白みあるかもしれないけど、それだけを並べられちゃうと、なんかねえ。
まあ、そんな私のわがままはともかく、たくさんあると、やっぱ好き嫌いのわかれるものがあるなあって感じがする。
>ばったり出くわした旧友の腕に絡みつく女の、美しい容姿を褒めたところ、そんな風に見えるならお前が連れて帰ってくれと、すがりつくように懇願されてしまった。(p.38)
これなんかはオーソドックスな怪談って感じ、現代風の怪談ですね。
都市伝説調なのも怖くていい。
>百人以上が亡くなった航空機墜落事故の死者名簿を調べると、必ず一人、同じ名前の男が載っているそうだ。(p.104)
とかね。こういうのは他人につい言いたくなる。
>集落を焼きつくした山火事を年に一度再現するという秋祭りの当日、何も知らないカップルが山間の村へと迷い込んだ。(p.129)
みたいなのもいいと思う。悲劇を予感っつーより確信させるとこがなんとも。
穂村弘さんは、自分以外の周囲はすべて自分とは異なる何かだった、みたいなシチュエーションの物語が好きらしいんだけど、私は、どっちかっていうと、わけわかんないやつが好みのようだ、一回読んだけのところでは。
>どうして今日の昼間いきなり帰宅し、またすぐ出ていったのか、と質問したとたん、夫は青ざめた顔で玄関から飛び出し、そのまま行方不明となった。(p.26)
みたいな。それほど大がかりな舞台装置はないんだけど、フツーぢゃなくて、どだい常識で説明はムリって感じ。
>もし少しでも海の腐った臭いがするようでしたら、別のタクシーを拾ってもらうのがお客さんのためですよ。(p.191)
とか、
>寝る時に必ず、洗濯機を回し続けることだけは忘れないよう願いますが、それさえ守ればたいへんお得な物件だと思いますよ。(p.169)
とかってのも怖さのツボにくる。
なんで、なにが、どうなるのって説明しないとこがいいわけで、言いおおせて何かあるってやつだ、みなまで言うな、ってね。
比べると、次のようなやつはおもしろくない。
>冷蔵庫が開いたままだと注意すると、妻はうんざりした顔で扉を閉め、次の瞬間、庫内から激しいノックの音が響いた。(p.172)
って洗濯機のやつと比べると、出来がよくないと思う。
もちろん現実にそういう事象に直面しちゃったら、冷蔵庫のなかから音がするほうが怖いんだろうけど、そこんとこまで文字にして読ませちゃうと、おいおい、あるわけねーだろ、そんなこと、って言いたくなっちゃうから、理由を説明しない洗濯機のほうが怖い。
同様に、読んでると、これはやりすぎ、それってネタだろ、って感じのもいくつかある。
>これより先は全ての駅が通過となります、との車内放送が流れ、もう二度と山手線から降りられない。(p.107)
とかね、こんなことあったらこわい、って言いたいのはわかるけど、無い無いってすぐ結論でちゃう。
>産まれおちた我が子に触れようとした瞬間、背後の看護婦から、その子が亡くなる年月日をそっと耳打ちされた。(p.24)
なんてのも、飛躍しすぎてて笑ってしまう。やっぱ、全部まで言わないやつのほうが私の好みだ。
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