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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

五人目のブルネット

2018-06-17 18:02:18 | 読んだ本
E・S・ガードナー/峯岸久訳 昭和53年 ハヤカワ・ミステリ文庫版
こないだ、また出張の移動中のひまつぶしに読み返した、ペリイ・メイスンシリーズ、1946年の作品。
原題は「THE CASE OF THE BORROWED BRUNETTE」、五人目ぢゃなくて、借りられてきたっていうんだけど、読み始めるとすぐ意味わかる。
メイスンと秘書のデラが車で通りを走ってると、角ごとに同じような装いをしたブルネットの女性が何人もいるのに気づく。
好奇心の強いメイスンのことだから、車を降りてそのなかのひとりに話しかけてみると、新聞の求人広告に応募したんだという。
その広告には、資格としてブルネットで、年齢は23から25、その他身長、体重、スリーサイズまできっちり決められてて、最低5日から最長6カ月までの1日50ドルの報酬の仕事ってあって、応募したら、時間と場所と着るものを指定して、ここで立ってろということになったと。
うーん、ホームズの赤毛連盟ですね、ミステリだからあたりまえだけど、あやしさいっぱい。
で、メイスンの話しかけたコーラって娘は落選しちゃったんだけど、彼女の親友のエヴァって女性が見事選ばれて仕事にありつくことになる。
するとエヴァの付添いとして一緒に仕事とやらに参加したアデルおばさんというひとが、メイスンのとこにやってきて、これは犯罪がらみに決まってるという。
なんでも、アパートの一室をあてがわれて、そこでヘレンって名前で生活して、友だちとかと連絡とったりしちゃいけないっていうのが、日当の払われる仕事のなかみだけど、それはヘレンって女がすでに殺されてて、その身代わりを演じさせられてんだと、自分の推理を披露する。
アデルおばさんは、コーラに相談されたんだけど、弁護士なんかに金は払わないよって前置きして、一方的に言ってきただけだけど、そのあとコーラからエヴァが法に触れていないか心配だと相談されて、メイスンは調査を引き受ける。
あやしいけど、行動の方針をこうすれば犯罪に関わることはないってメイスンがアドバイスする矢先に、エヴァとアデルおばさんが死体を見っけちゃう。
おもしろいのは、メイスンが「いままで死体が発見されたとき、あんまり現場へ顔を出しすぎたよ」って自らのことを認めて、すぐ現場に行かないで警察に処置させたとこ。
とはいうものの、探偵のドレイクに指示して、事件について徹底的に調べさせるんだけど、ちゃんと弁護料をもらっての依頼がないのに首を突っ込みすぎなとこを、ドレイクからは「いったいこの事件じゃ誰が依頼人なんだい」と訊かれちゃう。
メイスンは「はっきりしちゃいないね」って認めつつも、「だが本当のところは、一部ではぼく自身が依頼人なんだと思うね。何が起こっているのか知りたいという素朴な好奇心があるのさ」と自身の謎解き願望を堂々と明かすんだが。
かくして、凶器が出てきたり、被害者から取ったと思われるカネが出てきたりで、エヴァとアデルおばさんが逮捕されちゃう。
このアデルおばさんというひとが、もと看護婦らしいんだけど、やっかいな人物で、物語の最初でコーラが、自己流の生き方で世を渡ってって、何かあると上手にウソをつきまくって切り抜けちゃうと評している。
だから自分でも、メイスンが弁護士として面会に行ったのに、「事実なんてものは何の意味もありゃしませんよ。多くの場合そうですが、本当の話というのはあまり人を納得させるようなものじゃありません。でも、わたしは話をこしらえ上げるのはなかなかうまいんですよ」なんて、とんでもないことを言う。
すでに供述書をとられちゃってるのに、今からでも話を変えるなんて言ってるようなひとを、弁護しきれるものかねと心配になるんだが、いつもどおり圧倒的不利な状況にみえるなかで、裁判は始まる。
この話では、法廷での相手はいつものバーガー検事とかぢゃなくて、ハリイ・ガリングという検事補。
ガリングについては、メイスンも、地方検事局の方針を決定するような法律に詳しい鋭い頭脳だと認めるんだが、こと裁判になれば「やつの頭はあまりにも数学的で世の中のことから離れすぎているし、また人間性というものに対する理解も充分じゃなんだ」と評価は別だという。
かくして、両者とも異議申し立てしすぎって裁判長から注意されるような応酬で尋問が進み、検察側は容疑者を隠そうとしたかどでメイスンまでつかまえてやろうという意気込みで攻撃してくるんだが、もちろん最後はメイスンが勝つ。
コメント
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