many books 参考文献

好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

百億萬円

2019-01-13 18:19:51 | マンガ
唐沢なをき 1992年 扶桑社エクセレント・コミックス
これは、こないだ12月に地元の古本ワゴンセールで見つけたマンガ。
べつに探してたというわけぢゃなく、まったく知らないものだったんだけど、こういうのはここであったが百年目なんで即買うことにした。
「唐沢なをき最新傑作集」ってなってるけど、巻末の初出一覧をみると、だいたい1986年から91年くらいに描かれたもの。
それも著者あとがきにいわく、「なにしろ描き散らし放題だったんで」という状態のを集めたらしい。
唐沢商会の活動ばかりぢゃなくて、なをき個人のマンガも忘れてもらっちゃ困るということで、編んだそうな。
四コマ1ページだけってのもあるし、長くても10ページくらいのギャグマンガいろいろ。
けど私はこういうギャグマンガ、好きだな。
一読してのお気に入りは、「血煙狂四郎無頼剣」、なぜかタイトルの下に「このマンガは企画ページではありません」って入ってる。
最初のページで主人公の侍と悪漢数名を出して時代劇ものかと思わせておいて、2ページめに行くと、主人公はやおら
>その前に一人暮らしの朝食にとっても簡単でおいしい
>「大根とほうれん草のスパイス炒め」を紹介してやろう
とレシピを語りはじめて、フライパンを振るう。なにがおかしいと訊かれても困るが、爆笑してしまった。
「刑事なひとびと」もばかばかしく面白い。
最初4ページも延々とひとりの登場人物がヒンズースクワットをする、92コマも。
で、あとは翌日刑事の仕事の現場で、身体を動かそうとすると筋肉痛で苦しむってだけのことなんだけど、それがムチャクチャおかしい。
コンテンツは以下のとおり。
・目隠し平次捕物帳
・怪しきココロ
・アタックが一番!二人羽織編
・アタックが一番!戦場編
・それゆけ栄光
・恐怖のマヨネーズ女
・刑事な人々
・リクルート事件風刺漫画
・正月漫画
・神の味噌汁
・血煙狂四郎無頼剣
・旗本窒息男
・私的抑圧(プライベートプレッシャー)
・明日はデートだ!
・フェイスハガーアイちゃん
・ホラーくん変身のまき
・赤○○○の女の子
・コカインでGO!
・労働は尊い
・虫喰いミッちゃん
・Let's Go 由佳里ちゃん
・ももんがあの人々
・オクトマン!
・怪奇は踊る
・愛しののーずい
・課長はロボット
・漫画4WDと人類の存亡
・SF大宇宙大銀河大決戦
・SF戦争の猫たち
・SF無重力の使命
・妖怪へそまたぎ
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延長戦に入りました

2019-01-12 16:04:59 | 読んだ本
奥田英朗 平成15年 幻冬舎文庫版
もうひとつ、スポーツのエッセイ、前に読んだ『どちらとも言えません』がおもしろかったので、期待して買ってみた古本の文庫。
これまた著者あとがきにいわく、「要するに茶々をいれているのである」というスタンスで、まじめなスポーツ談義ではない。
でも、著者のスポーツへの視線がいいんだ、そこがおもしろい。
走り高跳びのベリーロールと背面跳びを比べて、背面跳びは実用性がないので許せないというとか。
2メートルの壁を飛び越えて、仲間のために助けを呼んできてほしい場面で、2メートル40センチ飛べる背面跳びのアスリートは、きっと言う。
>「下はコンクリートじゃないですか。クッションがなければ跳べませんよ」
>こんなひ弱な野郎が表彰台に並んでいいわけがない、と思いませんか?(p.174「ハイジャンプと着地という現実」)
と、きたもんだ、飛べばいいって部門とスタイルを分けて競技種目を設定しろって。
スキーの複合競技にもひと言あって、近代五種なんかに比べたら、ジャンプと距離だけでは、
>2種目で「万能」を名乗るにはやや説得力に欠けるのだ。
>よって、ついでに《フィギュア・スケート》をする。(p.179「万能選手の尊敬と複合競技の醍醐味」)
という提案をする。
そこまではいいのだが、さらに万能を求めて、「空手」と「数学」も加えるべし、
>飛んで、走って、踊って、戦って、知力をしぼる。これぞ人間の理想の姿。(p.180同)
と言う、笑った。
おもしろがってばかりいると、ときどきピシッと鋭いとこもあって油断ならない。
韓国の日本への対抗意識は理屈ぢゃない感情なんだろうけど、日本人も、
>日本人は「白人社会で通用する日本人」が見たいのである。(p.167「野茂の大リーグ挑戦と日本人のナショナル・パスタイム」)
っていう心境になるのが避けられないんで、オリンピックとか、野球やサッカーの選手が外国に移籍すると大騒ぎしちゃうんだというが、正しいだろう。
そこを、へんに批評するんぢゃなくて、ナショナル・パスタイム=国民的ひまつぶしなんだから、しょーがない、みたいな距離感でいるところがいい。
もうひとつ、スポーツ選手が泣くのが嫌いだというスタンスには、共感できる。
>しかし、それでも私は泣くスポーツ選手というものがあまり好きではない。
>だいいち美しくない。(略)
>それに日本人の涙好きは、他人の涙に感動するというより安心したいからだと私には思える。(p.91「スポーツ選手の涙と大衆の期待」)
って、そうそう、って思う。
特に、高校野球の最後のバッターがアウトなのに一塁ヘッドスライディングして、そのまま泣き崩れてるようなのを、自己陶酔だと批判するのは、いいねえ。
>酔ってるなあコイツ、と私は思ってしまう。(略)
>高校野球の記者はハッキリと「泣かなきゃ記事になんねーよ」と言っているくらいである。(略)
>まあ、これが子供なら許せるが、大人のそれもプロがやるとなると私は絶対に許せない。(p.93-94同)
というのは、よくぞ言ってくれたって感じである。
世の中、感動乞食の勢力が増えてて、特に既存のマスコミにはそういう傾向が強いんで、見てて気持ちわるいものが多い、最近。
駅伝の生中継なんて、これアクシデントを期待してるだろってくらいの、水面下の悪意が伝わってくるんで、私は見ないようになった。
気のせいかな、いや、確実にあるよ、ハプニングをライブでレポートしてえなあって感じの底意地のわるさ。
ま、いっか、そーゆーの見たいひともいるんだろ、きっと。
どうでもいいけど、著者は文中でときどき「おぼこい」っていう形容詞を使うんで、あれって思ったら、岐阜県立岐山高校の出身なんだそうである。
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アメリカは今日もステロイドを打つ USAスポーツ狂騒曲

2019-01-06 17:48:39 | 読んだ本
町山智浩 2012年 集英社文庫版
映画評論家の町山さんが、スポーツから見えてくるアメリカについて書いたエッセイを集めたもの。
おもしろそうなんで、去年の11月だったかな、古本買って、最近読んだ。
初出は「Sportiva」っていう雑誌で、単行本刊行は2009年だそうだ。
内容は、だいたい2005年から2009年くらいにかけてのものが中心といえよう。
一編あたりの長さは文庫で4ページくらいだから、わりと短いけど、なかみはけっこう、おーそんなことがって思えるものいっぱい。
特にやっぱ、こういうのは映画になってるとかって専門分野につなげられると、なんか観てもいないうちから、ムダ知識増えてトクしたような気にさせられる。
知らなかった意外なこともいっぱい、たとえば、フィラデルフィア・フィリーズは2007年7月15日の試合に負けて、「プロスポーツ史上初めて“1万試合負けたチーム”になった」(p.132「いっそ一度も優勝しなければよかったのに」)とか、その時点で、通算8810勝10000敗で、メジャーリーグの最多敗戦チームだって。
ちなみに2位がアトランタ・ブレーブスだっていうんだけど、私の知ってるブレーブスったら、マダックスとかグラビン、スモルツのいた強いイメージだったので、弱かったなんて思わなかった。
ひどかったブレーブスについては、前に読んだ『情報狂時代』のなかでも、70年代は史上最低のチームだったって書かれたんで、はからずも最近になって同時に知ったんだけど。
弱いだけぢゃなくて、むちゃくちゃなイベントを決行してて、試合前に有名人たちをラクダやダチョウに乗せて競走させたりとか、試合後に「ウェットTシャツの夕べ」っていう女性に水をぶっかけたうえでのコンテストをやったりとか、人気回復に結びつかない、しょうもないことしてたらしい。
本書にもどって、あまり私は興味ないバスケットボールについても、
>ダンクシュートそのものは昔から存在したが、相手チームを侮辱する行為とされ、NCAAでは反則、NBAでも使う者はいなかった。それをプロのテクニックとして完成させたのがABAのジュリアス・アービングだった。(p.173ダンクシュートは反則だった?)
なんてのは、古くて新しい情報で、ABAってのは1967年から76年までの9年間実在したプロリーグだってのも知らなかった。
もちろん、スポーツそのものだけぢゃなくて、アメリカ社会について解説してくれてることいっぱいあって、あいかわらず勉強になる。
いろいろあるけど、プロスポーツの白人支配について、フットボールを例に、「NFL選手の65%が黒人なのに、ゼネラルマネージャーに黒人はたった5%。チームオーナーはひとりも黒人がいない。」(p.198「4千万ドルもらっても奴隷は奴隷だ」)なんてのは、問題が奥深いものありそう。
スポーツでの華やかな活躍は、肉体的には優秀だけど頭脳はどうかなって偏見を助長して、黒人がほかの分野でもリーダーになることの妨げにつながってんぢゃないかと。
あー、でも、『虚構新聞』とか読んだ直後にこのての読んだりしたら、
>2005年8月初め、NCAA(全米大学体育協会)が、アメリカ先住民(かつてインディアンと呼ばれていた)のイメージをフットボールのチーム名に使ている18の大学に対して「公式戦ではチーム名およびマスコットを使わないように」と通達した。(p.179インディアンは「アワワワワ」なんて言わない)
なんてのは、冗談のニュースなのか現実なのか一瞬わかんないような感じになっちゃって、困った。
章立ては次のとおり。第2章のDaredevilsって単語は知らなかったんだけど、スタントマンを指すらしい。
第1章 強さこそはすべて All You Need Is To Be Strong
第2章 悪魔に挑む男たち Daredevils
第3章 スポーツ犯科帳 Sports Crime File
第4章 私を観戦に連れてって Take Me Out To The Ball Game
第5章 アメリカンスポーツの殿堂 Only In America
第6章 多民族国家のバトルロイヤル Racism In Sports
第7章 敗れざる者たち The Undefeateds
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虚構新聞 全国版

2019-01-05 18:13:07 | 読んだ本
虚構新聞社UK 2017年 ジーウォーク
去年の11月に買いものの合間にリサイクル書店で見つけて、え、本があるんだ、って驚いた拍子で買ってしまった。
発行日付見たら2017年5月でわりと最近だけど、あれだよなー、あの虚構新聞だよな、おもしろくてサイト見てたの昔のことと思ってたんだが。
探したら、まだちゃんとあった、http://kyoko-np.net/index.html
「バウムクーヘン天日干し」なんて懐かしい記事もあるけど、そうかあ、それって2005年のことだったか、やっぱ昔だ。
本は、べつに特別の手ぇ加えてあるわけでもなさそうで、サイトの記事そのまんまとみえる。
アタマっから新しい時代のほうから並んでるのは、ちょっと意外だったが。
なにがおもしろいかって聞かれても困るが、好きなんだよね、こういう冗談、私。
“紫式部の「裏日記」発見 清少納言への呪詛つづる”
“「ナマズ味のウナギ」開発に成功 千葉電波大”
“フルカラー、実は白黒でした シマウマ写真集回収へ”
とかってナンセンス、こういうノリがたまらない。
“児童養護施設にタイガーマスクの贈り物 群馬”って記事では、
>ダンボールの中には、タイガーマスク100枚(40万円相当)が入っていた。同封のカードには「今タイガーマスクが養護施設で流行っているようなので贈ります。(略)
とか書いてあって、このての大ボケぶりのやつに出くわすと、読んでて吹いちゃう。
ただ単にばかばかしいだけぢゃなくて、手の込んだ書き方してあるのも楽しい。
>「STAP細胞を信じる会」の発起人を務めるのは、代替医療を専門とする江本章博士(波動学)。(略)自身のブログで「小保方氏は巨大な陰謀の被害者」として支持を表明したところ、ホメオパシー医学や動物磁気学の専門家からも続々と支持の声が集まった。(p.109)
とか、妙におかしい、「(波動学)」がとてもいい味を出してる。
“内閣直轄のエリート大学、京都に 学費無料”って2015年の記事でも、授業料を国費でまかない、修了後は官公庁への就職をあっせんする大学なんだけど、法学部、経済学部、理学部をつくる理由について、官房長官の言葉として、
>現在政治課題となっている憲法、景気、原子力の3分野において、参考人招致の場で的確な意見を述べられる専門家を、内閣の責任のもとで養成することが国家の急務であると考える(p.89)
とかって大マジメっぽく皮肉ってる、こういうのは上手だなあって思う。
ところで、虚構新聞は、ぜんぶフィクションだって宣言して書かれてるんだけど、たまに現実になってしまい、そういうときは訂正おわび記事が出ることになる。
たとえば、“森永チョコ 144個入り「グロス」発売へ”(2013年)とか、企業がおもしろがってジョークにのってきちゃうと、フェイクニュースから現実が生れてきちゃう。
そういうのは遊びだからいいとして、アブナイのは政治のほうだ。
>厚生労働省は制度改革の具体案として、国民年金・厚生年金の支給開始年齢を、現行の65歳から130歳に引き上げることを提言した(p.180)
なんて2011年の記事はだいじょうぶそうだけど、2013年11月の
>来年4月から始まる消費増税8%に伴い、政府・与党が増税分の還元策として商品購入時の金額に応じて一定の「国民ポイント」を付与する「国民ポイントカード(仮)」の導入を検討していることがわかった(p.119)
なんてのは、ことし10月に税率10%になるときに、詳細は異なるけど大筋では現実化してしまうのではないかと心配になる。
まあ、もっとも、この記事のほうは、国民ポイントは現金化はできなくて、歴代首相の似顔絵入り湯飲みみたいな景品に替えられる、ってセンスのいいシャレに終始してるのが救いでいいんだけどね。
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