みなさん、こんにちは。
稼プロ!19期生の森(宏)です。
さて、最後のブログではありますが、先日プレゼンでは全くお伝え出来なかった(苦笑)、現象学について改めて紹介したいと思います。
「現象学」は、オーストリアの哲学者エトムント・フッサールが提唱した学問(哲学)です。興味を持ったきっかけは、笠井潔さんのミステリ小説「矢吹駆シリーズ」です。小説では、主人公が「現象学」の中心概念である「本質直観」によって事件の構造を解き明かします。京極夏彦氏の京極堂シリーズのような蘊蓄好きな人にはお勧め。また「ダヴィンチ・コード」なんかにも通じるものがあるような気がします。
現象学は人の「客観」認識の構造をはじめてきちんと説明した、とも言われます。
人は結局「主観」でしか事物を捉えられないのだから、「客観」を正しく言い当てることはできない。これは原理的に正しいはず。それでも、人は普段は「客観的なもの」の存在を疑わないですし、「共通認識」などというものを前提に社会生活を営んでいます。
客観は主観による解釈に過ぎないにも関わらず、人があたかも共通の客観認識があるかのように振る舞うのはなぜだろうか、という疑問が生じるわけですね。
そこで、現象学では、客観の存在をまず棚に上げます(括弧「」に入れる、または現象学用語では「エポケー」といいます)。
そうすると問題はあくまで主観の中でどうやって客観的なものが確信されるのか、ということに絞られます。
たとえば、目の前のリンゴを見て(それはあくまで自分の主観で構成されたリンゴを見て)、「これはリンゴだ」と思ったとします。その時なぜそう思ったのか、を考えます。すると①赤い、②丸い、③つるつるしている、などそう思った理由があるわけです。逆に言うと①~③の要素を持った対象をリンゴと認識するというわけです。ここで重要なのは、これらの要素(①~③)は、私の恣意的なものではない、ということです。仮にリンゴを「四角い」と言い換えてみたらどうでしょうか?それこそ恣意的ですよね。「リンゴが丸い」という概念は私の恣意で変えられるものではなくて、これまでに経験や学習してきたことによって、自分の中に疑う必要のない概念として存在しているということなんです。そして、それは決して正しい概念とは限りません。なぜなら客観と一致することはどこまで行っても保証されないからです。
ちなみに、「本質直観」というのは、このリンゴを見て①~③のようなリンゴの概念(本質)を直観(観取)することを言います。
このように現象学では、主観の中に客観を確信させる構造があるのだということを明らかにしました。しかしそれが目的なのではありません。それを明らかにすることで、いかに私達の物を見る視点、価値観、確信が憶測を元に形成されているのかということを知ることに繋がります。つまり本質直感には、一つは自分の考えの根拠を知ること、もう一つはそれが本当に正しいのかということを自分自身に問い直す、というところに意味があるのです。
今、世の中さまざまな対立があります。それぞれに正しいと思っている根拠があるわけで、自分たちだけが正しい、と思わないで、それを擦り合わせて共通理解を作っていくことが大事なのではないでしょうか。
こうした現象学の考えをビジネスに対して使うならどうだろうか、と思っていたら、まさに「本質直観のすすめ」という本を書かれている経営学者の方がいらっしゃいました。プレゼンではこの本もヒントにビジネスに生かす話をするつもりでしたが、ブログでは長くなるので、興味を持たれた方は是非読んでみてください。
ということで、一年間ありがとうございました。
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今回は私がコメントしてみることにします。
私は哲学科卒ですし、西洋哲学をやろうと思って進学したのですが、研究室選択では西洋哲学を選べませんでした。その頃の西洋哲学主任教授は現象学の滝浦先生でしたが、難し過ぎて。
数年前にある哲学好きの方が、「西洋哲学は、結局、プラトンの言ったことを角度を変えて言い換え続けてるんだよ」と語られてました。私も同意見です。
これからもよろしくお願いします。
「本質直観」の「直観」を「直感ではない」ということを強く意識して、森さんブログを読むと、「本質直観」が分かってくるような気がしました。
「それぞれに正しいと思っている根拠があるわけで、自分たちだけが正しい、と思わないで、」のあたりは「正義の定義」にもつながりそうです。
一年間コメントありがとうございました。
今後ともよろしくお願いします!
毎回コメントいただき、ありがとうございました。
欠かさずコメントする実践力と深い見識に敬意を表します。
現象学は、野中先生のSECIモデルのベースとなる理論の1つと講義で伺いましたが、読破できてないものでした。
また、ご紹介頂いた「本質直感のすすめ」も読んでみたいと思います。
1年間ありがとうございました。
概念はわかるのですが、
それをどうビジネスに応用できるのかは
まだイメージできていないので、
本を最後まで読んでみたいと思います。
1年間ありがとうございました。
本質直観について討論できる日を楽しみに、
また、よろしくお願いします。
また、いつもコメントありがとうございます。もうすぐ子供が夏休みで再びがっつり向き合う時間にやってきます。徒歩圏内になる図書館(小規模)も再開したので、さっそく探して借りて読んでみます。
20期の稼プロ!、お気軽に声をかけてください。これからもよろしくお願いします。
コメントありがとうございます。
哲学科の太田さんの前でお恥ずかしいのですが、現象学は専ら竹田 青嗣先生の本などを読んでます。その限りで西洋哲学を見ると、確かに「人間の本質」とかという部分は言い換えだと思います。ただ、国家とか社会構造との関わりの部分では進化しているのかなと素人的には思います。
コメントありがとうございます。
「SECIモデルのベースとなる理論の1つ」、そうなんですね。知りませんでした。勉強してみます。
お勧めした著書の方は、あくまで経営分野の書籍なので現象学については微妙です。フッサールそのものを読むのはまず無理なので、竹田 青嗣先生の「現象学入門」が一番良いと思います。
一年間ありがとうございました。
「正義の定義」、そうなんです。理想を否定するわけではないですが、それが最善の正義であるとは限らないところに難しさがあると思っています。
森さんは、本当に勉強家ですね。この1年間、教わることがたくさんありました。ありがとうございました。また、稼プロ!にお立ちよりくださいね。卒塾式でも素敵なスピーチをありがとうございました。
一年間ありがとうございました。
図書館、徒歩圏内は重要ですよね。
今、板橋中央図書館が近くに移転建設中で、竣工は来春ですが、楽しみにしています。
はい、未履修の講義、お邪魔させていただきたいと思います。よろしくお願いします。