岐阜県土岐市に旨いうどんを喰わせる店があると知って車を走らせた。スマホの地図で名前を検索して目的地まで向かう。表示した場所までたどり着いたが店らしきものは無く、陶器の工場と住宅があるのみ。車を降りて近くに寄ってみると壁に地図がぶら下げてあった。ただその地図を見ても現在位置と方角がよく分からず、結局大きな通りまで出て検索し直し、ようやくたどり着いたのは、大きな通りからは外れた住宅地の中の狭い路地の奥にある一軒家。暖簾がかかっていたのですぐに分かったが、そうと知らなければ通り過ぎてしまうようなごく普通の民家。脇に車を停めて外に出ると、宅の周りに様々な陶器が置いてあり、値札が付いていたので売り物のよう。そう、ここは隣の多治見市と瑞浪市を含めて一帯が美濃焼で有名な土地。後から分かったが、陶器工場の主人が趣味で始めた店なのだそうだ。
暖簾をくぐり、中に入ると座敷の広間に入れ込みの卓袱台が並んでいる。ちょうど店を開けたばかりの口開けだったようで先客は無い。でも普通だったらここに店があるかどうかも分からないような場所だから、客が来るだけですごい事(しかも人気のようです)。店の中は押入れが棚になっていたりして、こちらでも美濃焼の数々が並べて売られていた。もちろん厨房はお勝手(キッチン)のある場所。古い家のようで、土間のお勝手場には薪をくべて使うかまどがあるのが見える。卓のひとつに胡坐をかいて座り、気さくな奥様に「ころうどんセット」を注文した。
しばらくして盆にのったころうどん(東海地方では冷たいつゆのかかったうどんを「ころ」と呼びます)、自然薯がかけられたご飯、生卵、レンゲにのった大根おろし、煮しめた昆布、それに富士山型のおろし器と本山葵が一本運ばれた。大きめの丼ぶりに入った艶々のうどんは細切り。上からは刻み葱だけかけられ、冷たいつゆがかけられているいわゆるぶっかけスタイル。まずはそのままうどんを手繰る。しっかりとしたコシがあるプリプリの麺。締められていることもあってつるんと入っていく。そして次は山葵を自分で擦って、少々うどんに絡ませながらいただく。擦りたての鮮烈な香りと爽やかな辛さが相まって、旨い。使いまわす訳にはいかないから1本全部使っていいんだろうけど、ちゃんと「合う」のかなと心配になるくらい贅沢。奥様によると届いたばかりの山葵は安曇野産で、今回のは少し小さいんだとか。「すいません」なんて言われたけど、いえいえ、たった一人前に充分な大きさですよ! 次は大根おろしをのせて、また一口。食べ進んだら卵の黄身だけを丼ぶりに投入して少しつぶし、また一口。旨いうどんがいろいろな表情を見せてくれて楽しい。自然薯のかかったご飯は少なめだが、とろみも風味も強い自然薯の味がよく分かる。徳利に入ったつゆがあるので少しかけてもいいかも(自分はそのままで食べた)。
趣味の延長だからこそ出来たうどんだろうけれど、この旨いうどんを山葵と自然薯付きでこの値段でって…。無茶な話だが他のうどん屋さんももっと頑張ってよと言いたくなってしまう(笑)。大盛にしなかった事を後悔した。わざわざ遠くまで来たかいがあったというもの。(勘定は¥850)
※カーナビやスマホのマップだと店名を入力しても「イクオ陶苑」(岐阜県土岐市下石町330−2)に誘導されるかもしれません
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手打うどん 郁兵衛 (いくべぇー)
岐阜県土岐市下石町378
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