第33期囲碁名人戦七番勝負の第5局は10月15日から静岡県伊東市で行われ、張栩名人が挑戦者の井山裕太八段に黒番半目勝ちして3連勝、対戦成績を3勝2敗として名人防衛にあと1勝と迫った。第6局は30、31の両日、同県伊豆市で。
厚みを背景にした攻めと捨て石の活用で模様をまとめた名人が、ヨセ勝負でも随所に鋭さをみせ、息詰まる半目勝負を制した。
解説の溝上知親八段は「難解な戦いの連続で、挑戦者が妙手を打った段階では、白が逆転したかと思いました。名人は唯一の勝ち筋を読み切ったのだと思います」と話した。
<張名人の話>
最後の最後で勝ちが見えました。序盤は良さそうでしたが、上辺の攻めはやり損ないました。
<井山挑戦者の話> 右上黒27のアテが厳しかった。ヨセ勝負になりましたが、小ヨセでも後悔の手がありました。
(朝日新聞より抜粋)
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本局は張名人の模様、井山挑戦者の実利と前4局とは逆の展開となりましたが、張名人が挑戦者の追い上げを辛くも半目差で逃げ切りました。終盤では名人の愚痴が出るなど苦戦のあとが見られました。
敗れた井山挑戦者、序盤は劣勢のようでしたが中盤で意表をつく好手を繰り出し、半目勝負。最後は時間に追われ気味で、わずかに届きませんでした。
これで対戦成績は張名人の3勝2敗となり防衛にあと1つとなりましたが、第5局での接戦からして第6局も予断を許さない激しい戦いが予想されます。
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今回の対局地は静岡県伊東市の「わかつき別邸」。過去、囲碁・将棋のタイトルが何度も行われたようです。
和室の床の間には掛け軸がかけられていますが、今回は「濯足萬里流」。第4局の「あたみ石亭」での掛け軸は「松樹千年翠」でした。
(以下、asahi.com「囲碁」欄より抜粋)
◆対局室の掛け軸(わかつき別邸)
対局室の床の間には「濯足萬里流」と書かれた掛け軸が掲げられている。
中国の詩人・左思(さし)の詩の一節で、「足を萬里(ばんり)の流れに濯(あら)う」と読み、「大自然の中に帰して世俗の流れを洗い落とす」という意味。
わかつき別邸によれば、「無心にかえれ」という左思の思いをくみとることができる言葉だといい、「勝負の世界もそれを極めるには『無心』が必要なのでは」と考えて対局室に掲げたそうだ。
◆対局室の掛け軸(あたみ石亭)
対局室の床の間には「松樹千年翠」と書かれた掛け軸がある。
「松樹(しょうじゅ)千年の翠(みどり)」と読み、中国の禅僧・石田法薫(せきでん・ほうくん)の法語に由来する。
石田は弟子たちにこう説いたという。「世間の人々は、牡丹(ぼたん)が豪華な花を開くと、それがたちまちにうつろう一時の美であるのに、その美に魅せられ、大はしゃぎをするが、松の変わらぬ翠の美を理解する人は少ない」。
表面的な現象に心を奪われるのでなく、本質を見つめなさい、という意味が掛け軸の言葉に込められている。
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含蓄のある言葉ですが、難しいですね。
「無心・本質を見る」、そんな気持ちで対局に臨みたいところですが、ザル碁党には勝ち負けの邪念が先立ってしまいます。
「喝!!」