このラジオドキュメンタリーは、2021年3月にRSKラジオで放送されたものです。
ラジオならでのドキュメンタリー制作となっており、文化庁芸術祭賞大賞他を受賞しています。
再放送が繰り返され、昨日午後4時からRSKラジオで何度目かの放送が流れました(ラジコのタイムフリーで聴くことができます)。
その番組に続いて、沢知恵さんの「沢知恵 日曜日の音楽室」がありました。
沢知恵さんは、『塀の中のラジオ』のナレーションを務めています。
『塀の中のラジオ』の企画制作編集をしたのは米澤秀敏ディレクターです。
「沢知恵 日曜日の音楽室」にゲスト出演しました。
実は、この番組の初代ディレクターも務めていました。
このお二人は旧知の仲だったのです。
『塀の中のラジオ』についてです。
タイトルにありますように岡山刑務所のラジオ番組を取材したものです。
岡山刑務所は重い犯罪で服役している人々を収容しています。
半数以上の人は無期刑だそうです。
その刑務所の中で40年前から、刑務所内だけのラジオ番組が流されています。
就寝前のDJ付音楽番組です。
受刑されている方々が曲を応募し制作する放送です。
番組は、この音楽番組の意味や意義について取材を進めていきます。
これはテレビだと実現しない内容です。
もし映像ならモザイクのオンパレードになることでしょう。
音声にモザイクは必要はありません。
取材者が尋ねます。
「どのような罪ですか」
「はい、強盗殺人です」
驚かない聴取者はいないでしょう。
そして、人々はたんたんと贖罪の言葉を話します。
かつては無期刑でも20年程度から仮釈放されることが多かったのですが、厳罰化が進み刑期がもっと長くなっています。
終身刑に近くなっているそうです。
生きる希望を失ってもおかしくない状況です。
精神的に厳しい状況に追い込まれることも多いそうです。
少しは想像できます。
また、所内での老々介護の実態も聞くことができます。
番組取材中の米澤ディレクターは沢さんに「塀の中の人々と私はどう違うのでしょうね」と暗い顔で問わず語ったそうです。
米澤ディレクターはさらに二番底を目指すように深みに迫ります。
それは再び「塀の外」に出ることに希望が持てない終身刑の人々の思いと行動のさらなる探求です。
この人々には塀の外での「更生」を考えることができません。
自己と、所内の限られた人間関係の中にしか「更生」はないのかもしれません。
自らの身体を鍛える、運動会を目指す(すごくよくわかります)。
そして番組を企画し番組を聴く。
作業に没頭する。
作品は岡山市役所で販売することもあります。
私も愛用している作品があります。
人びとの思いが痛いほど伝わってくる番組です。
再度聴くのがつらくなって、昨日やっと聴きました。
この番組はNHKでも放送されました。
米澤ディレクターは、民放人としては悔しいほどの反響だったと。
『塀の中のラジオ~贖罪と更生 岡山刑務所から』、
地理的にはとても近距離です。
心理的には断絶しているとしか言えません。
もっと交流があってよいのではないでしょうか。
今週ならラジコで聴くことができます。
お読みいただきありがとうございました。
※私事ですが所内の方と文通をしていた経験があります。