
トランボは人の名前です。
ハリウッドで最も嫌われた男というタイトルはどうかと思います。
強いていえば、「嫌われるように仕向けられた男」でしょうか。
天才的な脚本家です。
1930年代から活躍するのですが、米国共産党員です。
戦後、対立する国がソ連になったため。反ソ連旋風が吹き荒れます。これが赤狩りです。
戦争中は反日、反独のプロパガンダが徹底して行われましたが、戦後は矛先が代わった(だけな)のです。
国民の精神状態は、戦争が冷戦に変わっても戦争中と大差なく愛国心の塊でした。
ダルトン・コランボは、ハリウッドで労働者のための活動をしています。そのため1947年下院に設置された非米活動委員会に召喚され、法廷侮辱罪で投獄されます。
これはどう考えても無茶苦茶な話です。
米国の愛国主義も徹底しています。3.11を思い出してください。ブッシュを思い出してください。
米国の共産党員がなにをしたのでしょう。
いけにえです。
彼らは、ハリウッド・テンと呼ばれブラックリストに載せられます。仕事がこなくなります。
チャップリンも同じような目に遭っています。
この時に委員会側に立ったのが、ジョン・ウェインやロナルド・レーガンだったのは有名な話です。
ハリウッドの大手から仕事がこなくなったコランボですが、家族や仲間をささえなくてはなりません。
名前を隠して映画の脚本を書くことを始めます。
なんと2本の作品がアカデミー賞を獲得しました。
「黒い牡牛」、「ローマの休日」です。
映画では孤軍奮闘するトランボと彼を支える家族が描かれます。
「赤狩り」などという卑劣な行為が長くつづくことはありません。
当時の人気俳優カークダグラスが「スパルタクス」の脚本を依頼し、実名で書くことになります。
脚本:ダルトン・トランボとタイトルロールに流れます。
1940年代の挫折、1970年代の復活。
しかし彼は1976年に他界します。
1980年代、ロナルド・レーガンが大統領となってしまった。
1993年、「ローマの休日」のアカデミー賞脚本賞を妻クレオが授与される。
実に40数年ぶりの名誉回復です。
レーガンの影響力がなくなるのを待っていたハリウッドとなります。
政治というものは怖い。権力を持つということは恐ろしいことです。