岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「介護保険2005年改正」の総括へ(9)。

2007-12-20 22:49:01 | 地域包括支援センター
「改正介護保険法と日本の介護保障」ー国際比較の視点で
考えるー「自治総研2006年11月号」斉藤弥生
2p
この論文の構成について:
2章:日本の介護保障は国際比較の中でどのレベルに位置しているか。
問題提起:世界で最も高齢化率の高い日本で介護費用支出が少ないのはなぜか。
家族の負担を緩和するのが「脱家族化」の考え方だが、介護保険が「脱家族化」の
機能を果たしているか。
3章:「高齢期の貧困問題」と介護サービス利用者のセーフティネット
4章:家事援助サービス削減の現状と分権化の必要性
5章:「高齢者の住まい」。世界の介護施設比較と、日本の現状への危惧
6章:まとめ

※私が勝手に要約しているので、筆者の意図とは異なる場合も多いと
思います。この点はお許しください。
 介護保険制度は、「介護の社会化」でしか、この高齢化社会の介護は
かなわない=今の核家族に介護を担わせることは無理=「脱家族化」へ
の期待を込められていると判断している。
これはある程度国民の共通認識だと思う。

では、現実はどうなっているのか、
3~5章は、家庭訪問を毎日の業務としているものとして
切実な問題である。
第3章「高齢期の貧困問題」は、市町村の介護保険係への苦情から
よくわかる。
介護保険料は、年金から天引きされる人がほとんどといっていい。
年18万円以上年金を受け取っている人はすべて天引きなのである。
(高齢者医療制度も年金天引き制度だ。徴収漏れが少ないため)

介護保険は貧困課題とは別だというスタンスを保険者はとっている。
高齢者が介護保険料が家計を圧迫している、と相談に来ても、
なにもできない。
生活できないなら、保護課に行っていただきたいというわけだ。
もちろん、そのように行動する人はほとんどいない。

それでも、瀬に腹は替えられない方は、保護を受けることになる。
私が担当している人では10%程度の方が受給している。
かなり高率ではないだろうか。

他の方でも余裕のある方は少ない。
7割以上の方が、つつましい生活をしていると思う。

高齢者の生活で負担になるのは、住居費と医療・介護費である。
高齢者の住宅事情は厳しい。
自宅が賃貸であれば、月6万円程度の出費が必要になる。
これは、家族で住んでいて、最後に独居になるで、
使っていない部屋もあって家賃も比較的高くなっているケースが多い。
では、転居すればいいというが、高齢者の引越しはとても困難だ。

医療・介護費については限度額があると思われるが、現実は
通院に伴う交通費、通院介助、保険外治療と、膨らんでいく。
厚生年金を受給している人でも厳しいのだ。
国民年金だけの人の生活は推して知るべしだ。

生活保護がセーフティネットになっているかと問えば、
穴だらけの網としか思えない。

斉藤論文では、「日本の75才以上の貧困率は、23.8%であり、
米国の29.6%とともに国際比較に中でも極めて高い数字である」
と書かれている。私の感覚では、「この方々は日々お金のやりくりを
考え、ぎりぎりで生活している」と思う。

厚生年金と国民年金の受給者の差は、運のようなものがある。
若い時の仕事の選らび方が少し違っただけで、老後の経済環境は
大きく変わってくる。
国民年金は、最低の生活も出来ない金額なのだ。

高齢者は裕福だという話が喧伝されているが、私にはとても
そのように思えない。
この問題抜きに、介護保険制度は考えられないはずだ。

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2 コメント

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医療・年金・介護・住宅セット (bonn1979)
2007-12-21 20:43:33
ログイン再開なによりです!!

勤務する大学の図書館には
「自治総研」がないので
もっぱら「岩清水日記」によります。

私も65歳になって
年金から保険料を引かれる。

縦割りではなく
総合的な保障でなくては・・
と思います。

私などは
地域はよそ者
子どもはいない
ということで
人生のツケが一気にきそう・・
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施設管理者の言葉 (岩清水)
2007-12-22 22:32:01
知人の施設管理者の言葉が気になります。
「自身のこととして老後のことを考えるなら、
できるだけ早く、動けなくなっても住める住居を
探して、入っておくこと。」
子どものあるなしに関係なくです。
確かに、家庭を訪問していると、
今更どうするにも術がないことが
多いですね。
これは本当にひとごとではないです。
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