福祉について考えていると、人間が本来的に持っている利他的行為にその原初があるのではないという思いに至ります。
助け合うことは、人間的なことなのだと。
しかし他の生物でも助け合っているではないかとも思います。
そこで人間に限らず、利他的行為は生存のために持っているのだと拡大して考えがちです。
ところが最新のチンパンジーに関する研究の成果は、チンパンジーは自発的には助け合わないことを発見しています。
人間は自発的(お節介的に)に助け合います。
チンパンジーとは明らかに違うそうです。
人間とチンパンジーは700万年前に分かれました。
分かれて何が違ってきたか。
人間が二足歩行を始めたことです。
二足歩行は体型の変化に繋がります。
特に女性の骨盤の形が変わり、産道が狭くなりました。
一人では産めません。人の助けが必要な難産型になったのです。
チンパンジーは一人で産み育てることができるわけですから大きな違いです。
この説が正しいのなら、利他的な行為は出産支援から始まったことになります。
「言語コミュニケーション」の出現も「うわさ話」からという説も聞いたことがあります。
どちらも女性が中心的な役割をしています。
ということは、女性が人を人間たらしめたといっていいのかもしれません。
とても重要なことです。
もちろん男性は助け合って狩猟をしていたでしょうが、一人でもできないことはありません。
助け合う「遺伝子」を持つ人間だけが生き残ったという説もあります。
地球を冷温状態にした火山活動から生き残った数千人のアフリカ在住の人間がアフリカを出て世界に広がっていったといわれます。その数は遺伝子から推測できると。
この数千人が「自発的利他的行為」の「遺伝子」を持っていたなら、世界の人々はすべてその遺伝子を受け継いでいることになります。
その「自発的利他的行為」の研究が世界の人々を対象におこなわれました。
研究方法は省きますが、その結果は多少の差はあっても世界の人々は「自発的利他的行為」を行うことが明らかになりました。
この研究結果は、人間らしさの中には「自発的利他的行為」が含まれることを証明していると思います。
人間社会は、チンパンジーの群れとは違う人間らしさを有しているのです。
以下は、NHKホームページからの引用です。
人間とは何か。
人間を人間たらしめているものとは一体…。
現在、地球上に70億人いる人類。民族、宗教、イデオロギーは様々ですが、誰もが共通して持つ“人間らしさ”があります。それは20万年という進化の過程で祖先から受け継いできた、いわば“遺伝子”のようなものです。絶滅すら招きかねない環境変動、立ちはだかる強敵、集団間の対立などを乗り越えていく過程で“遺伝子”は生まれ、受け継がれていきました。そして、それは今も私たちの行動を左右しています。
震災からまもなく一年。
私たちはどのように生きるのか。私たちの底力とは何なのか。
考古学・人類学・動物学・脳科学・心理学などの最新成果をもとに、すべての人類に受け継がれている“人間らしさ”の秘密に迫ります。