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今日、帰宅後、テレビをつけましたらNHKの「72時間もの」(タイトルを正確に知らない)が映りました。
「幻の東京五輪マラソンコース」をたどっていました。
8月の初めの取材でした。
この番組は、通りがかった人々の人生を、その人が語るという興味深さがあります。
私は「ファミリー・ヒストリー」や「家族に乾杯」は観ません。
「ファミリーヒストリー」は、結局のところ血筋の話です。社会学や民俗学的には興味深い部分、例えば人の移動がどのように進んでいったのかなどがあります。
しかし、血筋、家系ということがクローズアップされるのはいけません。
それがどうしたという話です。
「家族に乾杯」は、タイトル通り、家族の話です。
今の社会は家族だけで構成されているわけではありません。
家族だけを探して国中を巡るという企画も賞味期限が過ぎています。
視聴率がとれるからといっていつまでも続けてはいけません。
「72時間もの」は、人を選びません。
もちろん「ファミリーヒストリー」や「家族に乾杯」には出てこない方々が中心です。
出てこれない人も多いです。
そうです。私だったりあなただったりします。
一人散歩している初老の女性へマイクを向けます。
女性が応えて
「仲の良かった夫に先立たれて、一人で生きています」
取材者「マラソンで言えば何キロ付近でしょうか?」
女性「本戦は終わりました。後はおまけです。ちいさなおまけか大きなおまけかです」
東京タワーの近くでタクシーの運転手にマイク。
「妻を亡くしましたね」
「大きな仕事はおしまいです。今は好きな運転を楽しんでいます」
橋の下を住処にしている男性。
「北海道から上京して建設現場で働いていましたが体を壊してしまいました」
「マラソンがあったら、ここから追い出されているでしょうね」
「こうなったのも自己管理が出来なかったからでしょう、しかたないですね」
このような方々は、「ファミリーヒストリー」や「家族に乾杯」に登場されることはないでしょう。
「女のいない男たち」、「男のいない女たち」。
大きな喪失の中に居られます。
標題の『女のいない男たち』村上春樹著は次回になりました。
お読みいただきありがとうございました。