ダライラマ１４世のインタビュー記事を読みながら。店番をして。

ここ１か月、バイトの帰りに、岡山市北区津島のビッグイシュー販売店に寄っている。
閉店間際だけど、少し話していると、ストレスが溶けていく。

この店には、販売者の山ちゃんがいる。そしてビッグイシューのバックナンバーが置いてある。
山ちゃんは、ビッグイシュー販売だけでは生計が立たないので、うどん屋と駐輪場でバイトをしている。

毎夕６時ごろ、販売店を訪問する若い女性がいる。
大学生Mさんだ。
「朝夕、顔を見せてくれる」と山ちゃん。
先日は、風邪を引いた山ちゃんに玉子酒を持参したそうだ。
酒を飲まない山ちゃんは酔ったらしい。

一人暮らしのMさんは、朝夕販売所に通うことで生活にリズムが出来たそうだ。
生活が変わったと。
私も同様だ。
寄り道を楽しんでいる。

Mさんは、販売所の前を毎日通りながら、何を売っている店なんだろうと気になりながら、入ることができなかったという。
ある日、近くのスーパーマーケットで買い物の後、停めていた自転車に乗ろうとすると前かごにチラシが入っていた。
山ちゃんが置いたビッグイシューのチラシだった。

Mさんはその足で販売店を訪問、初めてビッグイシューを手にした。

ファーストステップは、難しい。
ジャンプするようなものかもしれない。

でもそのステップを、勇気を出して踏めば、まったく新しい風景が飛び込んでくるかもしれない。


山ちゃんのもとに週何度か、バイト先のうどん屋の奥さんから電話がかかって来る。
うどんがあるから取りに来てと。
往復４０分かけて山ちゃんが受け取りに行く。
私たちは店番をしながら、山ちゃんの帰りを待っている。

やがて、額に汗をにじませた山ちゃんが帰って来る。

私たち二人は、うどんのおすそ分けをいただいて、それぞれの家に自転車で帰っていく。
まだ温かいうどん玉に手を触れながら。