岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

大正・昭和の風俗批評と社会探訪 第5巻 新聞社会事業と人物評論

2008-05-02 14:38:13 | 社会福祉の源流
村嶋歸之著作選集の第5巻を読み始めた。
とても厚い本だが、雑誌等に掲載された内容なのでとても読みやすい。
村嶋歸之氏は、新聞記者(大正から昭和)として活躍された方だ。
現場主義の人(というよりは現場しか生きる道がない)で、
社会事業も労働運動にも、深入りしていた。
平成の世にはこんな記者はいない。

大阪毎日新聞の記者から始めた人だが、20代から、世界的なキリスト者で
ある賀川豊彦に心酔してしまい、神戸のスラムに住む賀川の周りをうろうろし、
やがて、関東大震災直後に賀川が救援のために東京に引っ越すと、
同行して、東京日日新聞に勤めるようになった。
賀川にどこまでも同行し、米国までも行っている。

この本の中にも何篇かの賀川の日常を書いた記事があるが、
これがとても面白い。
賀川の人となりがよくわかる。

私は賀川豊彦をほんの少ししか知らないが、これではだめだと思った。
これから勉強して行くつもりだ。
彼の著作は膨大だ。小説家としても名を成した。
彼の本は世界の国で翻訳され、海外で有名だったという。
彼が行う社会事業は、印税という米びつに支えられていた。
この点も特筆されることだと思う。
もちろんキリスト者だから、宗教関係の著作も多いが、
これが金になるはずはない。
「死線を越えて」のような神戸のスラムを描いた作品が百万部単位で
売れたという。
社会事業のために(印税のため)に多くの本を書いた。

非暴力を貫き、当時の左翼からも非難されたが、論戦で引き下がることは
なかった。
彼は多くの人に慕われた。
私の恩師は、神戸の人だが、その両親は賀川に心酔していたという。
そして、恩師自身も、賀川豊彦の本を書いている。
その本は現在の研究者の論文に引用されている。

今もなお語り継がれている賀川豊彦のことを少しは知らなくてはと
思う。


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