週末の土曜日に名寄市立天文台へ行きました。
目的は天文台主催の「シン・天文講座 ~赤いオーロラと緑の里」と題した講演会を聞きに行くことでした。
講師は片岡龍峰(かたおか・りゅうほう)国立極地研究所准教授で、オーロラの世界的権威の先生です。
実は今年の5月と8月に、太陽で規模の大きいコロナ質量放射という表面での爆発があって、地球の磁場が大きく乱されるという天文現象がありました。
そしてその際に、普段なら北極と南極周辺で天使の輪のように生じるオーロラが、地場の乱れが大きかったために天使の輪が大きくなり、ずっと低い緯度でもオーロラを生じたのです。
普段なら日本の緯度ではオーロラは見られないのですが、このときは北海道はおろか本州の京都付近でも北の方角に赤いオーロラが出現したということで大きな天文ニュースになりました。
名寄でも大きのアマチュア天体観測家が低緯度オーロラの赤い写真を撮ってネットに投稿したことで、大きな話題になりました。
今回はなよろ市立天文台のレクチャールームで片岡先生のお話が聞けるというので、実際にオーロラの写真を撮ったアマチュア天文家から一般の天文ファンまでが集まりました。
この手の講演会としては珍しく100名を超える聴衆が集まり、用意した椅子を何度も追加するという盛況ぶりでした。
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片岡先生は冒頭で、「最初にお話をいただいたのは昨年だったのですが、そのときはリモートでネットで話が聞ければよい、ということでしたが、今回は低緯度オーロラが名寄でもたくさん見られたという事で、仕事を作って名寄まで駆けつけてきました」と言って会場から大きな拍手を受けていました。
実は片岡先生も「直接写真を撮った方とマニアックで細かい意見交換をしてみたい」という希望があり、講演会の後で希望者とさらに突っ込んだ時間を過ごされたようです。
低緯度オーロラは日本でも赤く色が地上から立ち上がった姿が見られたのですが、実はオーロラは磁力線によって磁気を帯びた粒子が酸素原子と反応して、高度の高いところでは赤く発光し、高度の低いところでは緑色に発光するのだそう。
なので赤いオーロラが見られたというのは高い位置で発光したものを遠くから見ていたということになります。
片岡先生ももちろん観測をしたのですが、日本全国からアマチュア天文家が撮影した写真でも、撮影した場所と地上からどれくらいの角度で上がっているところを撮影したかがわかり、その数が揃えば研究の材料になるのではないか、ということに気がついて、論文にもまとめているところなのだそう。
ただ、そうした赤い映像も、撮影条件やフィルターなどがわからないと正確なオーロラ情報になりきらないということもあって、片岡先生は撮影者ともっとコミュニケーションを取りたいと考えておられるのだそうです。
また日本の古文書にもオーロラを観測した記述があって分析してみると結構信ぴょう性が高いという話や、オーロラを観測する機材も年々性能が向上していることなど、オーロラを巡る幅広い話題に、会場からは質問の手が沢山上がって、大いに盛り上がった講演会となりました。
オーロラ観測は北に行くほど条件が良いというので、北海道がこれからもオーロラ観測ブームになるのではないでしょうか。
太陽のコロナ質量放射は、観測されると2~3日後に地球に到達して磁場を乱してオーロラが見やすくなるのだそうで、それを目当てに本州から晴れる場所を目指した観測の旅人が増えると良いですね。
北ほど良いというのがいいですねえ。