先週の金曜日、幌加内町での新そば祭りに参加する前日ですが、天塩町に行っていました。
天塩町の友人から、「8月後半に筑波大学大澤義明教授の研究室(以下「大澤研」)の学生さんたちが天塩町を拠点に、夏合宿に来るのですが、その調査研究の発表会でコメンテーターをお願いしたいのです」という要請があり、それに参加してきたものです。
大澤研には4年生まで学生さんのほかに社会人大学院生の方たちもいて、8月20日から9月2日までの予定で滞在。
天塩町はもちろん利尻島なども訪れて、現地を見る、人に聞くことで、課題を感じ、解決の提案を考え、プレゼンテーションをするというゼミになっています。
またその一方で、地元の中学生や高校生の人材育成や地域の魅力想像を図る「中高大連携事業」という取り組みを行っています。
元々は、天塩町が始めた、地域の公共交通がカバーしきれない住民の交通ニーズを補う「ライドシェア」事業に興味を持った大澤先生が、二年前に訪れたことが縁になったもの。
このような縁で、筑波大学の学生さんたちが北海道の北部地域を訪れて、この地域に土地勘と友人ができるというのは素晴らしいことです。
私が聞かせてもらった調査研究発表も、よそ者と若者らしいフレッシュな感性にあふれていました。
短時間での調査期間ゆえに踏み込みに物足りない部分もありますが、普段は触れることのないであろう様々な課題に真摯に取り組んでくれた姿勢には、心から敬意を表したいと思います。
◆
さて、私自身もいろいろと勉強になった発表会ですが、最後に私とともにミニ講話をしてくださったのが北海道開発技術センターで交通計画を専門に調査研究されている大井さんでした。
大井さんは、「北海道の地域課題とMaaS」というタイトルで日頃の研究成果の一端を紹介してくださいました。
「MaaS」というのは、"Mobility as a Service"の頭文字を取った造語で、「サービスとしての移動」という意味です。
具体的には、インターネットなどのICT技術を用いて、マイカーだけではなく公共交通はもちろん、とにかく動いている交通手段をつないで、移動したいという人たちのニーズに応えようというサービスの考え方です。
大井さんは、そういう取り組みが必要な背景として、①一般のドライバーが高齢化して来て、高齢化に起因する事故が増えていること、②人口減少で公共交通の需要量が減ること、に加えて、③公共交通のドライバーの高齢化と急速な担い手不足がある、と言います。
特に広い地域に人々が散居している北海道では公共交通が成り立ちにくく、そろそろ本気で対応を考えなくては地域の暮らしが成り立たなくなるかもしれません。
そもそも天塩町では、その一つの答えとして、70km離れた稚内市までの相乗りをマッチングするサービスを試行したもので、それが大澤研との縁でもありました。
さらに大井さんは、「MaaSにはそうした日常生活の中の『生活MaaS』に加えて、外からの観光客へのサービスとしての『観光MaaS』がある」と言います。
地元の交通事情に疎い観光客に対して、移動にストレスを与えないようなサービスを行おうと思うと、鉄道事業者(JR)やバス事業者、タクシー、さらには荷物だけを運ぶ輸送会社などとの密な連携が必要になるでしょう。
北海道の日常の暮らしと共に、稼ぎの手段としての観光について、安定的な移動を保証するような全道的な取り組みが必要です。
さて、自分が歳を取ってもう車の運転ができなくなるころには、どのようなサービスができているでしょうか。
課題先進地としての北海道の悩みは、我が国全体の先進的な悩みです。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます