最近話題の書「未来の年表シリーズ」の「未来の年表 業界大変化」を読みました。
我が国の人口減少に警鐘を鳴らす本は多いですが、具体的な職場や「仕事の現場」を想定しながら「今後このようなことが起きますよ」と書いているのが特徴的な「未来の年表」シリーズ。
今回は「業界大変化」ということで、人口減少が様々な業界にどんな変化をもたらすかについて詳報しています。
この本ではまず人口減少によって単純に人(働き手)の実人数が減るだけではなく、「消費者も減るダブルの縮小」に襲われるのだ、と警鐘を鳴らします。
働き手の問題だけであれば、人間の手を機械に置き換える「機械化」や考えることも機械に置き換える「AIの活用」、さらには効果とメリ・デメには問題がありそうな「外国人労働者の大量受け入れ」あるいは「移民の受け入れ」などが考えられますが、後者では減る人数をカバーするだけの受け入れは現実的ではなく、そうなると生産の部分を効率化しても「市場が縮小する」ということは避けられないという現実が突き付けられると著者は言います。
具体の事例としてこの本では、「整備士不足で事故を起こしても車が直らない」、「IT人材不足で銀行トラブル続出」、「ドライバー不足で10億トン分の荷物が運べない」、「30代が減って新築住宅が売れなくなる」など、様々な業界の未来予想をしています。
私の業界でいうと、「老朽化した道路が直らず放置される ~ 建設業界に起きること」という項目の中で、人口減少が明らかになっている中では建設需要が伸びることは考えにくい、と言います。
しかしそんななか一筋の光明は老朽化対策で、インフラ更新のための建設投資は増加が見込まれます。
建設業界にとっての人口減少の影響は、上記よりは不人気業種ゆえの「就労者の減少」と言う形で現れるでしょう。
長時間の肉体労働は嫌われ、また高学歴化でも肉体労働者は減少、それでいながら高付加価値で働こうとすれば施工管理技士などの資格が必要で、それへの成り手も減少することになると、建設構造物を作れる人材は一気に減少してゆきます。
実際私が(一社)北海道舗装事業協会に勤務していた5年前に、会員企業全社を対象に技術者の年齢分布を調べてみたところ、このようなグラフができました。
今はこのグラフが五年進んだ形になっているわけで、60歳を過ぎても働くということを加味しても、60歳代の人たちが消えてゆく人数を補うだけの若者はこの世界に入ってくることは考えられません。
これを効率化でどこまで補えるのか。未来を考えると途方にくれるばかりです。
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とはいえこの本では、ただ人口減少の恐怖をあおるだけではなく、各業界、各企業に対して人口減少社会を迎えるにあたっての対応策を「人口減少に打ち克つ『10のステップ』」として提示してくれています。
その1は「量的拡大モデルと決別する」ということ。量的拡大を求めるための投資はいずれ経営の重荷になるでしょう。
その2は「残す事業とやめる事業を選別する」こと。事業の多角化は人口拡大局面ではやれても人口減少局面では不利になります。
組織体力のあるうちに、「残すもの」と「やめるもの」を選別して残すべきものに人材も投資も集中させることを勧めます。
…というわけで残りの処方箋はこの本をご覧いただくことにいたしましょう。
問題は企業としてのふるまいもそうですが、では自分自身はどうあるべきか、何をすべきか、と考えることでもありましょう。
「会社はなにもしてくれない」と嘆きながら不遇をかこつくらいなら、自分自身での身の処し方も考えておかなくてはなりません。
いずれにしても必ずくる人口減少局面への対処は早く始めなくてはどうにもならなくなる時期が近づいていることを実感させてくれる本です。
ご一読をお勧めします。
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