がん宣告を受け入れ、抗がん剤治療の合間を縫って山に登る。
NPO法人HAT-J/日本ヒマラヤン アドベンチャー トラストの代表として、種々の行事、講演もこなす。
手がしびれたり、足が上がらなかったり・・・
とても真似はできないが、アイディアは頂いている。
山小屋泊まりにポリ袋での収納は避ける。
消灯が早く、早朝発ちのトレッカーがいるので、ごそごそしては迷惑である。
マフラー1枚はセーター1枚に匹敵する。
大判のショールやスカーフはふたつ折にして布団や寝袋の襟元にあてると、他人と共有の用具でも気に掛けずに寝られる。
予期せぬアクシデント発生の時は平常時よりさらに落ち着くこと。
などなど
山行だけでなく、田部井さんは六然訓(りくぜんくん)で自身を戒めているという。
意訳なのでわかりやすい。
彼女らしい”シンプル イズ ベスト”
自処超然 自分自身は何事にも執着することなく
処人藹然 人に対しては好意に冨み
有事斬然 起った事柄にはテキパキと処理し
無事澄然 平安無事の時は心を澄ませ
得意澹然 得意の時は驕らず、淡々とし
失意泰然 失意の時はゆったり堂々としておれ
崔 銑(さいせん、中国古代の学者)の残した言葉と言われている
陽明学者の安岡 正篤(やすおかまさひろ)氏の座右の銘で、
勝海舟も好んでいたという。
私自身を顧みるに、少し威張れるとすれば『自処超然』
62歳で始めた私の山歩きは、残された時間はそれほど多くない。
田部井さんの向上心を頂きながら、もうしばらく続けようと思う。