ブラジル映画「ぶあいそうな手紙」という映画を見る気になったのは、南部のポルトアレグレで撮影されたと知ったからである。ブラジル10位の大都市で、人口148万人ほど。南部にあって、ウルグアイに近い。僕は小さい頃から地図を見るのが大好きで、字面だけで興味を引かれる町が世界中にあった。ブラジルのポルトアレグレとかレシフェ、チリのバルバライソなんかも名前の響きが気になった都市である。まあ見てみれば、確かにロケはしているけど、ほとんどは古いアパートの中で進行する映画だった。でも珍しいぐらい「男性老人映画」だった。
78歳のエルネストは、もう眼が非常に悪くなっている。妻はすでに亡く、息子がサンパウロにいる。隣の部屋に住むハビエルと時々チェスをするぐらい。ホームヘルパーの女性が来ているが、昼間は何とか壁伝いに外食に出たりしている。そんなエルネストに珍しく手紙が来るが、自分では眼が悪いから読みにくい。ヘルパーさんに読んで貰おうとするが、ウルグアイから来たスペイン語の手紙なので、ポルトガル語のブラジル人には読みにくい。
そんな時に、門のところで犬を連れた若い女性と出会う。上の階に住む女性の姪で、病気をしたおばに代わって犬の散歩を頼まれているという。そのビアという目が大きな女性なら、手紙を読めるんじゃないかと頼んでみたら、やはりスペイン語の手紙を上手に読んだ。それは若き日の友人の妻からで、友人が死んだという知らせだった。昔は3人でよく遊んだり議論したらしい。その後、エルネストはブラジルに移って48年。会うこともなかった女性からの手紙に、返事を書きたくてもエルネストは書けない。そこでビアは彼に代わって書くという。
(エルネストとビア)
このビアとは何者か。素性の判らない人間を入れるもんじゃないと言うヘルパーは、逆にエルネストがクビにしてしまった。しかし、実際ビアの様子にはおかしな感じも見受けられ、どうなってしまうんだろう。ありそうな展開としては、「若い女性にイカレてしまう老人」「老人をたぶらかして財産などをねらう女」「年の差を超えて惹かれ合ってしまう男女」などがあり得るけど、この映画はそういう展開にはならず、最後まで「手紙の代筆」が軸となって進んで行く。
世界に映画は多いけれど、「お爺さん映画」は少ないと思う。「お婆さん映画」の方が多いし、一家を描く中で「老夫婦」が出てくる映画ならいっぱい思いつく。大体、大スクリーンでクローズアップするのに耐えられるのは若いうちだ。世界中の映画の大部分は、10代20代のヘテロセクシャルの男女がくっついたり離れたり、過去や未来に行ったりゾンビになったりする映画である。老人を主人公にすること自体が珍しい。世界中で男の寿命の方が短いから、独居男性老人自体が少ないはずだ。かつての若きスターの老後まで付き合うファンも少ないだろう。
(アナ・ルイーザ・アゼヴェード監督)
アート映画や社会派映画を探せば、男性老人映画も少しは見つかる(ベルイマン「野いちご」など)と思うけど、この映画ほど生活臭はしない。何だか僕は身につまされてしまった。監督はアナ・ルイーザ・アゼヴェード(1959~)という女性である。派手なところはないが、ていねいな演出が良かった。あまり見ることが出来ない外国の映画を見るのが大好きなんだけど、これは外国事情と言うより「老人事情」を探る映画だった。俳優の名前を書いても仕方ないから書かないけど、ところどころでブラジルのカエターノ・ヴェローゾの歌がうまく使われて情緒を盛り上げる。年を取ったら、出来ないことを取り繕ったりせずに生きたいもんだと思った。
78歳のエルネストは、もう眼が非常に悪くなっている。妻はすでに亡く、息子がサンパウロにいる。隣の部屋に住むハビエルと時々チェスをするぐらい。ホームヘルパーの女性が来ているが、昼間は何とか壁伝いに外食に出たりしている。そんなエルネストに珍しく手紙が来るが、自分では眼が悪いから読みにくい。ヘルパーさんに読んで貰おうとするが、ウルグアイから来たスペイン語の手紙なので、ポルトガル語のブラジル人には読みにくい。
そんな時に、門のところで犬を連れた若い女性と出会う。上の階に住む女性の姪で、病気をしたおばに代わって犬の散歩を頼まれているという。そのビアという目が大きな女性なら、手紙を読めるんじゃないかと頼んでみたら、やはりスペイン語の手紙を上手に読んだ。それは若き日の友人の妻からで、友人が死んだという知らせだった。昔は3人でよく遊んだり議論したらしい。その後、エルネストはブラジルに移って48年。会うこともなかった女性からの手紙に、返事を書きたくてもエルネストは書けない。そこでビアは彼に代わって書くという。
(エルネストとビア)
このビアとは何者か。素性の判らない人間を入れるもんじゃないと言うヘルパーは、逆にエルネストがクビにしてしまった。しかし、実際ビアの様子にはおかしな感じも見受けられ、どうなってしまうんだろう。ありそうな展開としては、「若い女性にイカレてしまう老人」「老人をたぶらかして財産などをねらう女」「年の差を超えて惹かれ合ってしまう男女」などがあり得るけど、この映画はそういう展開にはならず、最後まで「手紙の代筆」が軸となって進んで行く。
世界に映画は多いけれど、「お爺さん映画」は少ないと思う。「お婆さん映画」の方が多いし、一家を描く中で「老夫婦」が出てくる映画ならいっぱい思いつく。大体、大スクリーンでクローズアップするのに耐えられるのは若いうちだ。世界中の映画の大部分は、10代20代のヘテロセクシャルの男女がくっついたり離れたり、過去や未来に行ったりゾンビになったりする映画である。老人を主人公にすること自体が珍しい。世界中で男の寿命の方が短いから、独居男性老人自体が少ないはずだ。かつての若きスターの老後まで付き合うファンも少ないだろう。
(アナ・ルイーザ・アゼヴェード監督)
アート映画や社会派映画を探せば、男性老人映画も少しは見つかる(ベルイマン「野いちご」など)と思うけど、この映画ほど生活臭はしない。何だか僕は身につまされてしまった。監督はアナ・ルイーザ・アゼヴェード(1959~)という女性である。派手なところはないが、ていねいな演出が良かった。あまり見ることが出来ない外国の映画を見るのが大好きなんだけど、これは外国事情と言うより「老人事情」を探る映画だった。俳優の名前を書いても仕方ないから書かないけど、ところどころでブラジルのカエターノ・ヴェローゾの歌がうまく使われて情緒を盛り上げる。年を取ったら、出来ないことを取り繕ったりせずに生きたいもんだと思った。