尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

安倍首相、再びの辞任劇

2020年08月28日 22時28分26秒 |  〃  (安倍政権論)
 2020年8月28日(金)に安倍首相が記者会見を行い辞任の意向を表明した。健康上の理由ということだが、辞任を決意したのは8月24日だという。その日慶応大学病院で診察を受けているが、ちょうどその日に「首相連続在任記録」が2799日となり、佐藤栄作を抜いて歴代1位となった。6月に通常国会が閉会して以来、国会や記者会見などは一切行わなかった。この間、新型コロナウイルス対応で厳しい時期もあったが、憲法に基づく野党の臨時国会開会要求も拒み続けてきた。何のために? 連続在任記録で1位になることだけが目的だったのだろう。
(山口県庁に掲げられた在任記録1位を祝う幕)
 数日前に金曜に安倍首相が記者会見を開くという情報が流れた。コロナ対応だとか言いながら、それならもっと何度も開いているはずだから、辞職するのかなと思った。前日(27日)に麻生派が緊急会合を開いたというニュースがあって、これはやはり辞任だなと思った。4時頃にスマホでニュースを見たら、辞任情報が流れていた。家で見た夕刊には載ってないから、夕刊の締め切り時間が過ぎた2時頃にNHKが報じたという。最後に岩田明子に報いたということなんだろう。最後まで安倍首相らしい幕の引き方だ。

 僕はもともと「五輪レガシー論」で安倍首相が2020年秋に辞任する可能性はかなりあると思っていた。ただ次期政権への影響力を高めるために、総選挙を先に行って年末年始の政権交代かとも思った。病気の再発が辞任を早めたのだろうが、次期内閣が発足するまで(自民党の次期総裁が決定するまで)は首相臨時代理を置かずに、投薬治療を行いながら首相を続けるということだから、もっと長くやれないこともないはずだし、逆にもっと早く辞めてもおかしくない。今回の辞任表明に至ったのは、病気を理由にして「政策の行き詰まり」を隠したいのだろう。
(2006年の首相就任時=13年前)
 コロナウイルス問題以後は支持率の低下が激しく、政権運営は行き詰まっていた。外交日程も全て停まってしまい、外交で点数を稼ぐこともできない。しかしトランプ大統領に媚びを売りながら何もいいことは無く、ロシアのプーチン大統領と何度も会談しながらロシアの憲法改正で領土問題解決の目はなくなった。(領土問題交渉は難しいものではあるが、それにしても自分が出来なかった憲法改正をロシアにやられてしまった外交的失態をどう思っているのだろうか。)中国の習近平主席の来日もならず、日韓関係は史上最悪、「北朝鮮」のキム・ジョンウン委員長からも会談の意向を無視された。外交の停滞は安倍首相の責任だ。
(8月28日の会見=13年前はずいぶん若かった)
 「アベノミクス」が功績だという人が多いだろうが、リーマンショック東日本大震災からの自然的回復局面に、あれだけの金融緩和をすれば円安、株高になるのは当然だろう。その後の「第三の矢」など新しい政策がほとんど意味を持たず、日銀の物価目標も結局実現しないままだった。一番問題だと思うのは、景気回復局面にあった時に政治的思惑で消費税増税を先送りしたのに、景気回復終了後(判明したのは最近だが)に消費税を増税したことだ。

 もっともそのような外交や経済は首相一人がいくら頑張ったって、うまく行かないこともあるだろう。だけど、政権はいずれ終わりが来る。次期政権へ向けて、後継者を育てることは首相の最重要の仕事とも言える。佐藤中曽根小泉政権はいずれも後継者を競わせることで次代のリーダーを育てた。別に自民党員じゃないんだから、次の総裁がどうなろうと知ったことじゃないわけだが、公の立場からすればこれじゃいけないだろう。本来なら麻生副首相が臨時に後継を務めるべきだ。そのための副首相じゃないか。しかし失言と高齢(1940年生まれだから、トランプ、バイデンより上)もあり、今まで財務大臣を続投していた方が不思議である。

 今後、「悲運の名宰相」と持ち上げる人が出てくる。「長くやったこと自体が偉大な業績」と早くも言い出す人がいる。「お友だち内閣」だから、仲間うちには評判がいい。つまり褒めてる人は「身内」なのである。しかし、結局は「公私混同の身内政権」的になっていた。「魚は頭から腐る」のであって、「森友・加計・桜」の首相、いくつもの失言と財務省のスキャンダルの副首相をトップに戴く組織は、下に河井夫妻秋元司のような人物を無数に生み出す。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする