尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

勝者なき都議選ー2021東京都議会選挙

2021年07月06日 23時06分20秒 |  〃  (選挙)
 2021年7月4日に東京都議会議員選挙が行われた。結果をどう考えるかは悩ましい問題だが、まず投票率が低かったことを取り上げたい。前回(2017年)の51.28%から、今回は42.39%に下がった。区部では港区の33.78%を最低に、中央、渋谷、江戸川が30%台になった。多摩地区でも立川、青梅、府中、昭島、福生、羽村、あきる野、武蔵村山、東久留米等で3割台で、最低は瑞穂町の31.23%。地方議員選挙は一般的に投票率が低くなりがちで、コロナ禍で選挙運動が全般的に低調だったから、僕も低投票率を予想していた。東京は数日間梅雨寒が続いていて、当日も小雨が降り続いていた。そのような様々な事情があったとしても、3人に一人しか選挙に行かないというのは危機的な状況ではないか。
(都議会選挙の結果)
 いつもなら東京の新聞は翌朝トップで都議選の結果を報じるが、今回は熱海市で発生した大規模な土石流がトップ記事だった。その横でおおよそは「自公で過半数ならず」を見出しにするところが多い。大方の事前予想では、「都民ファーストの会」が大幅に落ち込む見込みで、自民党は良ければ50台に届くかも、全員当選で23議席の公明党と合わせれば、過半数の64議席(定数は127議席)は堅いと思われていた。自民党は結局33議席で、第一党にはなったものの公明党と合わせても56議席に止まった。都民ファーストの会は31議席で、現有議席から15も減らした。しかし悪くすれば一ケタという予測もあったのだから、健闘したという評価も出来る。

 公明党は何とか全員の23人が当選したが、かなり厳しく最後に滑り込んだ選挙区もいくつかあった。出口調査では数議席は危ないと出ていたが、これは公明党支持者に期日前投票の利用者が多いことを考えると、そんなに落ちるとは思わなかった。低投票率による当選ラインの低下に助けられた要因が大きいと思うが、総選挙に向けて厳しい状況だろう。なお、公明党の総得票数は63万票ほどで、前回の73万票から10万票減らしている。
(日本テレビ系の出口調査)
 一方、共産党は19議席と1議席増となった。堅調な選挙区もあるが、細かく見れば全都で勢いがあったとまでは言えない。立憲民主と選挙区調整を行ったこともあるが、総得票数は前回の77万から63万に減らしている。立憲民主党は15議席で、8議席増となった。しかし、都議会第5党でかつて民主党時代に都議会第一党、第二党だった頃の勢いを取り戻したとは言えない。各選挙区を見ると共産がトップ(新宿、文京、大田)、立憲民主がトップ(中野、立川、三鷹)などもあるが、ほとんどのところでは都民ファーストの会の方が上になっている。

 7つある1人区を見てみる。常に自民党が勝つ島部を除くと、残りは好調な党派が独占することが多かった。2009年は民主党、2013年は自民党、2017年は都民ファーストの会である。しかし、今回は都民ファーストの会=3(千代田、青梅、昭島)、自民=2(中央、島部)、立憲民主=1(武蔵野)、無所属(立憲民主、共産等の支持)=1(小金井)で、見事に各勢力で分け合っている。なお、無所属が4人当選しているが、小金井は今見たように国政野党系の共闘、品川、江戸川、府中は都民ファーストの会の離党組である。
(2009,2013,2017年の都議選結果)
 自民党は「それなりに底堅い」とは言うものの、中野、豊島などでは3人区の中で4番目に落ち込んだ。品川、目黒のような複数擁立の共倒れもあるが、他の複数擁立区では江東、板橋、葛飾、江戸川などで僅差で一人が落選した。(中野、豊島では2千票差ぐらいで落選したが、3位の当選候補はいずれも公明党だった。もう少し投票率が高かったら自民と公明が入れ替わったのかもしれない。)自民党は選挙戦略だけとは言えない「不人気」があったように思われる。菅内閣の支持率が低い以上当然とも言えるが、選挙中の「ワクチン職域接種の受付中止」が影響したとも言われる。それとともに小池知事の入院、それを「自業自得」と評した麻生財務相発言が「都民ファースト支援効果」になった可能性が高いと思う。自民党の「自業自得」である。

 「都民ファーストの会」は小池知事が最終日に演説はしないながら応援に入った。これは僕の予想通りで、減りすぎては困るということだろう。自公で過半数を取れず、議長をどこが出すか(常識的には第一党の自民党)、今後の都議会も混乱が予想されるが、自公で過半数となるのは知事として困るということだろう。都民ファースト現職が男女で複数いた選挙区では、世田谷、足立のように女性候補しか再選されなかったところがある。小池知事支持の女性票(恐らく中高年)があるのではないか。ただ八王子のように自民二人が当選して、都民ファーストの現職2人が共倒れしたところもある。今回の結果は一概には言えない。

 共産党立憲民主党は「棲み分け効果」を一定程度発揮したが、反政権票の受け皿として総選挙に弾みが付いたとまでは言えない。前から強かったところで底堅いが、新たな勢いがあるという感じはしなかった。それでも「議席を増やした」ところに注目すれば健闘なのかとも思うが、政権奪取の見通しは難しい。僕が困ったなと思ったのは、立憲民主党が「五輪を中止・延期させる最後の機会」などと呼びかけていたことである。正直言って、もうこう言うのは止めて欲しいと思う。都議会に中止させられる権限があるとは思えないし、あったとしても時間が遅いだろう。

 そういう問題もあるが、今回立憲民主の立候補者は全部で28名しかいない。中止を求めている共産党は全部で31名の立候補だった。島部のように絶対当選できない選挙区も含めてである。もし全員が当選したとしても全部で59名だから過半数に達しない。都議会で「五輪中止派」が過半数を取れないことが事前に判っているのに、どうして都議選で五輪を中止出来るのか。都民ファーストは「無観客開催」を主張していたので、東京新聞は共産、立民と合わせて「五輪見直し派が過半数」と報じている。これはどう見ても「牽強付会」と言うべきだろう。「自民・公明・都民ファースト」で「開催支持派が過半数」と言うならまだ判るけれど。「中止」と「無観客」を同等に見るのは論理的に無理だ。データを自分の見たいように読むのは止めたいと思う。
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