星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

作品への愛、愛する世界への正直な愛、を感じることができれば・・

2003-06-10 | 映画にまつわるあれこれ
 ベランダのあおむし君の姿が見えないと思ったらいつのまにか蛹になって枝に細い糸で結ばれていた。あんなにか細い糸でからだを支えて、丸まった枯葉のような中から美しい蝶の姿になって出てくるなんて本当に生命は不思議。結局、棄てられなくて、蜜柑の鉢も持っていくことに決めた。でも行く前に蝶になっておくれね。。。引越し準備、仕事の合い間にぼちぼち身体と相談しつつやってます。ダイジョウブデス。どうも有難う!
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 一時期とても好きだった映画監督レオス・カラックスの『ポーラX』を今頃になってやっと観た。『ポンヌフの恋人』以来、映画を撮らなくなって9年ぶりの今作では周囲の期待がもの凄かった反動か、とにかく酷評されて私の周りでも「もうカラックスは終わったな」という失望の声が聞かれた。そんなこともあって見たいような見たくないようなそんな感じで時が経ってしまった。カラックスがかつて描いた余りに痛々しい若さも、私にはもうその時代は過ぎたよ、と思ってしまったし・・・でも『ポーラX』、私には良かったです。作品として欠点はあっても、カラックスが描きたいものが私には伝わってきたし。

 嘘っぱちな世界を嘘っぱちと感じたままやり過ごすことが出来ずに、かといって諦める事も、確たる自分の枠組みで揺らがずに生きることも出来ない。やっぱりカラックスの世界は痛ましくて愛しい。

 名優ジェラール・ドパルデューの息子ギョームが、育ちの良い気品漂う表情から、やがて追い詰められたジョニー・ロットンのような目になって、終いにはカート・コバーンそのままの悲しい顔へ変わっていくのを演じていた。彼も評判は良くなかったようだけど、、、時に分かり易いくらいに象徴的な表現になったりするのも、そんなやり過ぎの演出をしてしまうカラックスが私は好きなのかもしれない。

 あと、勉強かねてデレク・ジャーマンの『テンペスト』を観た。私はデレク・ジャーマンという人は大分誤解していたみたいです。映像も大変美しかったし、シェイクスピアの台詞の美しさが忠実に生かされていて感動的でした。醜悪な未開人を体現したキャリバンも、プロスペロー伯爵の意のままに幻を作り出すエアリアルも、シェイクスピアの世界の道化や妖精たちは(魔物でさえも)やはりいとおしい存在。デレク・ジャーマンはそんな人間界からはじかれた哀しい存在を、(表面的にではなく精神的に愛をこめて)とても美しく撮ってくれたように思う。